〈誰も聴いたことがないのでやってほしい〉という依頼を快諾して演じられた珍しい「渋酒」と、歯切れの良い江戸弁が聴きどころのおなじみ「大工調べ」を収録した小金治さんの追悼アルバム。マクラで語られる師匠桂小文治との思い出深いエピソードには、古き良き時代の人々の多くがもっていたさわやかな心遣いが溢れています。そんな出会いがいまどのくらいあるのかなと、ほんの少し感傷的になったりして。春の昼下がり、温かくやわらかな春の陽気のような桂小金治さんの落語が心地よい。もっと早く小金治さんの落語に出会っていたらと思っても仕方のないことですが、せめてこのCDで出会えたことに感謝。