北海道・釧路をルーツに持つパンク・ロック・バンドのジュウは、髙浪凌、伊藤和人(今回の取材は欠席)、岩浅圭哲が各々のタイミングでの上京後、地元の先輩を介して出会い、2018年にタカナミ名義で始動。ただ、バンドを組むために集まったわけではないのだそう。

 「最初に会ったのは単なる飲み会でした。和人は明るくて喋りやすい、圭哲は無口な感じでちょっと怖い――それが最初の印象ですね。当時の僕は趣味でライヴをやる程度だったけど、携帯で録った音源が〈RO JACK〉の審査を通過しちゃったのが大きいかな。で、楽器が弾ける2人に手伝ってもらうようになったというか。強い志はなくヌメッと始まったんです。結果的に優勝して〈ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2019〉に出演したものの、それは若者が何もわからず飛び込んですぐに消えるみたいな苦い経験……喧嘩もいっぱいしたなぁ」(髙浪)。

 「なみちゃん(髙浪)はチャラい奴だなと思ったよ。500ml缶の酒を片手に遅刻してきたしジュウ笑)。だけど、音源を聴かせてもらったときに衝撃が走ったのは覚えてます。すごく独創的な歌詞とメロディーでカッコよかった」(岩浅)。

 2021年に〈銃ではなく音楽を撃って自由を勝ち取る〉という意味を込めてジュウに改名。それまでよりも地に足の着いた活動を続け、本当の意味でバンドになっていく。

 「自分たちでライヴハウスに連絡するとか、全部をやり直しました。音楽性については、僕がヒップホップ好きなので、ループを前提に作っていたんですけど、バンドでやったら演奏が下手すぎた(笑)。結果的にパンクになっていただけですね。言葉の強さやリアルを追求する姿勢は、ヒップホップ由来かな」(髙浪)。

 「年月を経てメンバーの関係性も良くなったし、いまターニング・ポイントにいる気がします」(岩浅)。

ジュウ 『不自由で、自由』 KOGA(2026)

 そんな特別な時期にいる彼らが、初のフル・アルバム『不自由で、自由』をリリースする。

 「レーベルのKOGAに感謝しつつ、わがままにやらせてもらいました。憧れのアーティストはいないですが、対バンとかで影響を受けることはあるので、“A to Z”“◯す”のようなハードコアに挑戦してみたり、THIS IS JAPANの杉森ジャックさんにギターやディレクションを頼んだり、トライが多いと思います。自由なアプローチの反面、〈死にたくて生きたくて〉と相反する気持ちを示した“矛盾の唄”など縛られた状態を描いた歌も入ってる。表裏一体ですよね。だけど、〈前向きでいたい〉という想いから、先に〈不自由〉を置きつつもポジティヴなアルバム・タイトルがいいなって」(髙浪)。

 「ヴィジュアル系のサウンドを意識した“鳴らす未来 feat 釧路組”やポップなミディアム曲“luv”など、ジュウの幅広さが詰まってます。レコーディング前日に弾き語りのデモが届いて急遽完成させた“超絶不健康無鉄砲”も思い出深いですね」(岩浅)。

 ほかにも、初期からのアンセムで青春の刹那と渇望が薫る“金夜の社会”に“平成、この夜に”、〈嘘みたいなモンを守ってるJAPAN〉と歌い出す“LiFE”、反逆の生き様を刻んだ“特攻夜”を含め、付きまとう困難や日々のフラストレーションを昇華させたキャッチーでパワフルな全22曲が並ぶ今作。言いたいことが言いにくい、争いも不穏な空気も隣り合わせである現代において、ジュウの音楽は希望になりえるはずだ。

 「“超絶不健康無鉄砲”に出てくる通り、僕には前科がある。でも、ベビーシッターや介護の資格を取って働いた経歴もあるし、加えて和人と圭哲は教員免許を持っていて、わりと世の中をちゃんと見てきた3人なんですよ。そのうえで断定的なメッセージは歌わない。尖ってるけど押しつけないバンドって、いま必要だと思ってます。自由が不自由に変わりそうなとき、ジュウの曲が物事を考えるきっかけになれば嬉しい。同調ばかりじゃなく、自分の感情に向き合うことが大切な時代ですから」(髙浪)。

 


ジュウ
髙浪凌(ボーカル/ギター)、伊藤和人(ギター)、岩浅圭哲(ベース)から成る3人組バンド。2018年に〈タカナミ〉として結成され、翌年に〈ROCK IN JAPAN FESTIVAL〉に出演するなど話題となるなか、2021年に現名義へと変更した。SUPER BEAVERやヤングスキニーらと共演を重ねつつ、2022年の『CHAKA』、2023年の『ハードロマンチッカー』、2024年の『-120』とEPを発表。“矛盾の唄”などを経て、5月27日にファースト・アルバム『不自由で、自由』(KOGA)をリリースする。