ロン=ティボー優勝者が弾くフォーレ&ショパン
2025年のロン=ティボー国際コンクール・ピアノ部門(パリ)で優勝した韓国出身のキム・セヒョンが初のアルバムをリリースする。パリに縁の深いフォーレとショパンを中心とする選曲だ。
「初のアルバムなので、何を中心に据えるか、迷いながら考えたのですが、パリで活躍した作曲家を中心に置こうと思い、ショパンの“エチュード Op. 25”とフォーレの初期の作品を組み合わせることにしました」
フォーレは“舟歌 第1番”“ヴァルス=カプリース 第1番”そして“即興曲 第2番”と初期の作品を選び、さらに自分自身の編曲による歌曲“夢のあとに”を加えた。
「フォーレの初期の作品にはショパンの影響が色濃く感じられますね。ショパン無くして、これらのフォーレの初期の作品は存在しなかっただろうと思えるくらい。そしてショパンはOp. 25の“エチュード”を選びましたが、Op. 10と比較すると、こちらの方はあまり技巧にこだわらず、より音楽的な意味や内容が深いと感じます。それでフォーレとこの曲の組み合わせを選びました」
もうひとつのアイディアは、最初と最後にフランスの歌曲を置くことだ。
「このアルバムは僕のパリへのオマージュと言えるものです。シャルル・トレネの“パリの4月”はワイセンベルクが編曲した版ですが、実はこの曲はエッフェル塔の前で行われた〈ル・コンセール・ド・パリ2025〉に招待された時に演奏したもので、その時の記憶も残っていました。そこで最初と最後に歌曲のピアノ編曲版を置いてみることにして、フォーレの作品は自分で編曲しました」
現在はニュー・イングランド音楽院とハーバード大学での共同学位プログラムで学びつつ、ダン・タイ・ソンなどに師事している。最近は音楽大学だけでなく、一般の大学との共同学位プログラムで学ぶ音楽家も多くなっている。
「ハーバード大学では英文学を学んでいますが、自分を成長させる上で様々な知識を得ることが大切ですね。それが音楽家としての成長にも繋がっていくはずです」
それはこのアルバムの選曲の知的な構成感からもすでに感じられると思う。また来年となるが、2027年2月にはチョン・ミョンフン指揮の東京フィルハーモニー交響楽団の定期演奏会でベートーヴェンの“ピアノ協奏曲第4番”を弾く。ベートーヴェン没後200年に若いピアニストが弾く協奏曲。それはまた新しい世界を感じさせてくれるものになるだろう。
