
はぐれ者を肯定したい
――ラップの内容については、いかがですか。
SOMAOTA「これまでは自分が考えたリリックに誰かの修正や意見が入ることはなかったんですけど、今回のアルバムから、そこもバンドでやり取りすることが増えました。例えば〈ひとつのフレーズを繰り返すスタイルでいこう〉と皆で話し合って出来たのが“Hollow”とか“Stressor”だったり。〈この歌詞どう思う? 他にいい表現ないかな?〉とかメンバーにも相談してます」
takaosoma「〈1行目がこうで、3行目がこうだから、ここを繋げる2行目のラインを皆で考えよう〉っていう、ラップの大喜利みたいなこともしましたよ」
――リリックには、生まれ育ちや自分の体験など、個人的なテーマもよく出てきますよね。
SOMAOTA「けっこう本を読むんですけど、私小説によくある〈こじらせた内面〉を吐露するみたいな作品が好きだからかも知れないですね。あと、リリックに関しては、今回は伝わりやすさを意識しました」
――新作のタイトルである『Diaspora』という言葉は、故郷や祖国を追われた、あるいは離れた人々という意味ですよね。アルバムとしてはどういったテーマでしょうか?
SOMAOTA「はぐれ者に向けて作ったというか、はぐれ者に対して、はぐれたままでいい、はぐれ者であることを肯定したい、というテーマですね。それは自分がヒップホップから受け取ったメッセージでもあります」
――具体的にはどういったはぐれ者ですか?
SOMAOTA「さっきのクラブの話じゃないですけど、暗黙の了解だったり、見えないルールやコードって、世の中にいっぱいあると僕は思うんです。そういうのに入っていけない、なんか世の中からズレちゃう人、っていうイメージですね。そういう人に〈わかるわかる、俺もめっちゃズレてるよ〉と寄り添いたいというか」
クラブサウンドから影響を受けたUKジャズへの共感
――サウンド面では“Overdrive”のUKドリル~グライム感だったり、現行のイギリスの音楽の影響を感じました。
takaosoma「これまで自分たちの音楽ジャンルを、ちゃんと把握してなかったんですよ。ヒップホップなのか、広義のロックバンドなのか。人に〈ミクスチャー〉と言われても、それもよくわからないし(笑)。だから、ジャンルをちゃんと勉強してみようと思って。それで、ようやく去年、自分たちがやっていることはどうもロンドンとかの若手がやってる音楽に近いんだろうな、とわかって」
――なるほど。
takaosoma「UKのミュージシャンの中でも、トゥモローズ・ウォリアーズとかでジャズの教育プログラムを受けたアルファ・ミストみたいな連中が、その足で地元のクラブに行って、グライムやUKガラージのようなクラブミュージックを聴いて、それをジャズとしてやってみようという実験的な遊びをしてるんですよ」
――ジャズ評論家の柳樂光隆さんも、イギリスのミュージシャンの音楽教育について、よく言及していますよね。
takaosoma「イギリスは音楽教育に予算をかけているし、進んでますね。日本のバンドで同じことをやろうとしても、前提となるシステムが違いますし、プレイヤーのMIDIやビートに対する知識もまだまだですし。Ableton Liveの同期をどうやって現場で走らせるかとか、自分も勉強中ですね」