聴く人を元気にしたい
ドラマ「パリピ孔明」で出会った石崎ひゅーいとの共作曲“美貌録”、崎山蒼志が作詞した“ブラウンシュガー”にも、彼の音楽との向き合い方が現れている。
「“ブラウンシュガー”は、朝の散歩中に思ったことを崎山くんに送り、ストーリーを組んでもらいました。崎山くんの世界観に僕の等身大を落とし込んだ曲です。加えて、Aqua Timezの長谷川大介さんと一緒に作曲させてもらったんですが、すごく緊張しましたね。僕が言ったコードを大介さんが弾いてくれて、そうやってメロディーを作る作業は、贅沢で極上の時間でした。“美貌録”は、ひゅーいくんがピアノ、僕はギターを持ってスタジオに入り、コード進行を作りながらメロディーを考えていきました。アルバムの1曲目をその“美貌録”にしたのは、後半に向かって壮大になっていく曲なので、一気に引き込んでくれそうだと思ったからです。いい意味で期待を裏切られるだろうし、この世界観に浸ってほしいという意図もあります。“美貌録”から“Flower chord”に繋がる感じも心地よくて、その流れを採用しました」。
“美貌録”から、軽やかなポップ・チューンの“Flower chord”、パワフルなダンス・ナンバー“SUPER!!”と続く序盤は、リスナーを一気に『Illusion』の世界へと連れ出す。ほかにも、身近な人のエピソードをもとにした楽曲や、ライヴを想定したものもあるそうだ。
「“We both think alike”は、年末年始に家族で集まったときに、両親の出会いやデートの話を聞いて制作した曲なので、自然の中で愛を育んでいた2人の初々しさも入れつつ、未来を想像してサビを作ったから、どこか大人びた恋愛ソングになっています。 “Voice”は、(自分の故郷である石巻を襲った)東日本大震災のことを考えて書いた曲です。震災から15年経ったいまも復興活動をがんばっている方がいるんですが、そうした場所に若い世代の方々が少なく、困っている方も少なくなくて。震災を知らない人も年々増えていますが、この曲があの出来事を知るきっかけになってほしいですし、(自分の楽曲や活動を通じて)現地の方々を元気にしていきたいです。“Voice”や“Feel a LIVE”は、ライヴでみなさんと一緒に歌って完成する曲なので、ツアーでは同じ空間の中で顔を見ながら歌ったり、聴いたりしてほしいですし、素敵な景色を見られたら嬉しいです」。
多くの作詞に携わるも、「作詞って、22歳での経験の数だと題材が尽きちゃうんです」と話す姿も印象的だった。それでも、言葉や音楽と向き合うなかで彼が届けたいものは明確だ。
「以前、制限をかけずに僕の記憶や感情を書いたこともあるんですが、後から聴いたときにしんどくなってしまったことがあるんです。ただ、感情が動いたときのリアルな描写を削ると、どうして僕がそう感じたのかもわからないですし、そのあたりをどう出していくのかが難しくて。僕は、ももいろクローバーZさんに元気をもらってこの職業を選んだので、〈音楽活動を通じて聴いてくださる方を元気にしたい〉という思いが強くあります。現時点では、その気持ちをベースに、自分が届けたい曲や思いを大切にしたいです。多くの人と関わることが自分の財産になるので、周りの方々からの意見を大切にしていきたいですし、さまざまな要素を取り入れながら、自分の世界観に巻き込んでいきたい。そうすることで、新たなジャンルが生まれるのかなと思っています」。 *長澤香奈
『Illusion』に参加したアーティストの作品。
左から、LASTorderの2016年作『Cherish』(PROGRESSIVE FOrM)、石崎ひゅーいのニュー・アルバム『Tokyo City Lights』(エピック)、崎山蒼志の2023年作『i 触れる SAD UFO』(ソニー)、Aqua Timezの2025年作『海いっぱいに降りしきる星』(エピック)