世界をちょっとだけ良くしたい
このユニットはツミキが作詞・作曲・編曲の軸を担っているが、みきまりあも作詞・作曲できることは大きな強み。彼女が詞曲を担当し、椎名林檎のような妖艶なムードで、〈後ろに感じる冷たい視線の眼 はやくこの瞬間から逃れたいけど〉と歌い出す“焦熱”は、どんな葛藤や焦燥を表したのかと思いきや……。
「この歌詞のテーマはラーメンです(笑)。私、ラーメンがめちゃめちゃ好きで、一人で並んで食べることもあるんですね。『EYE』というタイトルがあらかじめ決まっていたので、目とか視線をテーマにしたいと思ったときに、自分がラーメンを食べているときに感じる、並んでる人たちの視線について書こうと思って。焦ってる心情とは対照的にサウンドを冷たい感じにすることで、ゾクゾクするような感じを出しました」(みきまりあ)。
「この曲はある意味、遊びとして自分がやりたかったことにトライしました。グリッチ・テクノ/ハードコア・テクノ的な音をめざして、結果的に新境地になったし、すごく気に入ってます」(ツミキ)。
一方、〈るろうに剣心〉のエンディング・テーマになった“水光接天”をはじめ、歪んだギターが唸るエモーショナルなロックもアルバムの重要なアクセントに。サイケに傾倒した時期のオアシスを連想させる“カイカ”は、アルバムの重要なオープナーになっている。
「“カイカ”は90年代のオルタナをイメージして、僕的にはレディオヘッドからの影響も取り入れて制作しました。90年代の曲を聴くと、いまほど鬱屈してないというか、未来が明るい感じ、発明がまだたくさんあった時代だったように感じるんですよね。なので、そういう時代の強さを1曲目に持ってきたいと思ったのと、2曲目の“ミッドナイト・リフレクション”に繋がるような、文明がどんどん発達して、ついにロケットを飛ばすときのような曲にもしたくて。歌詞の最初の〈さあ行こう〉はガガーリンが宇宙へ出発するときに言った言葉です」(ツミキ)。
宇宙へと飛び立ったロケットが、ときに大気圏を突破し、ときに海の底へと潜りながら、最後に辿り着いたのは“I THINK”。パンキッシュな演奏を叩き付けるこの曲では、ツミキとみきまりあが歌詞を共作し、〈意味とか理由がひとりにさせる〉時代の中で、〈ひらめきがきっと世界を変える〉〈“わからない”が愛おしくなる〉と、力強いメッセージを投げかける。その目で〈I〉と〈愛〉を見つめ、視線の先には明るい未来があることを信じている。
「どんなアルバムにしたいかを考えるなかで、〈世界をちょっとだけ良くしたい〉というテーマが浮かんだんです。1曲で世界をひっくり返すことは難しくても、その曲を聴いた人の見る景色が変わったり、それぞれが持ってる世界を変えたりすることはできると思うから、聴いてくれる人に何か手を差し伸べられたらなって。1番の歌詞を書き終えたあとに、2番はまりあに書いてほしいと思ったんです。この曲を2人からのメッセージにしたかったから」(ツミキ)。
「歌詞もサウンドもストレートで、すごく刺さる曲だと思ったので、自分も日記のように思ったことをそのまま投影した歌詞にしたいと思いました。私はいろんなことを考えちゃいがちな性格で、普段生きているなかでも、誰かの言動に対していちいち意味とか理由を考えちゃうんです。でも、いろいろ考えても結局わからないことばかりで、むしろ正解がないことが自分にとっての救いだし、それすらも愛おしいと思える。それをそのまま歌詞にしました」(みきまりあ)。
「いまはSNSが発展して、人のネガティヴな部分も目に付きやすい時代。特に若い世代はそういう外的な要因で辛い思いをしてる人も多いと思うんです。でも大事なのは外側よりも内側で、自分が何かを考えたり、ひらめいたりすることで、それぞれの世界は変えられる。だから、聴いてくれる人にもっと自分を大事にしてほしいと思ったし、そのためにも最後は〈未来はうつくしいよ〉って言い切りたいと思ったんです」(ツミキ)。 *金子厚武
NOMELON NOMELONの作品。
左から、2024年のシングル“水光接天”、2025年のEP『HALO - EP』(共にソニー)
本文中に登場したアーティストの作品を一部紹介。
左から、ピンクパンサレスの2025年のミックステープ『Fancy That』(Warner UK)、レディオヘッドの95年作『The Bends』(Parlophone)