小さなレーベルの大きな志――リスペクトレコードの軌跡(奇跡)を凝縮
小さなインディーズを続けるのは大変だ。
才能や時代を見抜く感覚、才能が発揮できる環境を整える力、聞き手に届ける方法、それを支える資金がなければならない。音楽に対する愛情や情熱が不可欠なのは言うまでもない。とはいえ理想を追求するだけでなく、状況に応じて妥協する柔軟性も必要だ。しかしそれでもまだ足りない。なぜなら音楽産業には、運という予測不可能な要素がからみやすいからだ。
だからリスペクトレコードのように小さな独立レーベルが創立30周年を迎えられたのは奇跡に近い。パッケージからネット配信へとメディアが根本的に変わりつつある時期に続けて来られたのだからなおさらだ。
このレーベルの作品は、ワールド・ミュージックを中心に、ジャズ、シャンソンなど多岐にわたっている。南イタリアの舞踊曲ティピカのようにコア度の高い音楽もある。
いずれもいまのポピュラー音楽の主流とは言い難い。にもかかわらずレーベルが続けられたのはどうしてか。逆説的に聞こえるかもしれないが、主流じゃないからこそでもある。世の中には、大手の常識のふるいにかけられて、素晴らしいのに埋もれている音楽が少なくない。その知られざる宝石を地道に掘り起こして、聞き手に橋渡ししてきたからだ。
この30周年記念盤には、20周年記念盤以降の10年間にリスペクトレコードが原盤制作したアルバムからの19曲とハシケンの新録“いつも、ありがとう”が収録されている。
沖縄の民謡やポップスやジャズ、フランスのマヌーシュ・スウィングやアコーディオン音楽が多いのは、このレーベルの得意とするところだ。カーボヴェルデとブラジルのアーティストの共演作のように、現在のポピュラー・ミュージックで起こっている異文化交流の流れを体現するような作品もあれば、いやし系の音楽として聞けそうなオカリナの曲もある。
レーベルは40周年記念盤もリリースする目標を掲げているとのこと。志は大きければ大きいほどいい。
