感情って本来は曖昧なもの
今回のEPは、新体制初のまとまった音源集だけにフレッシュなムードが満載。なおかつ、従来のthe paddlesらしさも感じられる全6曲が並ぶ。
「特にコンセプトがあったわけじゃなくて方向性も違う6曲やけど、同じ盤に収めたらちゃんとthe paddlesの名刺になる。そんなEPやと思います」(柄須賀)。
「剣人のドラムだから実現できたアレンジばかりなんですよ。皇司の歌詞によって、不思議な一貫性が生まれているところも気に入ってますね」(松嶋)。
「個人的には、初めて正規のバンド・メンバーとしてリリースできる全国流通盤。好きなことをやれていて、こうして形になったことが嬉しいです」(渡邊)。
印象深いのは、一段と振り切った恋愛ソングの数々。ジャケット・アートワークのように、熱意や嫉妬の赤が思い浮かぶ、感情的で狂気的で倒錯的な世界観に驚かされる。冒頭曲“ちぎれるほど愛していいですか”の〈ちぎれるほど〉という表現から早くも強烈だ。
「高校時代から言うてる皇司の口癖なんですよ(笑)。〈ちぎれるほど眠たいわ〉〈ちぎれるほど酔うてる〉とか、ホンマによく使っていて」(松嶋)。
「ストイックな恋愛模様を描きました。ジャケは曲数を示す6本のアネモネが燃えた、中心が目にも見えるちょっと怖いデザインにしています。花を育てる趣味はないけど、誰かに贈る行為や花言葉の存在は素敵だなと思っていて、そういう取っ掛かりから書いたのが“赤いアネモネ”。さらに“恋愛ヒステリック構文”は、ラランドの大好きなネタ〈お母さんヒス構文〉の音楽版みたいな試みをふざけ倒してやりました(笑)。EP全体にコミック感とラブコメ感が散りばめられているのもいいんじゃないかな」(柄須賀)。
「“ちぎれるほど愛していいですか”も“赤いアネモネ”も、サウンドは軽やかでポップなんですよね。跳ねたリズムなど新たな要素も聴きどころです」(渡邊)。
「6曲のなかでもっとも強いワード」(柄須賀)という理由から、EPタイトルになったのが“結婚とかできないなら”。この曲はどんな経緯で作られたのだろうか。
「手短に連絡を取って会う恋愛が増えるなか、〈結婚できへんのになんで付き合ってんねやろ〉みたいな焦りや迷いを抱いている人も多いんじゃないかと思ったんです。あと、昨今のエンタメについては受け手が答えを求めすぎる、起承転結がハッキリしたものを欲する傾向があるので、〈とか〉をあえて不恰好に残し、〈結〉の部分がない、2人の関係がダラダラと続くようにも描きました。人間の感情は本来、これくらい曖昧なのがリアルだと思う」(柄須賀)。
代表曲“ブルーベリーデイズ”の続編ですでに配信シングルとしても発表されている“夏の幻”、できるだけ一定に揃えたビートやループ感を持たせたコード進行のもとで、バンドの現在地を着飾らず力強く歌った“会いたいと願うのなら”も秀逸で、来年に控えたリリース・ツアーへの期待が膨らむ。
「再スタートですね。いろんな経験をしてきたけど、剣人が入ってくれて1年目の気分に戻れた感じもある。めっちゃいい状態やと思います!」(柄須賀)。 *田山雄士
the paddlesの作品。
左から、2019年のミニ・アルバム『EVERGREEN』、2020年のシングル『スノウノイズ / 22』、2020年のミニ・アルバム『THE ERA』、2022年のミニ・アルバム『efforts』、2023年のEP『ベリーハートビート E.P.』、2024年のEP『オールタイムラブユー E.P.』(すべてPaddy field)