I Can Do What I Want
日本人の母を持つブルックリンのシンガー・ソングライターでギタリスト、メイ・シモネスが初のフル・アルバムをリリース! エレガントでユニークな持ち味を野心的に全開にした作風はかつてなく印象的な楽曲を具現化してみせている!
積極的に発揮された雑食性
人懐っこくてラヴリーな顔立ちをしているのに、ピリピリした痛みをもよおすヘンな毒を持っているし、でもって性格はそこそこ凶暴。そんな珍奇でミステリアスなクリーチャー〈アニ丸〉たちをいろいろと生み出し、数寄者たちの関心を集めているミシガン州アナーバー出身のジャズ・シンガー・ソングライター、メイ・シモネス。そんな彼女の記念すべきファースト・フル・アルバム『Animaru』には、チェンバー・ポップ的な趣を持つ“Dangomushi”を筆頭に、従来とは異なる性格を持つキャラを精力的に作り出さんとする意志があちこちで確認できる。バークリー仕込みの卓越したギター・プレイや、複雑なコードと親しみやすいメロディーの良好な関係、それに日本語の新しい響きを追求するリリック作りなどの充実度はそのままに、新種の武器を準備しながら積極的に雑食性を発揮してみせるのが特徴的で、疾走感あふれるビートを背負いながら浮遊感と昂揚感が共存した歌声を聴かせる“I Can Do What I Want”に浮かぶインディー・ロック然とした風情などは、最近彼女を知ったばかりの人たちでさえもちょっとした驚きをおぼえるはず。予想を軽く上回るミステリアスかつ刺激的な傑作を携えて、芽衣・シモネスの大冒険の幕が切って落とされる! *桑原シロー