
R&Bからヒーリング音楽まで幅広いジャンルを演奏
――ボーカリストの伴奏など、ポップスのお仕事もたくさんなさっていますよね。上田正樹さんとは、羽仁さんが活動を始めた当初から演奏していたのでしょうか?
「上田さんとお会いしたのは、僕が20代後半の頃かな。共通の友人がいて、その人の紹介でご一緒させていただきました。上田さんのバンドではR&Bなどジャズ以外の世界をいろいろと教えていただいてて、すごく勉強になりましたね」
――ソウルやファンク、R&Bも聴いていらっしゃいましたか?
「もちろん。ハービー・ハンコックのヘッド・ハンターズがスライ・ストーンやザ・JBズなどに接近していたので、そういった音楽へ手が伸びて聴くようになったんです」
――ソウルフルな路線の音楽に取り組んでいた一方で、俳優の田中健さんとヒーリングミュージックの作品も作っていらっしゃったんですよね?
「上田さんと知り合った頃、健さんと上田さんが同じ事務所に所属していたんですね。それで〈健さんが音楽をやるから一緒にやろうよ〉ということになって。クラシックの響きはすごく好きだったので、自分のピアノもヒーリングミュージックに合うかなと思いました。
そしてケーナを吹く健さんと2人でフォルクローレをやることになったのですが、フォルクローレの演奏は弦楽器と打楽器がメインで、ピアノは必要ないわけです。どうしようかなと思って、ソフトな感じで弾くとか、いろいろと試行錯誤しているうちにああいった音楽性になりました」
――ジャズ、ソウル、ヒーリングミュージックやフォルクローレと、それぞれのジャンルは音楽的にまったく違いますが、どうやって弾き分けていますか?
「僕は好きな音楽の幅が広すぎちゃって、どれも自分の中にあるものなんです。〈あれもやりたい、これもやりたい〉という面があるんですね。でも、それぞれの場で自分にしかできないことへチャレンジすることを常に考えて実践してきました」
強いビートを感じたい、奏でたい
――1990年頃にはサックス奏者、清水末寿さんのバンド〈達磨〉にも在籍なさっていました。チェリストの翠川敬基さん、ドラマーの小山彰太さんなどがメンバーだったようですが、ここではフリージャズを?
「そうなんです。メロディがある曲を演奏していたのですが、フリーの要素がかなりありました。清水さんたちとは何年もご一緒しましたが、フリーの世界の表現方法を勉強したいという意欲があったんですよね」
――アコースティックピアノのソロアルバム『Dream Time』『Moon Tone』も出していらっしゃいます。ソロピアノアルバムは羽仁さんにとって原点回帰の作品ですか?
「健さんと一緒にヒーリング系の音楽をやっていた中で曲をたくさん作ったので、それらを形にしたいという希望があったんです。自分が演奏を始めたのはアコースティックピアノなので、やっぱりそこが原点、自分にとって始まりなので、すごく大事に思っています」
――ウォーネル・ジョーンズさん(ベース/ボーカル)、後藤輝夫さん(サックス/パーカッション)、マーティー・ブレイシー(ドラムス/コーラス)、Hank西山さん(ギター/コーラス)とのバンド、B-EDGEに結成したのはいつですか?
「メンバー同士はかなり古い知り合いです。バンドを組んでからは20年ぐらい経ったと思います」
――新作『Morning of Life』にもB-EDGEのメンバーが参加しています。羽仁さんは〈Funky & Melodious〉をご自身の音楽のテーマに掲げていますが、こういったグルーヴを前面に出すバンドはいま日本では珍しいですよね。
「グルーヴ重視の音楽は、やっぱり日本では弱い気がします。J-POPの傾向として楽曲のアンサンブルにおける音量バランスが偏っていて、ドラムやベースのグルーヴが弱いミックスの曲が多いですよね。
でも海外、特にアメリカの音楽ではドラムとベースがしっかりビートを刻んでいて、それにノって音楽を楽しんだりダンスしたりする文化が一般的です。要するに、リズムをとって体を動かしながら音楽を聴く。ブラックミュージックにおいてはそういったビートが大きな部分を占めているので、結局ブラックミュージックが好きだと強いビートを感じたいし、そういう音楽を鳴らしたいなって思うんです」