北のストリートを根城とするDJが、いま同郷の才能たちと共に〈壁〉を壊すまでのStoryを語りはじめる!

 「いまはジャンルに縛られていることが多すぎる。もちろんそれも大事だと思うんですけど、リスナーにとってジャンルは関係ない。それを今回は伝えたかった」。

JOLLY-TIP a.k.a DJ KEIZI 『JOLLY-TIP Story』
Roth Project./SPACE SHOWER(2015)

 これまで70枚を超えるミックスCDを手掛け、北海道を拠点に全国各地でプレイするDJ/トラックメイカーのDJ KEIZIが、ソロ・プロジェクト=JOLLY-TIPを始動! 待望のファースト・アルバム『JOLLY-TIP Story』をリリースした。ロックやヒップホップ、そしてEDMとさまざまな音楽を通過してきた彼にとって〈ジャンル〉はただの壁でしかなく、今作ではそれを取り外したかったと言う。だからこそ、自身の経験を物語るかのようにタイトルには〈Story〉と銘打たれ、なおかつロック・バンドのNOISEMAKER、そしてラッパーのYOUNG DAISと共に作り上げた“NO WALLS”には、その思いの限りを詰め込んでいる。

 「今回のテーマをいちばん表現できたのが“NO WALLS”。ダンス・ミュージックを提案する僕を含め、ジャンルの異なる3者で十分に話をし、それぞれの良さをインプットできた。それはまさに理想的な形だったし、自分にとっても大きなプラスになりましたね」。

 彼ら以外にも、本作には長年苦楽を共にしてきた同郷の――北海道は札幌のアーティストが多様なシーンから数多く参加。〈DJ KEIZIのファースト〉に華を添えつつ、上述でも触れたロック~ヒップホップ~EDM、レゲエなどが混在することを可能にしている。しかし、そんな雑多な音楽性のなかでただひとつ共通しているのは、日本語や、日本語ラップへのこだわり。そこからは、このアルバムで自分の思いをストレートに伝えるという強い意思と、彼のルーツであるヒップホップへの愛が窺える。

 「個人的にはサンプリングしているものが好きだったりするんですけど、リスナーが求めているものを提供するのがもっとも大事だと思ってます。それは、DJも同じことなので。例えばジェイZやカニエ(・ウェスト)も、新しいもの、新しいジャンルに飛び込むことでより大きくなっていった。やっぱり音楽に壁はないと思うし、僕はそれを実践していきたい。ただ、そのなかで自分のルーツであるヒップホップ、そのカルチャーは忘れないように、その意識、精神は持ち続けていきたい。それは今作でも十分に感じてもらえると思います」。

 生粋のDJ気質と、音楽をこよなく愛するメンタリティー。音楽的イデオロギーに屈することなく、北海道からまた新たな存在が日本、そして世界へ向けて放たれる。