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新たな始まりと生まれ変わりのための〈人生の朝〉

――本作にも羽仁さんがおっしゃる強いビートとグルーヴを感じます。制作のきっかけは何だったのでしょう?

「羽仁知治トリオというバンドでは2010年くらいから始めてMotion Blue YOKOHAMAなどで定期的にライブさせていただいていました。

その後〈Funky & Melodious〉を掲げて新しいコンセプトのバンドを作り、この5、6年ライブをやってきました。その音の記録をしたかったというか、そういう作品を作りたいとずっと考えていたんです。ただコロナ禍に入ってしまったことなど、いろいろ事情があって時間がかかりましたが、今回はその思いを実現するために作りました」

――サウンドはブラックミュージックですが、ジャケットは日本的ですよね。

「〈Morning of Life〉というタイトルは、言葉どおり〈人生の朝〉のイメージです。〈朝〉は〈始まり〉ですよね。毎日、いつの瞬間からでも何かを新しく始めることができる。リセットもできる。朝が来れば、それは昨日の続きではなく生まれ変わることができる。そういう気持ちをもって進んでいければいいな、というコンセプトでした。それで日の出や朝のイメージをジャケットにしたんです。

富士山にしたのは、自分が日本人であるというルーツを打ち出したかったからですね。いまの時代、僕の音楽はサブスクなどを通じて世界のいろんな場所で聴いていただけると思うので」

――今回そういった精神的なメッセージを言葉にされていますが、作品を出す際、いつもそういったステートメントを発しているんですか?

「今まで言葉にすることは積極的にやってこなかったんです。でも、このアルバムを作るにあたって一つ参考にしたのが料理人の方なんですね。料理人の超一流の方もご自分の料理について言葉で伝える努力をすごくなさっていると感じることがありまして。たとえば〈この食材にこのような処理をすると、一口食べた瞬間に森のような香りが口いっぱいに広がります〉とか。自分のお店を経営して、お客さんがたくさん来ていつも予約がいっぱいで、そんな方でも言葉にして伝える努力をされていて。言葉のない音楽をやっている自分も見習って、もっとそういうことをしてもいいんじゃないかなと思ったんです」

 

江口弘史&ケニー・モズレーとのトリオが生む強靭なグルーヴ

――そして、トリオのチームワークは抜群だと思いました。羽仁さんのキーボード、ケニー・モズレーさんのドラムと江口弘史さんのベース、3人がガッチリ結びついてうねりを生み出しているからこそ、メロディを演奏する楽器やホーンセクション、ギターなども映えています。このトリオと演奏を始めたのはいつですか?

「もう5年以上は一緒にやっています。江口くんは土台をしっかりと支えて、グルーヴをいきいきとさせる力のある方だと思うんです。ベースというのは、建築物で言えば土台ですよね。音楽にも建築物のような構造があります。土台があって、壁があって、天井があって、屋根があって、といったふうに。その土台をしっかり支えるのがベースの役目です。ベース奏者の中にはバイオリンやギターのように演奏する人も増えていますが、江口くんはベースに徹するすごく頼りがいのあるベーシストです。

彼は高校を卒業してからシカゴに長い間住んで、アメリカの様々な優れたバンドで音楽活動をしていたので、グルーヴのツボ――〈ポケット〉とよく言いますけど、僕らの演奏している音楽のグルーヴのポケットをとても深いところで表現する素晴らしいミュージシャンです。ケニーとの相性もすごくいいんですね」

――ケニーさんとは上田正樹さんのバンドで初めてご一緒されたのでしょうか?

「出会ったのは僕が20代の頃だったと思います。それからずっと、ある意味でコンビというか、いろいろな現場で一緒にやらせてもらっています」

――ケニーさんの魅力は何ですか?

「いろいろな音楽をよく知っているし、グルーヴに関しては達人というか、一緒に演奏すると本当にものすごく勉強になる。グルーヴの先生みたいな人ですね」

――以前、ケニーさんは忌野清志郎さん、三宅伸治さん、坂本冬美さんのバンド、SMIのメンバーでした。日本のシーンで約40年活躍していらっしゃいますね。

「ケニーは子どもの頃、ジェームス・ブラウンのバンドで演奏したこともあるそうです」