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ひとつの極点たるパフォーマンス

 以前取材した際に〈お子様向けなアルバムにされてしまった『In Color』の反省を踏まえて、傑作にすべく力を入れた〉とリックが言っていた『Heaven Tonight』からは、5曲が選ばれている。リックが敬愛するロイ・ウッドがムーヴ在籍時に発表した“California Man”のカヴァーや、ELOの影を感じさせる“On Top Of The World”は、当時のライヴでは定番。彼らが97年にサブ・ポップから出したシングルでムーヴの“Brontosaurus”をカヴァーしていたことも思い出す。カート・コバーンやビリー・コーガンなどグランジ/オルタナ勢からも支持されたチープ・トリックは、その世代にとってゴッドファーザー的な存在だった。

 “On Top Of The World”のMCでリックが言う〈1980年代には気をつけろ!〉は、彼らがこれから多難な80年代を迎えることを知っていると、何とも皮肉だ。次作『All Shook Up』(80年:24位)の発売直前に、他のメンバーと関係が悪化していたトムはバンドを脱退。『Lap Of Luxury』(88年)でトムが劇的復帰を果たすまでの間、勢いを失ったバンドは長い暗中模索の時期を経験する。

 〈At Budokan〉での熱演が印象深い“Ain’t That A Shame”“I Want You To Want Me”“Surrender”といった人気曲を含む本作は、連日連夜のライヴで鍛え上げた4人の凄味を伝える重要な記録。コミカルなキャラクターに気を取られて彼らを軽く扱ってきた人々は、現場主義ロックンロール・バンドとしてのシリアスな側面を見落としている。武道館公演も含む最後の来日公演を見届ける前に、ひとつの極点を迎えた時期の壮絶なライヴ・パフォーマンスを、この作品でじっくり味わってほしい。 *荒野政寿

今回のライヴ盤『Are You Ready? Live 12/31/1979』で演奏されている楽曲のオリジナルを収録したチープ・トリックの作品を紹介。
左から、77年作『In Color』、78年作『Heaven Tonight』、79年作『Dream Police』(すべてEpic)

チープ・トリックのメンバーが参加した近年の作品。
左から、トッド・ラングレンの2022年作『Space Force』(ATOZ)、ジョー・ペリーの2018年作 『Sweetzerland Manifesto』(Roman)