私がやってるのはフォークパンクです
――とはいえサウンド的にはフォークの要素もありますよね?
「それは、パンクとの出会いがあったんですよ」
――パンク!
「別にわざわざジャンルを決める必要はないんだけど、アルバム出す時って絶対にジャンルを書かないといけないじゃないですか。それでいつも悩んで、自分って何のジャンルなんだろうって。無理やりフォークにおさめとく、みたいな感じだったんだけど、ある時、この精神性って完全にパンクだよなって思ったらかなり腑に落ちて。
今回のアルバムの帯文を書いてくださった町田康さんもそうだけど、直接的に〈うるせえ、殺す〉とか言ってるわけじゃないのにすごく静かに怒ってるじゃないですか。非常に殺伐としつつ、それが歌になった瞬間、愛情を感じるかのような怒りになる。血が通ってるというかね。それがとても腑に落ちて、自分もこれをやっとるんだという確信をした時に、めちゃくちゃ一気に楽になった。自分はもうフォークじゃなくて、フォークパンクですって言うようにした」
――パンクのマインドで音はフォーク。それはつまり、三上寛とか早川義夫とか友川カズキとか。
「あぁ、早川さんとかはそう感じますね。でも、どちらかというと洋楽のほうがイメージは近いかな。ニール・ヤングとかエリオット・スミスとか」
――パンクバンドをやろうとはならずに、やっぱりフォーク的なことを音楽的にやり続ける理由は何なんですか?
「このスタイルがシンプルに好きで、ギター持って一人でやるっていうのが自分的に完全だから。バンド(ヨ幽区)もやってるけど、そっちはまだあまり実感をつかめてないっていうのが正直なところ。やっぱり一人が無敵」
――近いライブシーンやSSWシーンで、共感するミュージシャンは?
「かっこいいのは、三輪二郎さんかな。きっぷが良くて、最高ですね。歌ってる時と飲んでる時とあんまり変わんない。それってすごいと思う。やっぱり皆、意識的に〈見せたい自分〉をやるじゃないですか、ライブとかで。別にかっこつけるのもいいんだけど、三輪さんに関してはそれが全くないんですよ」
フェードイン/フェードアウトも人力で表現
――今回のアルバムを聴いていて、まず歌唱法にびっくりしたんですね。色んなスタイルのボーカル表現をしていますけど、“結婚しよう”とかはどこから声が出てるんだろうって。
「家で作った曲はそういう歌い方になってます。逆に、パーンと大きい声を出す曲に関しては、完全に路上の影響。家で作ってるか、道で作ってるかの違い」
――歌詞とメロディは同時に作っている?
「同時が多いかな。でも、あんま喋ってるのと変わんないです。喋ってるのに音程つけりゃいいじゃないですか。一緒ですね」
――トラックの作り方は?
「基本的には同じなんだけど、家の方がちゃんとしてるっちゅうか、ずっと宅録みたいな感じで作るんでね。家だと、音を重ねていって、同じコードをギターだけ先に入れて、ずっとループして回って、そこに思いついたことをどんどん入れて。“結婚しよう”とかはそういう作り方。ずっと4コードを永遠にループして最後まで作りきる。ライブでは、ギターのコードを変えていく。
あと、私は宅録を再現するっていうのが好きで。例えばフェードインとかフェードアウトって宅録でできるじゃないですか。私は、あれを人力でやるんですよ。今回のアルバム、7曲目の“アマニタパンセリナ”はフェードアウトしてるんですけど、フェーダーを下げてるんじゃなくて、私が自分で下がってる」
――すごい(笑)。
「これはマジで聴いてほしいです。ライブでもびっくりされますね。あまりにもナチュラルに小さくなっていくから。あと、人力フェードインもある」