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封印された〈World〉から始まる新たなストーリー

 スウェディッシュ・ジャズの新たな旗手サラ・アルデン(ヴォーカル)が、デビュー作にして、スウェーデンのグラミー賞に当たるGrammisの〈ジャズ・オブ・ザ・イヤー〉を受賞した、2024年の『There Is No Future』の続編『Force Of Nature』を、リリースした。満を持して、全曲レギュラー・トリオのオリジナルで構成されたニュー・アルバムである。

SARA ALDÉN 『Force Of Nature』 Prophone(2026)

 前作『There Is No Future』は、混迷する世界情勢と、気候変動など未来への危惧をテーマとし、エンディングの“What A Wonderful World”では、あえて〈World〉というワードを歌わず封印した。そして『Force Of Nature』の冒頭で、その封印された〈World〉が同じ音程で現れ、キーや空気感に連続性を感じさせるオリジナル“World”で幕を開け、ポジティヴな新たなストーリーを語り始める。前作と同様、レギュラー・トリオのダニエル・アンデション・ルネヴァッド(ベース)と、アウグスト・ビョーン(ピアノ/ペダル・オルガン)がサウンドの中核を担い、オリジナル曲を共作している。ゲストとして、スウェーデンを代表するトロンボーン・プレイヤー、ニルス・ラングレン、ハネス・ベニック(サックス)、ミシェル・ウィリス(ヴォーカル)が1曲ずつ参加、ヴィオラ奏者のアルマ・ムラーは4曲に参加して、アルデンのヴォーカルに寄り添う。

 短いインスト曲を除き、全曲アルデンが英語で、自然、生命、希望、愛を語る作詞を手掛けている。シンプルでストレートな詩と、透明感と力強さを兼ね備えたアルデンのヴォイスが、リスナーの心を揺さぶる。ジャズと北欧のフォーク・ミュージックが絶妙にブレンドされたサウンドが、現代ジャズのマルチ・リンガル性を体現している。

 アルデンは、同じトリオで2022年にリリースしたスタンダード・ナンバーを中心とするEP『A Room Of One’s Own』は、「自分の表現の居場所、スペースを見つける作品」と語る。そして前作と本作を加え、三部作を形成している。1人のジャズ・アーティストが、自我を確立し、大きく羽ばたいた瞬間を捉えた作品たちである。