名カバーなどで聴ける、余裕すら感じさせる成熟したボーカル
1970年の日本万国博覧会(大阪万博)のテーマ曲“世界の国からこんにちは”から始まるDISC 2は、60年代後半から80年代半ばまでに発表されたナンバーが並んでいる。世界のガレージロックファンから愛されるGSバンド、アウト・キャストのカバーとなるハマクラこと浜口庫之助作の“エンピツが一本”、中村八大による自作自演版も有名な“太陽と土と水を”、NHKの連続人形劇「新八犬伝」のエンディングテーマ“夕やけの空”、アメリカでもシングルカットされた“ELIMO(襟裳岬)”(かの地のカントリーミュージシャンをバックに歌った森進一“襟裳岬”の英語詞カバー)、そして生前最後のシングルとなった荒木とよひさ × 三木たかし作品“懐しきlove-song”など余裕すら感じさせる成熟したボーカルが魅力的だ。
“懐しきlove-song”のB面曲だった“心の瞳”もまた重要な1曲。長年連れ添った夫婦や家族との絆がテーマになった歌詞は聴くたびに胸を熱くさせられるが、そんなあったかい世界をどこまでも柔らかな声色で彩り豊かに表現してみせる九ちゃんの歌唱が絶品で、いつも惚れ惚れとさせられてしまう。録音したばかりの曲をテープでコピーして自宅へ持ち帰り、妻である柏木由紀子に 〈ぼくたちのことを歌ったような曲だよ! 聴いたらきっと、泣いちゃうよ!〉と九ちゃんが嬉しそうに話したというエピソードが忘れられない。
さらに、通常のベストではあまり見かけないナンバーが散りばめられていて、例えば自身が司会を務めたテレビ番組「ふれあい広場・サンデー九」の主題歌で、北海道限定でリリースされた“何かいいことありそうな”や、“おふくろ”“背のび”“21世紀の歌”など1994年に発売された『坂本九 メモリアル・ボックス』にのみ収録されていた当時の未発表曲などがラインナップに名を連ねている。
なかでも注目したいのは、覆面歌手XQS名義で発表した“ぶっちぎりNO文句”。ボ・ディドリーを彷彿とさせるビートに沖縄民謡ふうのご陽気なお囃子なども付いた、終盤にはプレスリーチックな歌唱までもが飛び出す珍味的な1曲で(作詞:阿久悠、作編曲:井上大輔)、こういう曲をもっとたくさん聴きたかったと思わずにいられない。
優れたライブパフォーマーとしての魅力が垣間見えるDISC 3
そして最後のDISC 3だが、“九ちゃん音頭”がひょいと顔を出す“ひとりぽっちの九ちゃん”のような東芝フォノブックのソノシート音源など、ここにもレアトラックがいろいろと揃っている。このDISCには彼のお喋りやライブMCがふんだんに散りばめられていて、エンターテイナーっぷりがのぞけるだけでなく、近所の気のいい兄ちゃん的な九ちゃんが楽しめるあたりも聴きどころといえよう。それと同時に、アルマ・コーガンの“グッドバイ・ジョー”、ハンク・ウィリアムスの“ユア・チーティン・ハート”などライブでのカバー音源も集められていて、ライブパフォーマーとしての魅力が垣間見える。
ロックテイストの濃ゆい“何かが終った”や“想い出のブルー・ジーン”といった日本語詞によるプレスリーの名曲カバーで繰り出されるシャウトとかカッコ良すぎるでしょう(九ちゃんのワイルドなステージングが記録された鈴木清順監督の1960年作「すべてが狂ってる」を再見したくなった)。
そのほかにも丸山明宏(美輪明宏)の“ヨイトマケの唄”のカバーなど名場面がいくつも出てくるけど、1985年のライブで披露された“21世紀の歌”から1971年の渋谷公会堂公演で収録された“さよなら さよなら”へとつながるエンディング。これはちょっとヤバいです。不意に喰らったりすると涙が止まらなくなってしまうと思われるので、心して対峙なされるように。
世界中を明るく照らした九ちゃん印の笑顔が全編を彩る決定版的ベスト『坂本九』。言うまでもなく、ゆったりと空を見上げながら聴くのがうってつけ。しかしあれからもう40年が経っただなんて信じられませんね。ホントあっという間でしたよ、九ちゃん。
RELEASE INFORMATION
リリース日:2025年8月20日(水)
品番:UPCY-8065/7
価格:4,950円(税込)
仕様:SHM-CD 3枚組
TRACKLIST ※()内は作詞/作曲/編曲
DISC 1
1. 上を向いて歩こう(永六輔/中村八大/中村八大)
2. 悲しき六十才(ムスターファ)(訳詞:青島幸男/アザム・バークレイ/ダニー飯田)
3. ビキニスタイルのお嬢さん(訳詞:岩谷時子/ポックリス/ダニー飯田)
4. ステキなタイミング(訳詞:漣健児/トビアス、バラード/ダニー飯田)
5. カレンダーガール(訳詞:星加ルミ子/ニール・セダカ/ダニー飯田)
6. 九ちゃん音頭~それが浮世と云うものさ(青島幸男/ダニー飯田/ダニー飯田)
7. GIブルース(訳詞:みナみカズみ/R.ベネット/ダニー飯田)
8. 九ちゃんのズンタタッタ(聞いちゃいけないよ)(青島幸男/青島幸男/ダニー飯田)
9. 何処かでだれかが(菅沼定憲/ダニー飯田/半間巌一)
10. あの娘の名前はなんてんかな(永六輔/中村八大/中村八大)
11. 一人ぼっちの二人(永六輔/中村八大/中村八大)
12. 君なんか君なんか(永六輔/中村八大/中村八大)
13. 見上げてごらん夜の星を(永六輔/いずみたく/渋谷毅)
14. 勉強のチャチャチャ(永六輔/いずみたく/川口真也)
15. 明日があるさ(青島幸男/中村八大/中村八大)
16. 幸せなら手をたたこう(きむらりひと/アメリカ民謡/有田怜)
17. 君が好き(永六輔/中村八大/中村八大)
18. サヨナラ東京(永六輔/中村八大/中村八大)
19. 夜明けの唄(岩谷時子/いずみたく/いずみたく)
20. ともだち(永六輔/いずみたく/いずみたく)
21. 涙くんさよなら(浜口庫之助/浜口庫之助/橋本光雄)
22. 皆んなで笑いましょ(河野洋/斉藤太朗/前田憲男)
23. レットキス(ジェンカ)(永六輔/Rauno Lehtinen/前田憲男)
DISC 2
1. 世界の国からこんにちは(島田陽子/中村八大/中村八大)
2. さよなら さよなら(マイク真木/中村八大/中村八大)
3. エンピツが一本(浜口庫之助/浜口庫之助/前田憲男)
4. 若者たち(藤田敏雄/佐藤勝/前田憲男)
5. 遠い昔の母の胸に(河野洋/坂本九/橋本光雄)
6. マイ・マイ・マイ(山上路夫/Bob Saker-Jack Winsley/佐和田容堂)
7. 太陽と土と水を(中村八大/中村八大/中村八大)
8. 夕やけの空(石山透/藤井凡大/藤井凡大)
9. ELIMO(襟裳岬)(岡本おさみ 英語詞:くわじまひろし/吉田拓郎
/CLIFF ROBERTSON)
10. WHY(若者たち)(藤田敏雄 英語詞:くわじまひろし/佐藤勝
/CLIFF ROBERTSON)
11. 何かいいことありそうな:北海道限定SINGLE(奥山侊伸/坂田晃一/坂田晃一)
12. そして想い出(永六輔、丸山浩路/中村八大/中村八大)
13. 生きていてよかった(永六輔/中村八大/中村八大)
14. 親父(坂本九/坂本九/桜庭伸幸)
15. ぶっちぎりNO文句:覆面歌手XQS名義(阿久悠/井上大輔/井上大輔)
16. おとなの童話 〜今だからいうけれど〜:覆面歌手XQS名義(阿久悠/井上大輔/井上大輔)
17. 懐しきlove-song(荒木とよひさ/三木たかし/川口真)
18. 心の瞳(コーラス入り)(荒木とよひさ/三木たかし/川口真/コーラスアレンジ:川口真)
19. 心の瞳(合唱バージョン):指揮 相澤直人/歌 あい混声合唱団
(荒木とよひさ/三木たかし/横山潤子)
20. ハッピー・バースデイ(Patty Hill/Mildred Hill、岩井直溥)
21. おふくろ(不詳/不詳)
22. 背のび(永六輔/中村八大/中村八大)
DISC 3
1. MC:パラキンについて
2. 題名のない唄だけど(ダニー飯田/ダニー飯田/ダニー飯田)
3. MC:ゴールデン・レコードについて
4. monologue:ひとりぽっちの九ちゃん(1枚目)(作・構成:青島幸男)
5. monologue:ひとりぽっちの九ちゃん(2枚目)(作・構成:青島幸男)
6. MC:10分間の休憩です
7. 何かが終った(日本語詞:阿久悠/Mike Stoller/横内章次)
8. 想い出のブルー・ジーン(日本語詞:阿久悠/C.L.Parkins/横内障次)
9. グッドバイ・ジョー(漣健児/ウイットスタット-ルーズ-ニューウェル/ダニー飯田)
10. ユア・チーティン・ハート(LIVE)(H.Willams/H.Willams/H.Willams)
11. ラヴ・ミー・トゥナイト(LIVE)(L.Pilat-M.Panzeli/L.Pilat-M.Panzeli)
12. ヨイトマケの唄(LIVE)(丸山明宏/丸山明宏)
13. 涙(LIVE)(永六輔/橋本光雄/橋本光雄)
14. すずらん(LIVE)(永六輔/いずみたく)
15. 21世紀の歌(LIVE)(和田誠/坂本九/藤野浩一)
16. さよなら さよなら(LIVE)(マイク真木/中村八大/中村八大)
スーパーバイザー:柏木由紀子(坂本九音楽事務所)
ジェネラルプロデューサー:山田道枝(マナセプロダクション)
プロデューサー:新田和長(新田事務所)、子安次郎(ユニバーサル ミュージック)
ディレクター:山田昌治(マナセプロダクション)、藤原繁樹(ユニバーサル ミュージック)
エディター:佐藤利明(佐藤利明事務所)
マスタリング・エンジニア:藤野成喜(ユニバーサル ミュージック)
セールス・プロモーション:北村勝(ユニバーサル ミュージック)
レーベル・ヘッド:浅井有・浦田功(ユニバーサル ミュージック)
エグゼクティブ・プロデューサー:今成一裕(ユニバーサル ミュージック)
写真提供:坂本九音楽事務所・マナセプロダクション
デザイナー:富川真一(トムス)
デザイン・コーディネート:萬年里司
制作進行:関口智美(ユニバーサル ミュージック)
制作管理:渡部清隆・前岡光希(ユニバーサル ミュージック)
■スペシャルサンクス
中村力丸(八大コーポレーション)
土屋友紀子(オールスタッフ)
永麻理(6オクターブ)
青島美幸(パロディ社)
兼井眞行(坂本九音楽事務所)
大島博文(アンクルキュー)
竹内仁司・南任久美子・磯貝恒夫・磯貝育代(スタッフQ)
飯島孝太郎
PROFILE: 坂本 九
本名:大島九(ひさし)
出身地:神奈川県川崎市
血液型:A型
星座:射手座
趣味:テニス
エルヴィス・プレスリーに憧れて歌いはじめ、第一プロダクションのザ・ドリフターズのボウヤ経験の後、ジャズ喫茶で歌い、そこでマナセプロダクションに見出され、1958年にダニー飯田とパラダイスキングのメンバーに参加。1960年、東芝レコード移籍第一弾である“悲しき六十才(ムスターファ)”やそれに続くアメリカンポップスのカバーである“ステキなタイミング”などが大ヒット。お茶の間のアイドルとしてテレビ、ラジオ、映画、ステージにて大活躍した。
NHKの歌番組「夢であいましょう」で“上を向いて歩こう”を歌い、同曲は海外でも〈スキヤキ・ソング〉と題し発売され、全米1位を獲得。日本初の世界的ミリオンセラーとなる。その人気は現在もなお衰えず、これまでのセールスは全世界で1,500万枚以上という驚異的な数に達している。
また、ミュージカル「見上げてごらん夜の星を」やブロードウェイミュージカル「努力しないで出世する方法」をはじめ、ミュージカル、映画、ドラマなどで幅広く活躍した。日本万国博覧会政府出展懇談会委員の若者代表、さらに〈あゆみの箱チャリティショー〉や身体障がい者のための番組を通じ、チャリティー活動にも意欲をみせ、STV「ふれあい広場・サンデー九」、手話の歌“そして想い出”など福祉にも力を注ぎ、子どもから大人まで親しまれた。
その後もCMなどで楽曲は使われ続け、“上を向いて歩こう”が日本を代表する曲として世界中で歌われるなど、いまもなお歌声は消えることがない。特に最後のレコードとなった“心の瞳”は中学校の教科書にも掲載され合唱曲として知名度を高め、人々の心に坂本九は生き続けている。
2024年、第66回日本レコード大賞で“上を向いて歩こう”が〈日本作曲家協会名曲顕彰〉を受賞した。
公式サイト(坂本九音楽事務所):https://www.kyusakamoto-music.com/
マナセプロダクション:http://www.sakamoto-kyu.com/profile/profile.html
ユニバーサル ミュージック:www.universal-music.co.jp/sakamoto-kyu/
