UK出身/東京在住のマット・ラインとクリス・グリーンバーグによるエレクトロニック・デュオ、グリーン・ラインズ(GREEEN LINEZ)のサード・アルバム『The Calm』が、マット主宰のレーベル=ディスコトピアよりリリース。その内容が素晴らしく……SoundCloudで全曲(の一部)が試聴できるので、できるだけ駆け足で紹介!
ちょうど1年前に発表された前作『Izu King Street』も絶品だった彼らだが、本作ではグリーン・ラインズのカラーであるアーリー90sなムードのプロダクションを基調としつつ、マットのソロ・プロジェクト=ア・タウト・ラインのアルバム『Mutual Prints』を挟んだことでアプローチの幅が格段に広がっているのが特徴だ。オフィシャルページのレヴューに挙がった名前は、ラリー・ハード、フューチャー・サウンド・オブ・ロンドン、寺田創一、ムーヴ・D、ニューワールドアクアリウムといった各ジャンルのオーソリティーたちで、パット・メセニーやマーク・アイシャムのサウンドスケープもインスピレーションの源となった模様。ア・タウト・ライン名義で作成したジャケットも、パットやマークのホームであった70年代後半のECMやウィンダム・ヒル作品のアートワークに通じる名盤のような雰囲気を放っている。
『The Calm』はセンチメンタルなムードが横溢するノンビート・トラック“Dreamwalker”で幕を開ける。ミニマルなサックスのサンプリングと、ニューエイジ調の透明感溢れるシンセにドラムンベース一歩手前のアップリフティングなリズムの組み合わせがユニークな“Asa Mist”を合図に、必殺のクリスタル・シンセが炸裂する“Family Law”、そこからウワモノのトーンだけを継承しつつハウス・ビートに差し替えた“Secrets of Eden”、クイーン“Another One Bites The Dust”のベースラインを引用したようなコズミック・ファンク“Clutch”と前半部は攻めの楽曲が並ぶ。中盤はア・タウト・ライン経由のエキゾチカ・エッセンスがうっすら滲む“Findings”、真夏のプールに潜ったかのようなゆったりめの“Australasia”、パット・メセニー風のシンセ・アレンジで空間を満たす“First Blush”と繋ぎ、アルバム中でも異色のエキゾチックなエレクトロ/アコーステック・ジャズ“The Calm Part 1”を皮切りに、ニュートンの新作にも通じる静謐でディープなドラムンベースが飛び出す“The Calm Part 2”、1曲目の“Dreamwalker”と対を成すような(こちらはビートありだが)クロージング“Blue Tomorrow”とラストの畳み掛けは圧巻だ。
なお、クリスを擁するUKのエレクトロ・ポップ・バンド、ホンコン・イン・ ザ・60sの新作『The Small Sound』も今月出たばかりなので、合わせてこの機会にチェックをどうぞ。