これは固定観念や自己否定へと決別するためのパーティー! 環境の変化に直面した4人だからこそ掴み得た新たなるマインド――ニュー・アルバム『Farewell Party』には始まりの予感がカラフルに花開いている!!!!
オルタナティヴ・ラップ・ロック
2018年に関西で結成され、〈ポスト・トリップ・ホップ〉を掲げてきた4人組バンド、TAMIW。作品リリースと共に幾多のメタモルフォーゼを重ねてきた彼らだが、新たに立ち上げた自主レーベル、Niwerからのリリースとなる4枚目のアルバム『Farewell Party』では劇的な変化を果たしている。
「私はTAMIWを結成するまで、本格的にバンドをやったことがなかったので、どういうふうに仕上げるべきかわからないまま、ある程度まで独りでデモを制作していたんです。そのデモを、みんなにサポートしてもらいながら完成させたことで、わかりやすくトリップ・ホップ色が出たのが2018年のファースト・アルバム『flower vases』。2020年のセカンド・アルバム『future exercise』はバンドでのセッションから作った作品なんですけど、そのやり方だと時間がかかるし、表現の幅も限られてくるので、2023年のサード・アルバム『Fight for Innocence』ではドラマーでもあるBON-SANが作ったビートを下地に、私を含む他のメンバーが肉付けしていき、歌を入れる制作スタイルにした。その作業がスムーズに進んだので、次の作品も同じやり方で臨もうと考えていました」(Tamikeem、ヴォーカル)。
マッシヴ・アタックやレディオヘッド、ビョーク、DJシャドウなどトリップ・ホップの影響が色濃い初期の作風は、オルタナティヴなバンド・サウンドを経由して、前作『Fight for Innocence』の際には、MPCやカセットテープによるサンプリングを駆使し、ヒップホップやベース・ミュージックを基調にしたエレクトロニックなトラックへと進化。それに伴い、Tamikeenの歌唱スタイルもリトル・シムズに触発されたというラップと歌をシームレスに行き来するアプローチに挑戦したり、2024年に配信されたリミックス集『REINTERPRETED WORKS VOL.2』においては、yahyel、鋭児、AAAMYYY、Cwondoをリミキサーに起用したり、バンド・フォーマットに囚われない多面的な表現を獲得した。
「トリップ・ホップに影響を受けながらも、私たちはバンドでもあるし、ライヴの経験をふまえたいまならセッションからいろんな曲が作れそうだなと感じたんです。そう考えているタイミングでメンバーの変動があって、新たにベースで(良村)太一くんが加わったことで、ロックを取り入れたり、みんなが聴きやすい要素を織り交ぜてみたり、バンド・サウンドでの試行錯誤を再開しました。そうこうするうちに、〈いまのTAMIWの音楽をトリップ・ホップと呼ぶのはどうもしっくりこない。どういうチャンネルが合うんだろう?〉と思うようになり、レッド・ホット・チリ・ペッパーズみたいなミクスチャーが近いのかなって」(Tamikeem)。
そして、ブーンバップやR&B、ロックを融合した〈ロック&ブーン〉を提唱し、ドージャ・キャットやタイラー・ザ・クリエイターらとのコラボレーションで名を上げたテキサスのオルタナティヴ・ラッパー、ティーゾ・タッチダウンのアルバム『How Do You Sleep At Night?』をきっかけに、2000年代の歪んだロック・サウンドやネプチューンズのバンド・プロジェクトであるN.E.R.Dがふたたびフレッシュに感じられるようになったというTAMIW。そのサウンドをさらに拡張し、自身の音楽性を〈オルタナティヴ・ラップ・ロック・バンド〉と再定義したニュー・アルバム『Farewell Party』が完成した。
「今回はサンプリングがベースではなく、実際に弾いたり叩いたりしてアレンジを組み立てていったんですけど、メンバーに弾き直してもらうことをあらかじめ想定していたから作業の進行もスムーズでしたし、僕とTamiさんが作ったデモにメンバーそれぞれが音やアイデアを加えて、やりとりを繰り返してブラッシュアップしていった曲や、新たに加わった太一くんのベースを活かした曲など、作り方の異なる曲が混在した作品ですね」(BON-SAN、ドラムス)。