さまざまな音楽要素を貪欲にハントして夜の密林を駆け抜けろ!

 オランダはアムステルダムを拠点に活動する9人組のインスト・バンド、ジャングル・バイ・ナイト(以下JBN)をご存知だろうか。彼らの名前が音楽好きの間で浸透しはじめたのは、キンドレッド・スピリッツから『Jungle By Night』でアルバム・デビューを飾った2010年。ディー・ディー・ブリッジウォーター“Afro Blue”のカヴァーを含む同作の質の高さに驚かされたことを、いまも鮮明に覚えている。しかも、当時まだメンバー全員が10代だったのだから、いやはや。アフロビートやジャズ・ファンクを基調とするJBNのプレイ・スタイルは、その後もガムランを使用したり、エチオ・ジャズ的なメロディーを用いたりしながら、どんどん磨かれていくことに。そして2作目『Hidden』(2012年)を出す頃には、ルーツやジョン・レジェンド、ムラトゥ・アスタツケにオルケストラ・ポリ・リズモといった大物アクトの前座を務めるまでになる。 

JUNGLE BY NIGHT 『The Hunt』 Kindred Spirits/KSR(2014)

 そんな彼らから、〈フジロック〉出演のニュースと共に、待望のサード・アルバム『The Hunt』が届けられた。オフィシャルサイトにアップされた「いろいろな音楽要素を含んでいる」とのコメント通り、曲調のヴァラエティーは過去2作と比べものにならないほど豊かだ。〈ヒップホップmeetsアフロビート〉とも言うべき“The Move”、サイケデリック・ロック風に迫ってみせた“Attila”、エレキ・ギターとエレピが東洋的な妖しいメロディーを紡ぐ“Desdemona”、ブリストル産のダブ作品を思わせるダウナーな雰囲気を纏った“Tasmanica”など、若さゆえの柔軟性と、年齢に似つかわしくない卓越したスキルを武器に、世界中でこの9人にしか作り得ないプログレッシヴなアフロ・ファンクを展開。

 また、アフロ(ヘア)繋がりで日本盤のボートラには子門真人“およげ!たいやきくん”のリメイクが収録されている。飛び道具と言えばそれまでだが、悲壮感漂うあの旋律にエチオピアン・グルーヴを合体。ついつい繰り返し聴きたくなるような一曲に仕上げていて、恐れ入るばかりだ。とにかくアルバムのアタマからケツまでセンスが良く、〈本場アフリカの泥臭すぎる音はちょっと……〉という方も、このサウンドだったらすっと身を任せて踊れるはず。そんな『The Hunt』をアナタもハントしてみてはいかがだろう。

 

▼ジャングル・バイ・ナイトの作品

左から、2010年作『Jungle By Night』、2012年作『Hidden』(共にKindred Spirits)
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