With her elegance.
【特集】大人の時間と彼女の声
ただ気持ちを昂揚させるだけではない、大人ならではの上品なグルーヴ――そんな優雅な時間に似合う女性アーティストの作品が2015年は豊作ですよ!
★Pt.1 ディスクガイド前編とBENI『Undress』のコラムはこちら
2015年の作品を振り返るディスクガイド(後編)
邦楽女性アーティストのカヴァー集を挿んでのオリジナル作は、セクシーなジャケさながらの、大人の女の強さと可愛らしさを体現した一枚。先行カットと並ぶ初出の曲もアーバンなビッグバンド・ポップなどとことんゴージャスな音作りで、聴けば高めのヒールで街を歩きたくなる格好良さ。 *土田
〈渋谷系〉を担った歌姫が同ムーヴメントの代表曲やルーツ曲をカヴァー。ピチカートにバカラック、フリッパーズらの大名曲を揃えたお祭り盤だが、落ち着いたエレガンスに貫かれているのは、洗練されたアレンジもさることながら、やはり主役のノーブルな歌声あってこそ。 *澤田
最高にメロウなラヴァーズ・ロックを詰め込んだ初フル作。スウィートで切なく、歌謡曲っぽい人懐っこさを宿した楽曲の数々は、古内東子とも重ねたくなるアダルト・オリエンテッドな感覚に貫かれている。大貫妙子“くすりをたくさん”とあのアニメ絡みの“ロマンティックあげるよ”のカヴァーも美しい。 *澤田
スタイリッシュなサウンドを紡ぐ一方で、〈スタイリッシュ〉という表現には収まり切らない鋭利で強い言葉を歌声に込めてきた彼女。だがこの8作目は開放的な雰囲気で、間口の広いポップスとしての側面がより前に出た一枚だ。松田聖子オマージュな“You”の存在がそんな作品のトーンを象徴しているかも。 *澤田
昨年メジャー・デビューした恋愛ソングの名手による2作目。さまざまな視点から紡いだストーリーを、歌謡曲の情緒に満ちた楽曲に乗せて展開しており、柴田淳にも通じるウェットなエモーションに浸ることができる。テクノ・ポップ調の“火曜日、聞かなきゃよかった話”が挿し込む茶目っ気も魅力的。 *澤田
デビュー30周年記念の最新作。布袋寅泰をはじめ、シャーデーのアンドリュー・ヘイルやインコグニートの面々らも招いた本作では、ソウル由来のアシッド・ジャズなテイストも清廉な歌声に馴染ませている。全編を貫くラグジュアリーなグルーヴ感としなやかな軽さは、人生のキャリアを重ねたからこそのもの。 *土田
菅野よう子や鈴木祥子ら縁深い面々から大貫妙子、さかいゆうまで豪華作家陣が集った9作目。緩急に富んだウェルメイドな楽曲を揃えてデビューから20年のキャリアを総括しつつ、現在の年齢=〈35歳っぽい〉というコーネリアス参加のエレポップ“東京寒い”などでオルタナティヴな新境地を切り拓いている。 *澤田
サウンド・プロデューサーに矢野博康を、作家陣にAvec Avec、堀込高樹、宮川弾らを招聘……というクレジットだけで沸き立つ期待感に余裕で応えた珠玉のポップス集。この人特有の、抑制の効いたチャームを備える絶妙な歌声が、キュートになりすぎない清廉さと上品なトーンを作品に与えている。 *澤田
流線形との共演作でも知られるシンガー・ソングライターが同じく沖縄在住のピアニストと共に録音した琉球スタンダード集は、心洗われるような美ら歌がいっぱい。とりわけ静謐なピアノ演奏をバックにしたわらべうた系での柔らかくてサウダージ度満点のヴォーカルは、とても心地良い眠りへと導いてくれる。 *桑原
音楽以外にもモデルやイラストレーターなど活動範囲が多岐に渡る彼女の初作のテーマは〈ロンドン〉。カジヒデキのプロデュースだけあって、エスプリの効いたネオアコ~ギター・ポップを基盤にしたサウンドとアンニュイな歌声を通じ、かの地の空気をファッショナブルに伝えてくれる。 *土田
いま、日本でもっともスケール感のある歌声を響かせるシンガーかもしれない彼女。鷺巣詩郎が作/編曲を手掛けた重厚かつスリリングなストリングスとブルージーな旋律が絡み合うこの哀愁バラードにおいてもその威力は凄まじく、日常にありながら宇宙の果ての光景を鮮明に現出させるほどのものだ。 *桑原
先頃5年ぶりのライヴを行ったLily Chou-Chouでも活動を共にする小林武史がプロデュースを担当した最新作。表題通りにデジタルとアナログ、有機と無機の間を行き来する音世界を得難い声で表現しているが、3段階に渡って変奏される〈先回りして〉がとにかく圧巻。この大いなる母性は彼女だけのものだろう。 *土田
昨年のフル作ではソウル~R&B、ヒップホップ入りのアダルトなグルーヴも披露したアイコンの新シングルは、スワンピーな苦みも忍ばせたロッカ・バラード。完全生演奏のリッチなサウンド・デザインも主役のエモーショナルな歌声を後押ししていて、特に島田昌典の鍵盤が猛烈に泣ける。 *土田
昨年は韻シストとのコラボ盤、今年は自身のオリジナル作と、あらゆる意味で女性らしいキュートなソウルを届け続けるChara。そんな彼女をフロントに据えた劇中バンドが約20年ぶりに復活! 楽曲はもちろん小林武史によるもので、タイトル曲はメランコリックなギター・サウンドから慈愛が滲むミディアムに。 *土田