昨年8月に配信リリースされ、少なからぬリスナーの話題に上った宅録シンガー・ソングライターの初アルバムがCD化。聴き手はまず何よりも、他では耳にしたことのない独自の音像に驚かされることだろう。終始ノイズが鳴り渡り、歪んだ演奏・サウンドが過剰に詰め込まれている。その偏執的なアンサンブルがアクロバティックな展開を遂げていく一方で、求心力を持ったメロディーとしなやかな歌唱が普遍的なポップスへと楽曲を着地させる。カオスを志向する音楽の多くが持つ、崩壊寸前の危うさと繊細な美しさよりも、ポップメイカーとしての骨太な力量を(この音で!)強く窺わせる点にポテンシャルを感じる作品だ。