2026年4月21日、浜田省吾がソロデビュー50周年を迎えた。これに合わせて、彼のソロデビューアルバム『生まれたところを遠く離れて』の最新リミックス版がCDとアナログ盤でリリースされた(セカンドアルバム『LOVE TRAIN』の最新リミックス版もアナログ盤のみで同時発売)。当時20代の浜田の生々しい心情が刻まれた同作品を、田中久勝にレビューしてもらった。 *Mikiki編集部

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浜田省吾 『生まれたところを遠く離れて(2026 Remix Version)』 Clear Water(2026)

 

〈浜省〉の物語は孤独という名の自由から始まった

1976年、前年にドラマーとして在籍したバンドAIDOを離れ、浜田省吾という一人の表現者が選んだのは、あまりに不器用で、それでいて純度の高い〈個〉の独白だった。彼のソロデビュー作『生まれたところを遠く離れて』は、後の巨大なキャリアへと続く果てしない旅の、最初の一歩であり、原点だ。ここには、高度経済成長の喧騒が過ぎ去り、どこか虚無感が漂い始めた当時の日本で、居場所を見つけられずにいた青年の、震えるような魂が刻まれている。

当時の音楽シーンでは吉田拓郎や井上陽水が確固たる地位を築き、〈フォーク〉という言葉がすでに商業化の色を帯び始めていた。そして都会的なセンスと洗練されたアレンジで、後にシティポップと呼ばれる〈ニューミュージック〉が市民権を得ていく。レコード会社や制作陣が浜田省吾に求めたのは、おそらくその〈過渡期〉を象徴する新しいスターの姿だったはずだ。

AIDOではジャクソン・ブラウンを彷彿とさせるウエストコーストサウンドを鳴らしていた彼には、瑞々しいポップセンスが期待されていた。しかし、23歳の浜田省吾がその内側に抱えていたのは、そんな軽やかな流行とは対極にある、重く、淀んだ、けれど決してごまかすことのできない〈個〉の叫びだった。彼は、時代の潮流に身を任せるのではなく、自分の足元にある泥濘を凝視することを選んだ。

サウンドの骨格はフォークの匂いを残しながらも、その底流にはロックの衝動がマグマのように渦巻き、嘘を拒絶し、孤独を抱きしめる浜田の歌声は〈叫び〉だ。“路地裏の少年”に宿る、冷めた視線と熱い希求。それは、時代の傍観者から当事者へと足を踏み出そうとする男の、ヒリつくような覚悟の記録だ。僕たちが愛してやまない〈浜省〉の物語は、この孤独という名の自由から始まった。

デビュー曲にして、あまりに巨大な叙事詩の“路地裏の少年”。イントロの12弦ギターのストロークが印象的なこの曲は〈おれ16〉〈おれ18〉〈おれ21〉〈おれ22〉と具体的な時間軸の中で、一人の若者が挫折し、立ち上がり、そしてまた迷う姿を、これほどまでに残酷に、かつ美しく描いた歌が他にあっただろうか。徐々に熱を帯びていくサウンドは、まさに一人の少年の成長痛そのものだ。

“青春の絆”はAIDO時代の面影を残す、メロディアスな一曲。甘いメロディに隠された、剥き出しの喪失感を、浜田のしゃがれ声がさらに際立たせているようだ。浜田不在のAIDOでも発表された、都会的な憂いを含んだフォークロックという佇まいの楽曲で、浜田と盟友・町支寛二のファルセットの掛け合いが印象的だ。