欧州ジャズの前線から届いた、繊細にして、蠱惑的な幻想世界
すでに今年を代表する名作との評を得ている、ベルギーのトロンボーン奏者ナブー・クレールハウトの新作。その幻想的世界が、いま語られる。

――まず〈Indigo〉とは?
「汚れから美へ、闇から光へ、探求から発見へと移行していく、ひとつの完結したプロセスです。どろっとした灰色から、美しく、気品ある青という色彩の変化も含まれています」
――今作のN∆BOUのメンバーが選ばれた背景はなんでしょう?
「ヘイス・イデマはバンドのオリジナル・ギタリストで、再び共演できうれしく思います。ダニエル・ヨンカースは魂に根ざしたドラミング・スタイルと誠実さが印象的。トラウィ・アメルリンクは、考え抜かれたアイデアを思いつき美しいベースで支えてくれます」
――2曲を故人に捧げた背景は?
「2024年夏に友人ステインが自転車事故で突然亡くなり、ツアー中で喪に服せず辛かったですが、内省的な今作故に自然に曲を捧げる流れになり、音楽で悲しみも喜びも喪失感も表現できました」
――影響を受けた音楽について
「アンブローズ・アキンムシーレ、クリス・ポッター、ブラッド・メルドー、ビル・フリゼール、ジョン・スコフィールド。作曲家キャロライン・ショウからは、今作で影響を受けています」
――今作の演奏上の特徴は?
「私が別にやっているアンサンブルでは、トロンボーン奏者5人に各々独立した旋律を演奏させたのに対し、今作は私1人がトロンボーンを担当。自然とダイアトニック中心のシンプルな旋律が増え、曲に余白も。そんな条件でのヘイスとの演奏がとてもうまく行きました。少なくとも半音階的なアプローチへの切り替え以外は自然な成り行きです」
――“Flux Bloom”の夢のようなサウンドについて
「リズムから発展させ、主にベースラインで5連符と7連符が鳴ります。毎回少し違う旋律を反復させ、ベースとドラムが前進します。ルバート気味の演奏は、ヘイスとボイスメッセージでやり取りした即興演奏から生まれ、フックになる旋律をサプライズ的に演奏しています。最後に私の旋律の上で、ヘイスに自由に弾くよう頼みました。選び抜いたエフェクトも重ねました。演奏は難しいですが、とても気に入っている曲です」
繊細さと洗練を湛えたテクスチャーの奥に、どこかアフリカ的な精神世界が垣間見れる。詩的な佇まいでリスナーを蠱惑する、そんな作品にぜひ、触れてほしい。