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スランプから復活し、ライル・メイズの音楽を継承する

 オーブリー・ジョンソン(ヴォーカル)は、2010年頃から10年近くニューヨークのシーンで活躍し、2020年にデビュー・アルバム『Unraveled』をリリースして高い評価を受けた。

 しかし、その直後からジョンソンは、コロナ・パンデミック、大きな影響を受けた叔父ライル・メイズの逝去、そしてストイックに高い完成度の音楽を追求するプレッシャーに押しつぶされ、数年間にわたって創作ができないスランプに陥った。2023年に、ジョンソンは、成果を求められず、完全に「創作だけ」に集中する環境の、マクダウェル・コロニーのアーティスト・イン・レジデンスに選ばれて参加し、復活のきっかけを掴む。そして本作『The Lively Air』が、完成した。

AUBREY JOHNSON 『The Lively Air』 Greenleaf Music/コアポート(2026)

 レコーディング・メンバーは、長年行動を共にしているマット・アロノフ(ベース)と大村朋子(ヴァイオリン)、新加入のジェイ・ソーヤー(ドラムス)を中心に、ライル・メイズ譲りの伸縮する自在のグルーヴを醸し出し、ヴォイスを中心に据えながら、室内楽的精度と即興性を併せ持つアンサンブルを確立した。大村のヴァイオリンの旋律と、アレックス・ロアのバスクラリネット、フルートのトーンは、見事なヴォーカルとブレンドされ、クリス・マッカーシー(ピアノ)のハーモニーが包み込む。ジョンソンのキャリアの初期から、多くの助言を与えてくれて、死後にグラミー賞を受賞したプロジェクトにも起用してくれた、ライル・メイズのオリジナルも2曲プレイして、トリビュートを捧げた。“Chorinho”は、メイズがエグベルト・ジスモンチを、 オマージュした曲だ。2010年にジョンソンは、メイズからこの曲を教わり、今も大切にプレイしている。本作では圧倒的なワードレス・スキャットを、聴かせてくれた。もう一曲のメイズ作品は、“Quem é Você (Close To Home)”だ。ブラジルの巨匠、ミルトン・ナシメントにもカヴァーされたバラードを、エモーショナルに歌い上げる。完全復活したオーブリー・ジョンソンが、ライル・メイズの衣鉢を継ぎ、新たな扉を開いた。