下北沢という街に溢れる猥雑なエネルギーと自由で多文化な空気から生まれたパンク! 過去最高の充実度を示す『EXODUS』を引っ提げて、この6人はどこへ向かうのか?

 初ライヴで銀杏BOYZと共演! フジロック出演! Corneliusがリミックス!……と20年以上の活動においてトピックには事欠かず、解散と再編を繰り返しながらもパンク・シーンを駆け抜けてきた、でぶコーネリアスEX。コロナ禍に発表された“Your Of Jamaica”は、ジャマイカ生まれのフロントマン、CHIAKI率いるバンドの集大成というべき楽曲で多くの反響を呼んだが、その後も初ワンマンや主催イヴェント〈デブリンピック〉を開催。さらにIdol Punch、the dadadadys、OLEDICKFOGGYとの共演など活動の幅を広げ、これまで以上に活発な動きを見せている。そんな彼らが下北沢の老舗レーベルKOGAと手を組んで、10年ぶりのアルバムを堂々完成! 〈HIGH ENERGY/PUNK(ハイエナジースラッシュパンク)〉と銘打たれたこのアルバムは、エネルギーに満ちた怒涛の勢いのパンク・サウンドで最後まで聴き手を圧倒する!

 「もうエネルギーの塊を出せるだけ出したかった。これが自分たちのファースト・アルバムみたい。いままで何やってたんだよって感じですが(笑)」(CHIAKI、ヴォーカル)。

でぶコーネリアスEX 『EXODUS』 KOGA(2025)

 カオスでエクストリームなイメージはそのままに、新機軸となるような楽曲も。

 「プログレやサイケなど自分の好きな感じを出せたのは“C”。曲作りやレコーディングは半分セッションみたいな感じで、お互いがお互いの間をすり抜けて演奏するようなスリリングな感じがありました」(G-JOE、ギター)。

 「9分弱もあるインストの“BREAK WATER”もまさにそんな感じで、終わり方が決まっていないまま本番に挑んだんですけど、やってみれば気持ち良いままスッと完成しました」(OH TINY、ドラムス)。

 しっかりとした歌メロのある「まるでシャム69みたいな」(CHIAKI)シンガロング・ナンバー”PIERROT”、テラ・メロスにも通じるジェットコースター的な突き抜けた展開に朗読と叫びを乗せた“Trippin’”、KEYTALKのカヴァーから再構築された“HUMAN FEEDBACK”など、意欲に溢れた多彩な楽曲は聴き応え抜群。またそこには〈ヤメランネ ヤメランネエナ〉(“GRAND OVERTURE”)〈誰も知らない景色を 僕らは求めて〉(“PIERROT”)と、これまでの彼らの曲にはあまりなかった真正面から剥き出しの本音を吐き出す歌詞、「全部思ったまま曲に乗せていくと決めている」(CHIAKI)という決意も見え隠れする。

 「メンバー全員バンドに重心が乗ったというか、〈ちゃんと曲を届けて聴いてもらう〉っていう意識はすごく高まっています」(TAKEMASA、ギター)。

 「〈こんなにちゃんと音楽をやってるバンドなんだ〉と改めて思ってもらえる作品になりました」(DANMATSU、ギター)。

 「僕らってファースト・アルバムを出したときから、リリース時にはそのアルバムの曲をライヴでほとんどやっていなくて。セカンドもそうだったし、発表した音楽といまやりたい音楽に齟齬が生じていることが多かった。でも『EXODUS』は自分たちがいまライヴでやっていることとぴったり一致している。この感覚がすごく新鮮なんですよね」(OH TINY)。

 〈EXODUS〉=〈脱出する・移住する〉などの意味を持つ言葉だが、このアルバムを引っ提げて彼らはどこへ向かうのか。

 「いままで拠点にしてきた下北沢の界隈はもちろん好きだけど、思い切って進んで行き、どんどん離れていってもいいのかなとも感じています。僕らとしては単純にいろんな人といろんな場所でやりたい」(CHIAKI)。

 「今回の制作期間には、自分たちの曲を聴いて鳥肌が立つとか涙が出るとか、すごい経験ができた。フェスに出たり、次のアルバムを作ったり、そういう楽しいことを突き詰めていった先に何が見えるのかを考えますね。だって『EXODUS』という船に乗ったオレらの目的地はまだ決まってないわけじゃん」(OH TINY)。

 「いや、決まってるよ! ジャマイカでしょ! これは本気だよ? もう行くしかないんだから」(CHIAKI)。

でぶコーネリアスEXの近年の作品。
左から、THE SENSATIONSとの2024年のスプリット・7インチ『でぶコーネリアスEX THE SENSATIONS 7inch Analog SPLIT』(KOGA)、2021年の12インチ“Your Of Jamaica”(KIZZ)