タキシードの世界初ベスト『The Best Of Tuxedo』、スタッフのコンピレーション『NY Sweetness: Best WORKS』、ハワイ音楽集『Aloha! Days – Essential Hawaiian music』と、話題の企画盤を制作している〈TOWER RECORDS PREMIUM〉。〈すべての音楽好きに自信を持って勧めたいベストアルバム〉をコンセプトに、タワーレコードのスタッフが独自に企画・制作しているシリーズだ。
その第4弾は、シャカタクのベスト『NIGHT INVITATIONS: The Best Tunes & Remixes』。80年代に人気を博したシャカタクは、ドラマ「男女7人夏物語」「男女7人秋物語」に楽曲が使用されたこともあり、特にここ日本で多くのファンから愛されてきたジャズファンクバンドで、本作には彼らの定番曲や貴重な音源がCD 2枚に収められている。
今回は、そんなシャカタクの『NIGHT INVITATIONS: The Best Tunes & Remixes』を、音楽ライターの内本順一に解説してもらった。 *Mikiki編集部
バブルの時代を彩ったお洒落でトレンディーなサウンド
今年(2021年)はファーストアルバム『Drivin’ Hard』のリリースから40年。そして来年(2022年)はシャカタクが世界的にブレイクすることとなった大ヒット曲“Night Birds”の誕生から40年になるそうだ。
40年前、つまり1980年代初頭の日本はというと、人々が都会的で上昇的な暮らしを求めるようになった頃。デートにクルマは必需であり、デートカーとして最強と言われたトヨタ〈ソアラ〉の初代モデルが誕生したのは、“Night Birds”(82年)が大ヒットする前年だった。因みにファーストアルバム『Drivin’ Hard』の邦題は〈トワイライト・ドライヴィン〉。まさしく黄昏時のドライブにぴったりくる適度な疾走感と哀愁の入り混じったサウンドで、当時そのアルバムや“Night Birds”を収録した同タイトルのセカンドアルバム、それに“Night Birds”を踏襲してまたも大ヒットとなった“Invitations”を収録した同タイトルのサードアルバムを、助手席に意中の女性を乗せたクルマで聴いていたという人(現在50代半ば~60代前半くらいか)は少なくないはずだ。
またそこから2~3年もすると日本はバブルの時代となり、乱立したカフェバーでシャカタクの曲はもっともよくかかるBGMとなった。それがかかるだけで〈お洒落な雰囲気〉を醸し出せる、そういう音楽として機能し、流行したのだ。
さらにトレンディードラマの金字塔と言われる「男女7人夏物語」(86年、TBS系。最高視聴率は31%超え)とその続編「男女7人秋物語」(87年)でもシャカタクの曲はよく機能した。“Deja Vu (To The Wind)”を聴けば夏物語での良介(明石家さんま)と桃子(大竹しのぶ)の、“Golden Wings”を聴けば秋物語でのふたりの名シーンが浮かんでくるという人も多いだろう。
そのようにシャカタクの音楽は80年代の日本で広く受けた。彼らの人気は日本が突出して高く、来日公演の模様を収めたLP 2枚組『Live In Japan』(84年)、それに「男女7人」2作のサントラ盤など、日本限定のリリース作もよく売れた。