女子大生やシティーボーイに選ばれたシャカタク
前置きがずいぶん長くなったが、ここからが本稿の主役。今まさにこれがファッショナブル、トレンディーということで、当時のFMやファッション誌でこぞって紹介されたグループのひとつ、シャカタクだ。1980年にロンドンで結成されたシャカタクは、プロデュース兼シンセ担当のナイジェル・ライト、作曲でコンビを組むピアノのビル・シャープとドラムスのロジャー・オデルらを主軸とした5人組(当時)のジャズファンクバンド。
1981年のファーストアルバム『Drivin’ Hard』が、本国でまずまずのヒット。同年にベガーズ・バンケットからリリースされた英国産ジャズファンクのコンピ『Slipstream』(シャカタクのほかにレベル42やインコグニートも収録)が日本にも輸入され、ここに収められた楽曲が敏感なリスナーやメディア人に引っかかった。そして翌1982年、2人の女性ボーカルを新たに迎えて制作されたセカンドアルバム『Night Birds』が全英4位のヒット(シングルカットされた表題曲も全英トップ10入り)。日本にもその波がわっと押し寄せる。


とはいっても、〈イギリスで大ヒット中!〉といった看板を引っ提げて売り出されたというより、あくまでも耳心地のよい音楽として、ファッショナブルな音楽として、音楽誌というよりFMやファッション誌で推されたという感じ。同じ頃、デュラン・デュランやカルチャー・クラブといったイギリスからの新しい波がいっしょに押し寄せてきたが、こと享楽的に音楽を楽しむ、それこそ女子大生であったり遊び好きのシティーボーイ(気取りも含む)は俄然、クリスタルなほうに乗っかった。そう、『Night Birds』の日本盤LPの帯にはこうある──〈クリスタルな夜間飛行を貴方に!〉。さらにライナーノーツには……。
恋人と一緒に海岸通りをドライブする時、はたまた超高層ビルのクリスタル・ラウンジで愛を語る時にはもって来いのエレガントBGM! ジョー・サンプルや、ボブ・ジェームスに匹敵する美しくも冷ややかなピアノ・タッチ。アール・クルーもマッ青の華なギターの調べに気分は正に夏飛行! お飾りの女性ヴォーカル、コーラス等も実にビューティフル。これほど雰囲気にしたフュージョン・バンドも珍しいくらい。
この時期、ファッショナブルな用途としてチョイスされる音楽は、それこそAORやフュージョンなどあれこれあったはずだが、それらの音楽とリンクしながらも、とりわけシャカタクが人気だったのは、その塩梅が絶妙だった、そう言うしかない。まずは演奏技術がしっかりとあり、ポップであり、リズミックで、上モノの楽器が繊細、決して歪んでいない、適度にボーカル、適度にインスト、そして適度に軽く、エレガント。〈シャカタク〉っていう言葉の響きそのものも、ぱっと聞きどこの国の言葉なのかわからないエキゾチシズムを感じる(とくに女子はこのエキゾチシズムに敏感)。結果的に前述のライナーノーツのように雰囲気で語る部分が多くなり、それがもっともこのバンドの魅力を伝えるのにふさわしい。
登場したのが5、6年違ってたら(好景気が傾きかけた時期だったら)ここまで日本の音楽マーケットにはアジャストしていなかったんじゃないだろうか。それゆえ、後には時代の徒花的な言われ方をされていたこともあったけれど(同時期のラー・バンドは再評価されたのにね)、まぁ、それだけ〈流行った〉ということの証し。もうね、ショッピングセンターの店内BGMでも流れてたから。
『Night Birds』のタイトルナンバー、その出だしのピアノの入りは、当時そこまで突っ込んで音楽を聴いていなかったクチでも、聴けば〈あ〜〉となるキラーフレーズだし、当時の風俗の様子がふわっと浮かんでくる。そういえば、当時聴いていた人たちの多くは、シャカタクのメンバーが誰と誰でっていうことにはほとんど関心なかったんじゃないかな。それぐらいライトなリスナーにもウケていたということだが。