(左から)Sacchan、千秋、Miyako、SORA

47都道府県ツアーを開催中のDEZERT。彼らがメジャー初のシングルとして両A面の『「火花」/「無修正。」』をリリースした。Prime Videoドラマシリーズ「人間標本」挿入歌“「火花」”を含む本作は、日本武道館でのワンマンライブを成功に収めるなど、勢いを増すばかりなバンドの現在地が表れたシングル。今回は音楽ライター荒金良介によるメンバー全員へのインタビューによって3つの収録曲を掘り下げ、2025年の手応えや実感、来年の展望なども語ってもらった。 *Mikiki編集部

DEZERT 『「火花」/「無修正。」』 クラウン(2025)

 

全国で勝つための練習試合が47都道府県ツアー

――現在は〈DEZERT 47 AREA ONEMAN TOUR ’25-’26 “あなたに会いに行くツアー”〉と題して、47都道府県を回るツアーを行なっています。後半戦に差し掛かっていますが、今の心境から聞かせてもらえますか?

千秋(ボーカル)「僕はほかのメンバーに聞きたいですね」

SORA(ドラムス)「今38本目を終えたところで、どこかのMCで喋る機会があって伝えたんですけど、全国47都府県を回ること自体がバンドを続けていないとできないことだから。感謝の気持ちというか、そういう感情が心の中にずっとありながらライブをやってますね」

Miyako(ギター)「47都道府県と考えたときに、その本数をこなしていくことを考えると、ツアーが始まる前は1本1本を大切にしなゃという気持ちがあったんですよ。数をやると、1本1本がおざなりになるのかなとも思ったけど、実際やってみたら1本1本が刺激的で新鮮で、バンドとしてこういう音楽を届けたいなという気持ちが1本ごとに出てきたから。いらない心配をしていたなと」

Sacchan(ベース)「ツアーが長くなると、バランスが難しいなと感じるようになって。自分の課題とバンドの課題、どちらかを忘れてしまうこともあって。それを再認識させられる場面もあり、反省点はありますね。自分の人間性とは?みたいなところに立ち戻ることもあるから。とはいえ、お客さん相手にやってるわけで、そこに対しては楽しくやれている気はするんですけどね。個人的にはちょっと難しい感情になってます」

千秋「ツアーを6月に始めた頃、わかっていたことですけど、自分に必死になる人もいれば、未来を見る人もいるし……それも大切なんですけどね。いろんな物差しがある中で、序盤は1つの物差しで測れてた気もしますね。1、2、3とターンを分けているんですけど、今のターン3でみんなよくわかんなくなってきてるんじゃないかなっていう感覚はあります。

SORAくんから出た感謝だったり、Sacchanが言った課題に関しても……それを再認識せざるを得ない状況というのは本数を重ねることの難しさでしょうね。ただ47都道府県ツアーをやりたいだけなら、そんなことにはならないんですよ。楽しい、楽しくないの2択でいいと思うから。でもそのつもりで始めたツアーじゃないだろうと。

なぜ47都道府県ツアーをやっているのか、なぜあなたに会いに行くツアーなのか、それがバラけてきている感じはありますね。答えはあるんですよ。みんなわかっているけど、そこにどう目を向けるかっていうとこですね」

――その答えを言葉にすると?

千秋「言葉にするのは難しいんですけど、『SLAM DUNK』で言うと、このチームで全国優勝したいのかい?という。日本武道館は全国大会1回戦だと思ってるんです。

武道館でやっても食えていけるとは限らないじゃないですか。音楽は戦いではないけど、もっと勝ちに行きたいよねと。全国で勝つための練習試合が47都道府県ツアーなんですよ。改めてそれを再認識するタイミングじゃないかなと」