
Photo by Taio Konishi
7月25日・26日・27日の3日間、新潟・苗場スキー場にて〈FUJI ROCK FESTIVAL ’25〉が開催された。国内外のビッグネームと新鋭が大自然のなかで繰り広げた名演の数々に、10万6,000人が熱狂した(7月24日の前夜祭を含めると計12万2,000人が来場)。
現地で3日間を過ごして実際に感じたのは、例年以上にフェスとアーティストとリスナーが密接に結びついていた、ということだ。そんな自然と音楽と人が一体となった今年のフジロックを筆者の視点でレポートしていく。本記事ではヴァンパイア・ウィークエンドがヘッドライナーを務めたフェス最終日の模様をお届けする。
メイ・シモネス、森山直太朗らの歌声を苗場の大自然とともに堪能
フジロック最終日は、前日に大雨が降ったとは思えないほど夏らしい青空が広がっていた。朝の時点で身体中に乳酸が溜まっているのがはっきりとわかる。山下達郎のレポートを書き上げたのち、メイ・シモネスを見にRED MARQUEEへと向かった。
日本人の母を持ち、日本語と英語がブレンドされた1stアルバム『Animaru』の話題性もあってか集客も上々。ステージ背面のスクリーンには自身の名前である〈芽衣〉〈Mei Semones〉と、ウサギやカブトムシなど彼女の楽曲に登場する生き物たちが独特なタッチで描かれている。ボーカル/ギターのメイのほか、ベース、ドラムス、ヴァイオリン、ヴィオラのサポートメンバーがステージに登場した。

Photo by Ruriko Inagaki
メイのなめらかなフィンガーピッキング、ヴァイオリンとヴィオラによる繊細な音色にどこか懐かしさを感じる“Tegami”を入り口に、スリリングな展開にハッとさせられた“Wakare No Kotoba”など序盤から彼女だけに見える世界がRED MARQUEEを包み込む。流暢な日本語でのMCと演奏中とのギャップも、ライブ全体のいいアクセントとなっていた。

実際のライブを体感して、ボサノバや北欧ジャズ、“I Can Do What I Want”から感じられるブルックリン印のインディーロックなど、言語の使い分け以上に多彩な音楽性と確かなギターテクニックこそが彼女の魅力なんだとわかった。終演と同時に来年1月のジャパンツアーも発表されたが、日本各地を巡ったのちに生まれるであろう新たな楽曲にも期待したい。

初めてフジロックのステージに立った森山直太朗は、奇をてらうことなく“さくら(独唱)”“生きとし生ける物へ”“夏の終わり”と、誰もが知る代表曲を丁寧に歌い上げる。ふらっと立ち寄ったような身軽さでGREEN STAGEに立つ森山は、アーティストやシンガーソングライターより〈歌い人〉と呼んだほうがしっくりくるような気がした。
個人的に白眉だったのが“どこもかしこも駐車場”。誰もが知る〈駐車場〉を時間の流れを表す指標として用いたこの曲は、自然と人工物が存在するフジロックによく似合う。全身全霊で生を体現した“生きてることが辛いなら”で締め括った森山のステージの余韻は、いまだ冷めないままだ。
少しだけチェックできたシリカ・ゲルのライブからは、韓国のバンドシーンの豊かさを感じた。観客が大合唱していたアンセム“NO PAIN”といい、彼ら独自のサイケデリアは国籍問わず人を惹きつけるだけの魅力がある。音源だとオルタナ寄りだったギターも、時折フュージョン的なアプローチをしていたりと色々と発見のあるライブだった。