
既存のジャズを超え、正解がない道を歩む
――KID FRESINOやSkaaiなど、ラッパーのバンドセットも割と普通になってきましたよね。あるいはSATOHとかバンドになったDos Monosとか、インディーだとQPLOだったり、トラック制作と演奏を兼ねるバンドも増えています。でも、トラックと生演奏の配分とか音源のライブでの再現度とか、バンドごとに違うと思うんです。皆、それぞれ我流でやるしかないというか。そこが大変でもあり、面白くもあるように思います。
takaosoma「方法論が皆バラバラで、正解がないんですよね。あと、そういうバンドも、多くてもメンバー3人とかだと思うんですよ。うちはサックスもいてキーボードもいて、毎回6人でやってるので」
――確かに、固定で6人という編成はあまりいないでしょうね。
takaosoma「だから、やっぱり自分たちで研究せざるを得ないですね。例えば、〈ジェイムス・ブレイクのあの曲みたいなフレーズが欲しい〉とか、〈UKガラージっぽいコーラスのかかったベースがいい〉って彼(たけひろ)に言っても〈いや、どうやったらええかわからん〉って話になるんですよ。彼がもともと好きなファンクとかとは違う音楽性だし、音質的にも両立は難しい。でもそこを自分はやりたいし、Black petrolを、イギリスのシーンに負けないバンドにしたいと思ってやってますね」
石尾紘樹(キーボード)「彼(takaosoma)の中の正解を目指すのは、面白いけど大変ですね(笑)。録音の時ならともかく、ライブだと、弾いてる内に、楽しくなってついつい手癖が出てしまったりするので」
――ベーシストとしては、いかがですか。
たけひろ(ベース)「楽器を長くやってる分、〈そんな音は無理やろ〉っていう固定観念というか、実現可能性で考えちゃう部分はありますね。最近は〈まずは一回やってみるか〉という風にチャレンジしています」
――サックスの安原さんの場合はどうでしょうか?
安原「サックスで上手いプレーヤーって、結局皆ジャズをやってるんですよ。僕もジャズ研でビッグバンドをやってたんですけど、ジャズよりもファンクとかフュージョンの方が好きだったんです。だから、今、ジャズの壁が立ちはだかってる感じですね。少しずつ挑んでます」
takaosoma「〈バンドは自由で楽しくあるべき〉っていうのは、僕もわかるんです。ただBlack petrolは8年も続けて、普通にやっていたら、もう新しい作品は作れないと思うんです。メンバー皆で新しいインプットをしない限り、以前やっていた音楽の焼き増しにしかならないんじゃないかと。だから、今は苦しいかも知れないけど、本当に楽しい音楽のためには、そういう修行というか苦しみがあることも……(姿勢を正して)当然だと思っています」
石尾「(笑)」
PERSIA、Sakepnk、Gimgigamとの境界を超えた共演
――ゲストについても質問します。表題曲でフィーチャリングしている、オーストラリアのシンガー、PERSIA(パージャ)さんは、どういった方でしょうか?
takaosoma「一昨年の年末ですが、バイトも辞めて、アレンジの仕事とかギターの録音で食べていくことにしたんですよ。でも結局向いてなくて、その生活もすぐ破綻して。じゃあもう、路上ライブでギターを演奏して、そのチップで生活していこうと思ったんですよ」
――なんというか、勢いがありますね(笑)。
takaosoma「はい(笑)。で、真冬に外でギターを弾いてたんですけど、寒いから誰も立ち止まらないし、どんどん精神的に追い詰められて。
そこに、オーストラリアからの旅行者だというPERSIAが声をかけてきたんですよ。僕が弾いてるソウルとかR&Bに反応して、〈私もシンガーだから、ここで歌わせて欲しい〉と。ダニエル・シーザーとかの曲を歌ってたんですけど、それが凄く良い歌で」
――ドラマのようですね。
takaosoma「で、後日PERSIAは普通に帰国したんですけど、今回アルバムを作ってて、故郷を離れた人、はぐれ者の集い、といったテーマについて考えてたら、〈PERSIAとの出会いも、そういう感じだったかもな〉と思い出して。アルバム的にも、女性ボーカルの曲が一曲欲しいと思ってたので、改めて彼女に連絡したら〈オッケー!〉と」
――自然な成り行きというか、縁がそのまま作品になった訳ですね。
takaosoma「“Hollow”を共作した、w.a.uにいたSakepnk(サケピンク)くんはA&Rから提案されたんですけど、話してみたらすごく意気投合して。去年会った人の中で、あの人が一番面白かったですね。いやもう、会えば一発でわかると思います、あの人の面白さ。ラップのディレクションも凄く優秀だし、実はバイオリンとかも弾けるんです。音楽の芯の部分で信頼できる、チャラくない人ですね。表面的にはチャラいんですが(笑)」
――“Stressor”でコラボしたGimgigam(ギムギガム)さんはどうでしょうか。
takaosoma「ギムさんも最高で、オシャレでクールだけど、柔らかい雰囲気の人ですね。スタジオでピザを取る時、〈ギムさん、ピザでいいですか?〉って聞いたら、〈ピザがいいです〉って言ってて、〈こういう人とは仲良くなれそう〉と思いました(笑)。
僕らはそもそも他のアーティストと一緒にやるということ自体馴れてないし、大変だったんですよ。でもそこを、例えば〈低音の処理が難しい〉とか〈フレーズのアプローチをどうしよう〉とか、そうやって困った時にGimgigamさんやSakepnkくんが〈こういうのはどう?〉と、助けてくれました。そういう、プロの仕事を感じられたのは、共作ならではだなと」