〈サークル内で、the band apartをコピーできる技術を持っているのが彼らだけだったから〉というメンバー選考理由がいきなりおもしろい。KOGAが送り出すニューカマーのliquid peopleは、首謀者の小林駿輔が志向するテクニカルなインスト・バンドの醍醐味、マスロックの精密さ、エモの重厚感、メロディック・パンクの爽快感などを組み合わせた、ジャンル無用の音楽集団だ。
「いまのところエモに落ち着いてると思うんですけど、エモ・バンドとしてはちょっとライトで、かといってメロディック・パンクでもない。ライヴハウス的には下北沢ERAとかが、いちばん僕らの音楽性に近そうなハコだという印象はあります」(小林駿輔)。
「オルタナティヴではあるけど、どういうジャンルかわからない。逆に言うと個性的ってことだから、このまま行けたらいいんじゃないかなと思ってます」(Rio)。
ファーストEPの『Injection e.p.』は楽曲もアレンジも小林の独壇場だったが、最新EP『Astro Buddha』ではガラリとモード・チェンジ。全編日本語詞となったのに加え、リード曲“Star Gazer”は痛快メロディックな疾走感にハードコア・マナーのブレイクダウンをぶちこみ、“Automation”は親交のある小野武正(KEYTALK)の助けを借りて4つ打ちにトライするなど、「初めて聴き手のことを考えて作った」(小林)という意欲作だ。
「前作は自分の純粋にやりたいことができたEPなんですけど、それだけで終わりたくないんです。“Automation”は武正さんに〈曲の雰囲気を変えないでポップにしたいなら4つ打ちがいいよ〉というアドバイスをもらって、やってみたらすごく良くて、目から鱗でした」(小林)。
「EP全体のテーマは決めずに1曲ずつ作っていったんですけど、“Automation”がめっちゃ好き。歌詞が皮肉っぽくて、罵倒してる感じが気持ちいいんですよ。口だけ大きくて行動しない奴らに向けて、〈お前らみんなバカだ〉と言っているみたいな曲だから、気持ちが入りやすいというか(笑)。〈これぞ小林〉という歌詞ですね」(フルカワタクヤ)。
「途中でめちゃくちゃ重くなるところが気持ち良すぎるので、“Star Gazer”がイチオシです。4つ打ちはいままであまりやってこなかったんですけど、すごく楽しい」(はらゆうな)。
「3曲目の“車窓”は気分が落ち込んでるときに聴きたい曲というか、マロニーくん(フルカワ)の声とローテンポの感じがすごい合ってて、私生活でも聴いちゃうぐらい好きです。全曲日本語になったのが個人的には大きくて、聴きやすいけど、liquid peopleの元からの音作りのおもしろさも楽しんでもらえる4曲になってるんじゃないかなと思います」(Rio)。
2023年10月の初ライヴから1年半。独創性が先走る音楽でいかにフロアを熱狂させるか、次のステップをめざして奮闘する恐れ知らずの若い情熱が眩しい、推し甲斐のあるバンドだ。
「なんならモッシュも起きてほしいし、もみくちゃになってほしい。僕はREGAが大好きなんですけど、彼らはインストなのにお客さんはみんな乱痴気騒ぎで、ああいうライヴができたら一人前っていうイメージがあります」(小林)。
「the band apartとHAWAIIAN6の対バンみたいなイヴェントをやりたい。自分たちだけでなく仲間たちと一緒に上がっていきたいですね」(はら)。
「最近よく思うのは、〈本当だったらこの日は休みだったのにな〉みたいな感覚でライヴに出たくないなと。惰性でバンドをやるみたいな感覚になったら辞めようと思ってるんですけど、いまはそれはまったくないし、生活の一部なので、ずっと長くできそうだなっていう感じはありますね」(フルカワ)。
「就職もせず何も考えずに飛び込んじゃって、不安になることもあるんですけど、このバンドに人生賭けてるんで。本当にライヴに来てほしいです」(Rio)。
liquid people
フルカワタクヤ(ヴォーカル/ギター)、小林駿輔(ギター)、Rio(ベース)、はらゆうな(ドラムス)から成る4人組ロック・バンド。2023年に町田で結成され、現在は下北沢を中心に活動している。2024年以降、ファースト・シングル“Aspiration”を皮切りに楽曲配信を始め、同年にKOGAから初の全国流通盤となったEP『Injection e.p.』を発表。サーキット・イヴェントなどへの出演でも話題を集めるなか、7月2日にセカンドEP『Astro Buddha』(KOGA)をリリースする。