ONE HUNDRED PLUS ONE 2024
ライター陣の選ぶ2024年の〈+1枚〉

●赤瀧洋二

MARK KNOPFLER 『One Deep River』 British Grove/EMI(2024)

人生を重ねるごとに本質的なものを追求したくなってきている。音楽においての本質は〈人から人への感情の伝達〉だとすると、やはりデジタルではなく、アナログや生といった手法が最適なのではないかと。そんな思いが強かった2024年に出会ったのがこの作品。彼の近年のアルバムと同じく飾り気のないアメリカン・ルーツ作で、ナチュラルでエモーショナルな彼の歌と演奏は、聴いているだけで音楽に〈触っている〉気さえする。AIの可能性が議論を呼ぶ時代に聴きたい感動的な一枚だ。

 

●荒金良介

KNOCKED LOOSE 『You Won’t Go Before You’re Supposed To』 Pure Noise(2024)

ノックド・ルーズは激重最狂ハードコアの名盤に挙げたい。ほかにジューダス・プリースト 、ボン・ジョヴィ、ブリング・ミー・ザ・ホライズン、ジェリー・カントレル、シェラック、MONOも素晴らしかった。ライヴはズールー、〈PUNKSPRING〉、ターンスタイル、〈サマソニ大阪〉、オリヴィア・ロドリゴ、BRAHMAN(75曲4時間!)、SiM 20周年ライヴ、dustbox 25周年ライヴ、ホワイル・シー・スリープス、エレクトリック・コールボーイが印象に残った。

 

●池谷瑛子

MISAMO 『HAUTE COUTURE』 ワーナー(2024)

今日はライヴ、明日は新大久保でグッズ漁り……と、小5の娘に付き合いTWICE漬けな一年のなか、〈CDが欲しい〉という言葉を我が子から聞く日が来るとは。嬉しくなって“NEW LOOK”のカヴァー元の安室奈美恵と、さらに遡ってシュプリームスの“Baby Love”もCDで持ってるよと聞かせてみたものの、まったく響いてない様子でしたが……まぁそれはヨシ。麗しいR&B群に漂うY2Kヴァイブを浴びて若返りました。

 

●一ノ木裕之

すずめのティアーズ 『Sparrow’s Arrows Fly so High』 DOYASA!(2024)

自分ごとや身内ごとに振り回されたからこそますます音楽を必要とした2024。期待できなくなって久しい海外勢の来日にあって、ナキベンベ・エンバイレ・グループの来日は内容と併せて快挙だったし、中西レモン、すずめのティアーズはじめ背景の異なる音楽を統合し、我が物として血肉化して行く面々のライヴや作品には心揺さぶられた。そして、ロングフォーム・エディションズのリリース群やタシ・ワダ、ラウ・ノア、ペニ・チャンドラ・リニ……。

 

●大原かおり

YOLANDA ADAMS 『Sunny Days』 Epic(2024)

前の年と特に変わったこともなく、数の論理オンリーになってしまってる一辺倒な感じとかとはまったく無関係に、好きなものを好きなように聴いてまったりと過ごしました。当然のように行けていませんがジャム&ルイスの来日もあったタイミングで届いた本作は、厚みのあるコンテンポラリー・ゴスペルの快作。他にもオーセンティックなR&B方面ではいろいろ自分的に収穫がありました。いい作品はいくらでもあるので!

 

●香椎 恵

MARCOS VALLE 『Túnel Acustico』 Far Out(2024)

閉塞感や絶望感がさらに半端なくなってきた2024年。頭に入る情報量をさらに減らしながら余計なものに引っかからないようにしつつ、そのせいで出遅れたりしても、そもそも出遅れない必要があるものなどあるのかと思えるようになりました。引き続きポップでスムースなものを楽しく聴いていて、たまに会えるマルコス・ヴァーリのような懐かしいグルーヴにハッとした年でもありました。

 

●金子厚武

BERNARD BUTLER 『Good Grief』 355(2024)

2024年のUKロックといえばオアシスの15年ぶりの再結成が世界的なトピックとなったわけですが、個人的にそれより大きな事件だったのがバーナード・バトラーによる25年ぶりのソロ・アルバム。程よく枯れて、フォーキーな雰囲気が強まりながらも、ソウルフルな歌声とES-355の音色はあの日と変わらず、思わず涙が溢れました。ノエルより3歳年下で、リアムより2歳年上のバーニー。こんなふうに歳を重ねたいものです。ピープル・ムーヴ・オン。

 

●北野 創

fishbowl 『自然』 payayaam(2024)

仕事を離れた時間では昔のソウルやR&Bを聴き返してスロウバックに浸っていたことの多かった2024年。なのでルーサーの初CD化に大興奮していたなか、現行の新譜でとにかく食らったのが静岡産アイドルの新体制初アルバムとなるこの3作目。前振りと全然関係ないじゃん!と思われた方、ぜひ聴いてください。本作にはラヴとソウルとライフが詰まっています。ニューカワイイな風潮も好きですが、それだけに留まらないヤマモトショウの才能に完敗。This is Love。