YMOの名をたびたび目にした2025年
1978年のデビュー以降、日本のみならず世界中のアーティストに影響を与えてきたYELLOW MAGIC ORCHESTRA。ご存じの通り、メンバーの高橋幸宏と坂本龍一は2023年にこの世を去ってしまったためグループの活動を行なうことは出来ないが、それでも今年は〈YMO〉の名前をさまざまなカタチで目にしたという音楽ファンは多いはず。そこで今回は、2025年のYMOの動きを振り返っていこうと思う。
79年のライブ音源とMUSIC AWARDS JAPANのパフォーマンス
まず、4月末に『YMO 1979 TRANS ATLANTIC TOUR LIVE ANTHOLOGY』が到着。同作は、YMOが1979年に行なった海外公演の模様を収めた5枚のCDと1枚のBlu-rayからなるボックスセットで、各ライブ音源の数々は歴史的価値が非常に高い仕上がりに。完全生産限定盤だったこともあり、早急に購入が困難になるほど高い人気を集めた。なお、8月からは同ボックスから各公演の音源が単品で順次リリース。各サブスクリプションサービスでも配信されているので、未聴の方はぜひチェックを。
そして、5月に開催された国内最大規模の国際音楽賞〈MUSIC AWARDS JAPAN〉を象徴するアーティスト〈SYMBOL OF MUSIC AWARDS JAPAN 2025〉にYMOが選出されている。授賞式のオープニングでは、Perfumeや砂原良徳、STUTS、ちゃんみな、Number_i、角野隼斗、新しい学校のリーダーズ、岡村靖幸ら豪華アーティストが“RYDEEN”をモチーフとしたトラックに乗せてパフォーマンスを披露するオープニングショー〈RYDEEN REBOOT〉が公開された。
なお、授賞式の冒頭では細野晴臣が登壇してYMOについての思いを語る場面も。会場に集った人々から万雷の拍手でもって迎え入れられた細野は、高橋と坂本の名前を出して「彼らの才能があってこそ、僕はここに立つことができてます」とコメントするなど感動のシーンを演出した。このスピーチから前述の〈RYDEEN REBOOT〉へと繋がるワンシーンは、YMOのDNAが現在の音楽シーンに〈継承〉されていること強く感じさせる見事なもので、〈2025年のYMO〉を象徴するハイライトだったのではないだろうか。
また、授賞式の前日にはYMOのトリビュートコンサート〈MUSIC AWARDS JAPAN A Tribute to YMO -SYMBOL OF MUSIC AWARDS JAPAN 2025-〉が開催。メンバーとの深い親交でも知られる高野寛が〈バンマス〉を務めたModern Vintage Future Orchestraがホストバンドとなり、ゲストの岡村靖幸や小山田圭吾、坂本美雨、ジンジャー・ルート、東京スカパラダイスオーケストラ HORN SECTION、TOWA TEI、原口沙輔、松武秀樹、山口一郎(サカナクション)とともに名曲の数々を届けてくれた。「ジャパニーズジェントルマン、スタンドアッププリーズ!」の掛け声とともに観客を総立ちにさせたジンジャー・ルートによる“TIGHTEN UP”や、当時サポートメンバーを務めた松武秀樹が通称〈タンス〉と呼ばれるアナログモジュラーシンセとともに登場した“東風”の海外バージョン(途中のボーカルは坂本美雨が担当)など、一夜限りの貴重なステージの数々が実現した。
個人的な白眉は、Modern Vintage Future Orchestra単体による“MAD PIERROT”。〈日本を代表するモダニズム建築〉とも称される国立京都国際会館メインホールの4階まで吹き抜けた高い天井の下、日本が世界に誇るテクノディスコの名曲を壮大かつアッパーなテイストでカバーしてみせた。難易度が高いこともありYMO自体も初期のライブで披露して以降は演奏することがなかった同曲を、3人の遺伝子を継いだ腕利きのミュージシャンたちが令和の日本によみがえらせていく姿には深い感銘を覚えるはず。