インディー・ロックの祭典として愛される〈Hostess Club Weekender(以下HCW)〉の第11回が、11月22日(日)、23日(月・祝)に東京・新木場スタジオコーストで開催されるにあたり、Mikikiではこの〈HCW〉を総力特集。出演アクトを紹介した第1回、メルヴィンズを大フィーチャーした第2、3回に続いて、この第4回ではイヴェントの運営を担うHOSTESSのレーベル・スタッフに、今回の〈HCW〉について語ってもらった。

今回の座談会にご協力いただいたのは、イヴェントの企画/プロモーションを担当する近藤彩乃さん、セールス部門を務め、〈HCW〉ではショップの陣頭に立つ小澤博文さん、制作を担当しアーティストや海外レーベルとの交渉役を務める北林慶大さんの3名。2012年の第1回から〈HCW〉に足繁く通っている音楽ライターの黒田隆憲氏を聞き手役に迎えて、オーディエンス視点のシビアな質問も交えながら、転換期を迎える〈HCW〉の展望と今回の見どころ、DIYな取り組みと共に発展してきたイヴェントへの思い入れを語ってもらった。 *Mikiki編集部

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試行錯誤と工夫を重ねながら、居心地の良さと〈HOSTESSらしさ〉を追求

――今回の〈HCW〉は、開催発表までのカウントダウンや、非常に思わせぶりなティーザー映像も話題になりました。映像には〈THE END?〉なんてテロップも登場していましたが、あれはどんな意味だったのでしょう?

2015年11月開催〈HCW〉のティーザー映像

 

近藤彩乃「これまで〈HCW〉は2月、6月、11月と年3回コンスタントに開催してきたのですが、今年は8月に(〈サマソニ〉の深夜イヴェントとして)〈HOSTESS CLUB ALL-NIGHTER〉を開催して以来、次の回について特にアナウンスもしていなかったんですね。お客さんからは、〈HCW、どうなったんだろう?〉っていう声も結構あったと思うんです。だから今回、それを逆手に取って……というわけでもないですが(笑)、〈終わり……に見せかけて、また始まるよ!〉っていう演出にしてみたんです。11回目の〈HCW〉ということで、仕切り直しのタイミングでもあるのかなと思っていましたし。本当に終わりにするつもりは、最初からありませんでした」

――それを聞いて安心しました。ちなみに予告で何度か登場した、あの焦った表情のキャラクターは何者なんですか?

近藤「すっごい皆さんから反響をいただきましたよね(笑)。特に名前も決めていなかったんですけど……」

北林慶大「〈HCW〉が終わりと思われてしまって焦ってたんじゃないですか? 〈ヤバイヤバイ〉って(笑)」

今回の〈HCW〉開催発表までのカウントダウンで登場した〈焦ってるキャラクター〉。名前はない

 

――なるほど(笑)。今回のラインナップはどのように決まっていきましたか?

近藤「もともと〈HCW〉は、新作リリースのタイミングに合わせて開催するというのが(コンセプトの)根本にあるんですね。それで来年の1月には、ブロック・パーティーミステリー・ジェッツドーターなど素晴らしい新作をリリースするアーティストがたくさんいるので、この機会を逃すわけにはいかないなということで開催が決定しました」

――社長のプラグさんは、メルヴィンズを招聘するのが悲願だったと聞きました。

近藤「相当好きみたいです。私にも〈聴いた〜?〉って言ってきたりだとか、車で一緒に移動するときにも大音量でかけてたりだとか(笑)。本当は、〈HOSTESS CLUB ALL-NIGHTER〉でメルヴィンズを呼びたかったようですが、共同開催したクリエイティブマンの清水さんから〈待った〉がかかってしまって。だから今回、メルヴィンズに関しては〈自分が呼びたかったから呼んだ〉っていう気持ちが強いのだと思います(笑)」

――その〈HOSTESS CLUB ALL-NIGHTER〉に引き続き、今回の〈HCW〉もクリエイティブマンとの共催になりました。

近藤「クリエイティブマンはプロモーターとしてプロフェッショナルですので、〈HOSTESS CLUB ALL-NIGHTER〉をご一緒させていただくことで、様々なことがとても上手く動きました。〈サマソニ〉などでの実績もあるので、アーティスト側も(共催ということで)より安心してくれてスムースに話が進みましたね。それに、クリエイティブマンのスタッフさんのなかには、HOSTESSのアーティストを好きでいらっしゃる方が多い。それもあって、ぜひ今回もやってみようと」

――これまで1日5組だったタイムテーブルを、1日4組にした意図は?

近藤「1日5組だったときは、とにかくライヴとライヴの間がタイトだったんです。〈HCW〉はライヴだけでなく、サイン会やフードエリアも含め、1日中楽しんでもらいたいっていう意図があるのですが、ライヴとライヴの間がタイトだと、やりきれてないっていうか。お客さんにとってもタイトなスケジュールになっていたんじゃないかと思うんですね。それと、地方から来てくださっている方からは、〈(ヘッドライナーまで観ると)終電に間に合わなくなる〉という意見も多くいただいてました。そうした問題を解消するために、今回ラインナップを減らして時間も少し前倒しにしています。おかげで、1組ずつのライヴの時間が今回、すべてちょっとずつ長くなっていて。ヘッドライナーには1時間半まるまるやってもらうことになりました」

タイムテーブル(拡大画像は公式サイトに)。出演時間はトップバッターから順に45分、60分、70分、そしてヘッドライナーは90分と、単独公演に匹敵する時間が用意されている

 

近藤「それに少し裏の事情も説明すると、5組のときの転換時間だとなにか1つでも問題が起こった場合に対処しきれない大きなリスクも背負っていました。これまでは幸いにも大きな問題は起きていませんでしたが、今後は危ない橋を渡らなくても済むようになります」

――これまで〈HCW〉は、恵比寿ザ・ガーデンホールやお台場のZepp DiverCityでも開催していますね。最近は新木場スタジオコーストに落ち着いてきていますが、個人的にはガーデンホールのクローズな空間もとても気に入っていたのですが(笑)。

小澤博文「〈ガーデンホールが良かった〉っておっしゃるお客様は、結構いらっしゃいますね(笑)。でもガーデンホールはいわば体育館のような空間なので、すべてわれわれの持ち込み機材でやっていましたし、お金も労力もかかってしまう。そういう設備的な部分や、音響面もスタジオコーストはバッチリなんです。設備的な部分でもコーストのほうがやりやすい。物販を展開するスペースもとても広いし、より力を注げるというのもある。それは、フードコートのエリアも同じですよね。動線も綺麗に作れるので、事故も起きにくいんです。アットホームな雰囲気は、確かにガーデンホールのほうがあったかもしれないですけどね」

近藤「アットホームという点では、ミラーボールを回してみたり、花のライトを付けてみたり、実は装飾も凝っているので、そのあたりも楽しんでいただけたらと。そういう、ちょっとした非日常空間を作るようには工夫しています」

――毎回サイン会や物販も非常に楽しみなのですが、今回の目玉は?

小澤「サイン会の対象となるのは、いつも出演アーティストの新作だったりするんですけど、今回はブロック・パーティー、ミステリー・ジェッツ、ドーターは年明けにリリースなので、先行予約していただいた方にも参加資格を差し上げるとか、そういった変則的な方法もプラン中です。あと、前回くらいから物販のヴォリュームも増やしてきたのですが、今回はさらにアナログ盤を充実させようかと思っていて。最初のうちはそれほど(売れ行きの)動きがなかったのですが、回を重ねるごとに需要が増えてきているし、お問い合わせも多くなってきているんですよね。できる限り、全出演バンドのアナログ盤が揃うようがんばって手配します」

〈HCW〉ショップの写真(Photo by Kazumichi Kokei)

 

近藤「ちなみにサイン会は、今回も全アーティストが参加予定です」

――ということは、メルヴィンズもサイン会場に!? それはかなりレアかつシュールな図ですね(笑)!

2015年2月の〈HCW〉で、セイント・ヴィンセントがサイン会を行っている光景。サインの敷居が高そうなアーティストも、信頼関係の築けている〈HCW〉ではフレンドリーで協力的(Photo by Kazumichi Kokei)

 

――フードコートはどんな感じでしょう? いつも美味しそうなメニューが揃っていますよね。 

近藤「今回もこれまでと同様、〈カンヌ国際映画祭〉のバックステージや、洋楽アーティストの来日公演のケータリングなどもされている方に監修していただきました。弊社の社員で試食会も開いて、クォリティーにもこだわっています。フードコートには、ざっくりとした裏テーマに〈世界各地の料理が食べられる〉っていうのがあって。以前から好評だったタイカレーのほかに、インドネシア料理だとか、ロシア料理だとかも今回出店してもらうので楽しみにしていてほしいです。ベルギー・ビールもまた入れる予定ですよ」