ミュージカル「ジャージー・ボーイズ」でフランキー・ヴァリ役を務め、一躍脚光を浴びたライアン・モロイ。彼が日本版アルバム第2弾『不透明な時代のラヴストーリー』(原題『The Best Year Of Our Lives』)を2026年6月10日(水)にリリースする。コロナ禍での経験やシンプリー・レッドとの仕事で知られるアンディ・ライトとの長きにわたる友情から生まれた新作、そして7月の来日ツアーについてライアンへメールインタビューを行った。 *Mikiki編集部

RYAN MOLLOY 『不透明な時代のラヴストーリー』 RM MUSIC/RUSH!/OCTAVE-LAB(2026)

 

ニール・ダイヤモンドの曲が蘇らせた創作意欲

──前作『Turn On The Night』から約10年ぶりの新作となりますが、『不透明な時代のラヴストーリー』をリリースしようと思ったきっかけはなんだったのですか?

「アルバムの制作にとりかかったのはコロナ禍でロックダウンしていた頃だったんだけど、当時は家を出てスタジオへ行くことさえも難しかったのを覚えてる。そのときはInstagramで自宅からライブ配信をしたりしていたね。ライブ配信は〈Broken Fingered Guitar Club〉(指を怪我したギター弾きクラブ)というタイトルで、姉がくれたチャールズ・ブコウスキーの詩集から名づけたんだ。

配信ではニール・ダイヤモンドの曲を歌ったりして自分自身を元気づけていたんだけど、そこで“And The Singer Sings His Song”に出会ったことがきっかけでアルバムを作ろうと思ったんだ。この曲を歌ったとき、かつてアンディ・ライトとシュガー・ハイというプロジェクトをやっていた頃の気持ちが蘇ったんだよね。そんな思い入れのある曲だから、この曲のカバーを今回のアルバムのボーナストラックとして入れているんだ。

アンディは僕が音楽を作る上でのクリエイティブパートナーで、30年以上付き合いのある友人でもある。だからこのアルバムには、彼とこれまで大切に育んできたクリエイションへの思いが詰まっているんだよ」

──このアルバムのプロデューサー、アンディ・ライトとは長年の付き合いなのですね。

「これまでアンディと僕は、音楽を通して人生のいろんな局面を探求してきた。彼とは『Sugar High』、『Jetson Molloy & The Intergalactic Kittens』と2枚のアルバムを一緒に作ったことがあるんだけど、この業界で30年もの間、クリエイティブなパートナーシップを組めること自体が実はすごいことなんだよね。

アンディと初めて一緒に曲をレコーディングしたのは1990年代はじめに僕がBMGに在籍していたときで、“Lead Me Home”という曲を作ったんだ。それ以来、パートナーとして革新的な曲作りを一緒に目指してきた。今回、日本のみなさんに僕たちの最新のコラボレーションを紹介できるのが楽しみだよ」

※『Jetson Molloy & The Intergalactic Kittens』は完成しているが未リリース

心に刻まれた偽りのない事実を歌にする

──このアルバムは、あなたの人生を物語っているように感じました。歌詞はどのような内容なのでしょうか?

「僕は生きている中で、心に刻まれた偽りのない事実をいつも書き留めているんだ。だから僕の歌は自分の人生を題材にしている。例えば“Everything Breaks”という曲は、ロンドンで30年ほど生活をしてきた僕自身のことを歌っているんだけど、これまでに多くの人々が僕の人生に入り込んで、そして去っていった。その中で、彼らの存在が自分にどんな影響を与えたか、そんなことを歌にしたんだ。〈Break〉(壊れた)とタイトルにあるけど、決して悲しい曲ではなく、素直でパワフルな曲なんだ。だってここまで生きることができたという事実が、すでに人生において成功したという意味を持つわけだからね」

──その他の曲では、あなたのどんな経験が歌われているのか知りたいです。

「“The Best Year Of Our Lives”は、将来を気にするわけでも、過去を引きずるわけでもなく、この瞬間を一生懸命生きていこうという曲。〈今〉を大切に、楽しんで生きることが肝心なんだとコロナ禍で強く感じて作った曲なんだ。

“White Lies”は、たぶん僕が今まで書いた詞の中で一番痛ましい真実を描いていて、愛する人を辛い真実から守るために嘘をつかないといけないという内容の曲だよ。嘘こそが自分ができる究極の犠牲で、堪えられない現実に立ち向かいながら、愛する人の幸せを願うため相手に真実を隠す、その葛藤を曲にしたんだ。

“One Kind Of You”は僕の出身地、イギリス北東部に位置するニューカッスルを舞台にした曲で、そこから旅立った19歳の頃の自分の姿を少し幻想的に脚色して描いている。〈Fantastical〉(幻想的)という言葉は、僕が気に入っている言葉なんだ。

“Attempt A Rescue”は、このアルバムの中でも気に入っている曲だね。なぜなら、僕自身の飾らないウブな一面がそのまま出ているから。これは僕が困難に直面しているときに、誰かに抱き締めてもらいたい、慰められたいという気持ちが反映されている。

そして“Storm”は、僕がもし別の人生を送っているとしたら、こんなふうに生きているかもしれないということを歌った曲。曲中の登場人物は、望んでいなくてもすべてを手に入れることができて、どんなときも最高に楽しんで生きている、そんな僕やみんなが憧れるような人生を送っているんだ」