J-Popのなかには〈応援歌〉というカテゴリーがある。万人に届くキャッチーな音楽性、強いメッセージを伝える人間力、ブレない覚悟と圧倒的パフォーマンス力が必要な、ある意味難度の高いスタイル。〈西日本でもっとも身体が大きいシンガーソングライター〉を名乗るBigfumi(ビッグフミ)は、その大きなハートとパワフルな歌声を活かし、次世代応援歌マスターの座をまっすぐにめざす熱い男だ。

 「僕は天才とか器用とかいう部類には全然当てはまらなくて、父親が歌っていたフォークや流行りのJ-Popを聴いてきただけで、でもそれがいちばんシンプルで伝わると思ったし、〈何を言うかじゃなくて誰が言うか〉だと思ったんですね。〈がんばれ〉という言葉はありきたりだから好きじゃないという人もいると思うんですけど、〈僕が言う『がんばれ』だったらがんばれるんじゃないか〉と信じてるんで、あえてど真ん中を突っ走りたいなと思ってますね」。

Bigfumi 『Roots』 Village Again(2026)

 ニュー・アルバム『Roots』は、シーンの先輩にあたるベリーグッドマンのHiDEXをプロデュースに迎え、〈温故知新〉をテーマに据えた自信作。彼の代名詞と言える〈プロ野球選手の登場曲〉も、阪神タイガース・梅野隆太郎のために作った“Life”をリメイクした“Life↑”をはじめ、北海道日本ハムファイターズ・山崎福也の“サチあれ!”、東北楽天ゴールデンイーグルス・村林一輝の“手を上げて”とたっぷり3曲。独立リーグの姫路イーグレッターズ球団歌“We Rise Up!”も含め、スポーツやライヴの現場を盛り上げるような楽曲がずらりと並ぶ。

 「“Life”は僕が昔レスリングに挫折した時に作った曲で、〈明日はやってくる〉というフレーズだけを切り取ると、前向きな気持ちも諦めの気持ちもどっちもあるんですけど、どうせ明日を迎えるなら前向きでいたいという思いを込めて歌詞を書きました。“サチあれ!”は、病気を克服してプロになった山崎選手のために、命の大事さを思って作った曲です。僕は小さい頃からラグビー、柔道、水泳とかいろんなスポーツをやらせてもらって、高校生の時にレスリングで日本3位になったんですけど、僕の曲が野球界に広まってくれているのは、アスリート・マインドとミュージシャン・マインドが重なって、僕のルーツが表現できてるおかげなのかな?と思ったりしますね」。

 それだけじゃない。アルバム用の新曲“ダンデリオン”はこれまでなかったタイプのメロウなR&B、“キズナ”はみずからの死生観を吐露した迫力あるバラード。随所に新たな挑戦を盛り込みつつ、あくまでポジティヴなメッセージを貫くのが『Roots』の魅力だ。

 「〈Bigfumiの歌を聴いて、がんばれました〉というメッセージをたくさんいただくんですけど、それはあなたががんばりたいと思っているところに僕の曲が入ってきただけで、〈実際はあなた自身が決めたことだよ〉と歌っているのが“ダンデリオン”です。“キズナ”は心についた傷と、その人との絆という意味を込めてタイトルを付けました。僕はいま33歳で、人の生き死にを感じることが増えてきたんですけど、〈会えなくなったけどいつか会えるかもしれないと信じて生きていこう〉という、すごく前を向いた曲になっています。恋愛の歌にも取れますし、いろんな解釈で聴いてもらえると嬉しいです」。

 宮崎生まれ、福岡育ち、大阪在住。レスリングで栄光と挫折を味わい、幼い頃からの夢だったシンガーを志して10年を超える苦労人が歌う応援歌は、一味違う。心で聴く、心に効く歌がここにある。

 「歌うことがいちばん好きなので、歌い続ける人生はもうあたりまえに決まっているんですけど、それは〈ミュージシャンになりたい〉と思った幼い頃の自分との約束でもあるんですね。故郷の宮崎や、大阪でホールコンサートができるようになったのも、その約束が実現しつつあるということだと思うし、自分の中ではすごく幸福感がありますね。これからも、1曲のワンフレーズでもいいので、〈Bigfumiに出会って良かった〉と思ってもらえる歌を歌っていこうと思います」。

 


Bigfumi
宮崎市出身、93年生まれのシンガー・ソングライター。バンドマンの父に影響されて幼い頃から音楽に親しみ、レスリングで活躍した高校時代を経て音楽活動を始める。路上ライヴが評判となって知名度を上げ、2016年に初の音源集『音届者』を自主リリース。“Life”がプロ野球選手の登場曲に使用されるなどして徐々に話題を拡大していく。2023年にフル・アルバム『Bigfumi 1』を発表。“サチあれ!”などを経て、このたびニュー・アルバム『Roots』(Village Again)をリリースしたばかり。