小さな選択を積み重ねた10年間
収録曲は全8曲(CDでは2曲のボーナス・トラックを収録)とコンパクトだが、『1626』にはバンドの創作意欲が濃密に閉じ込められている。メロウでダンサブルな“Bedroom Angel”に、爆発感のあるロック・ソング“愛はきっとLonely”、淡くきらめくロマンティックな“Vintage Car”――Re:nameの音楽的な豊かさを感じさせる多彩な楽曲を揃えている。
「“Bedroom Angel”はリファレンスがK-Popのサウンドなんですよ。ILLITやFIFTY FIFTYは、音楽的には高度なことをやっているのに、国や年齢を問わずさまざまな人たちに受け入れられているのがすげえなと思っていて。この曲は生楽器をあんまり使っていなくて、ほとんどシンセだし、AIの声も使ったりしている。聴いた人のリアクションが楽しみだし、個人的にも大好きな曲ですね」(高木)。
「“OTHER SIDE”はアニメのオープニング曲みたいなイメージ。他のRe:nameの曲ではやったことのないタッピングを入れた〈これぞギター・ロック!〉といったソロを弾きました。これもかなり挑戦した楽曲ですね」(Soma)。
アルバム終盤には、バンドが歩んできた人生を歌ったと思しき楽曲が並ぶ。7曲目“Forever Always”ではバンド史上初めて高木とヤマケンが共同で作詞を手掛けた。
「“Forever Always”はアルバムのコンセプトをいちばん担っている曲だと思います。10年間を走ってきたRe:nameのことを書こうと決めていました。先に僕が1番とサビの歌詞を入れたデモをヤマケンに送ったんです。ヤマケンには〈1番で俺が16という数字を入れるから、2番で26という数字を入れて〉と伝えました。サビの〈So keep holding on tight, boys〉と言う部分はメンバーやチームのみんなに向けて、〈I’ll be with your bad days, girls〉という部分はRe:nameを聴いてくれる人たちをイメージしていて。僕らは3人組ですけど、絶対に3人だけではここまでやってこれなかった。だから、みんなを巻き込んだ曲にしたかったんです」(高木)。
アルバムで最初に出来たという“I don’t wanna”に、高木は〈小さな選択で未来は変わっていく〉というメッセージを刻んだという。それは『1626』全体に通底するものかもしれない。ラストを飾る“one room”は、ささやかな偶然や出会いによって新しいものに生まれ変わっていく、そんな私たちの日々を祝福する一曲だ。
「“one room”の歌詞は、ジブリ映画の『海がきこえる』に影響を受けています。大学生のときに1回観ていたんですけど、去年リヴァイヴァル上映に行ったら、以前は何も感じなかった場面でボロボロ泣いちゃって。〈些細なきっかけで新しいことは始まるし、その繰り返しで人生は続いていく。それって素晴らしいことなんだ〉と思ったんです。そしてそれは、バンドの10年とも重なる気がした。そんな気持ちで映画館を出たら、一成から映画の雰囲気に近い“one room”のデモが届いていて、勝手に運命を感じながら歌詞を書きました。この曲がアルバムの最後にあることには、すごく意味があるなと思います」(ヤマケン)。 *天野史彬
本文中に登場したアーティストの作品を一部紹介。
左から、ワン・ダイレクションの2011年作『Up All Night』(Syco/Columbia)、ILLITの2025年のシングル“NOT CUTE ANYMORE”(HYBE LABELS JAPAN)、The 1975の2020年作『Notes On A Conditional Form』(Dirty Hit/Polydor)