インタビュー

小林武史が総合プロデュースしたMy Little Loverの20周年記念盤『re:evergreen』をakkoが語る/オリジナル盤で振り返る歩み

【特集:大人の時間と彼女の声】Pt.5

With her elegance.
【特集】大人の時間と彼女の声
ただ気持ちを昂揚させるだけではない、大人ならではの上品なグルーヴ――そんな優雅な時間に似合う女性アーティストの作品が2015年は豊作ですよ!

★Pt.1 ディスクガイド前編とBENI『Undress』のコラムはこちら
★Pt.2 ディスクガイド後編とEvery Little Thingについてのコラムはこちら
★Pt.3 Azumi『CARNIVAL』のインタヴューはこちら
★Pt.4 城南海『尊々加那志~トウトガナシ~』のインタヴューはこちら

 


My Little Lover
〈歌〉と純粋に向き合い続けた20年。エヴァーグリーンな歌声が〈究極のポップス・アルバム〉を〈いま〉に引き寄せたとき、壮大な循環の物語が浮かび上がる――

 

純粋な歌のパワー

 95年にシングル『Man & Woman/My Painting』でデビュー。小林武史が手掛けるポップでヴィヴィッドな色彩を放つ楽曲と、それを透明感溢れる声と佇まいで歌うakkoの魅力で瞬く間にブレイクし、ファースト・アルバム『evergreen』(95年)は300万枚のセールスを記録。今年、デビュー20周年を迎えたMy Little Loverから、小林のトータル・プロデュースによる記念作がリリースされた。それも、『evergreen』をリプロデュースした『evergreen+』とニュー・アルバム『re:evergreen』の2枚組という斬新な形態だ。

My Little Lover re:evergreen トイズファクトリー(2015)

 「もう3年前なんですけど、プロデューサーの小林さんが〈マイラバの20周年アルバムは俺がプロデュースする!〉と言い出したのが始まりで。小林さんのなかでおそらくデビュー・アルバムの『evergreen』は究極のポップス・アルバムというイメージで作っていたので、改めて聴き直していくなかで〈もう一回これを紐解いてみよう〉と作業が次第に始まりました。そうすると〈自分で言うのもなんだけど、やっぱり良く出来てるなあ〉なんて言いながら〈でも、この音をいまの音色で録り直すともっと良くなるな〉とか〈いまこれを生の楽器で録るとどうなるんだろう?〉とか。そういう欲が沸いてきたことによって、『re:evergreen』を制作しながら、同時に『evergreen』のリプロデュースをすることになったんです」。

 極上のポップス・アルバムをもう一度、My Little Loverで作りたい――小林のそんな想いで制作が始まり、構想から3年をかけてデビュー・アルバムと最新作が対峙する2枚組が完成した。20年前を振り返ると、akkoはとにかくガムシャラだった自分を思い出すという。

 「当時はホントにただの音大生が、卒業して、そのままデビューして、アルバム『evergreen』の制作に入った感じだったので(笑)、レコーディング現場でも小林さんという素晴らしい監督がいて、選手のひとりとしてそこにいる感じが強かったですね。でも、いまこうして『evergreen』という作品にまた向き合ってみて、私自身、〈究極のポップス・アルバム〉というのを改めて実感しています。いま聴いても細やかな音作りがおもしろいし、ワクワクするんですよね」。

 当時は打ち込みで入れていた音を生音で再現するなど、デビュー作に新たな生命力を吹き込んだ『evergreen+』。“白いカイト”“Hello, Again~昔からある場所~”といったヒット曲を含む究極のポップソングたちはいまも色褪せることなく、さらなる輝きを増している。なお、ヴォーカルに関しては当時のまま。20年前の歌声と、現在の歌声をパッケージした2枚組というスタイルで作品をリリースできるのはakkoの声がいまも変わらない透明感に満ちていて、ひたむきな歌を響かせてくれるからに他ならない。

 「声が変わってないね、と言ってもらえるのは嬉しいですね。今回のレコーディングでは20年前の、当時の歌のパワーみたいなものはすごく意識しました。純粋なパワーというか。20年やってきたことなんて別に関係なくて、いまの自分がどういうふうにきちんと向き合ってその曲を歌うか、そればかりを考えていました。その結果としてアルバム『evergreen』を歌ってた頃のガムシャラな自分を想ったんですよね。こうやって歌ってやろうとか、こんなふうに見られたいとかっていう想いは私にとっては邪魔なんです。結局それはただの自己満足だし、〈歌〉ってたぶんそういうことじゃない。やっぱり純粋に向き合えたものが何より良いと思うから」。

 ニュー・アルバム『re:everegreen』で出会えた楽曲たちが、彼女をそんな純粋な気持ちで歌へと向かわせたのだろう。

 「いちばん最初に“ターミナル”という曲が出来たんですけど、自分が歌って完成したものを聴いた時に、久しぶりに小林さんとの制作だったこともあり、ものすごくしっくりきた感じがして。20年目にこの曲に出会えたことが、素直にとても嬉しかったですね」。

 

だって好きだもん

 公開中の映画「起終点駅 ターミナル」の主題歌でもある“ターミナル”を含む全10曲。デビュー曲“Man & Woman”を思わせるような男女問題をテーマにしたナンバーで、ラテンっぽいアレンジもスパイスになっている“舞台芝居”、制作の初期段階に出来上がったという華やかなサウンドで彩られたクリスマス・ソング“winter songが聴こえる”など、歌詞からは自立した女性の姿や新しい価値観をところどころに垣間見れるのも今作の聴きどころ。

 「アルバムを通して、歌詞のなかには20年前には歌えなかった言葉も入っていますね。優しさのなかにあるしなやかな強さだったり、そういう部分がちらほら垣間見られると思います。特にお願いしているわけではないんですけど、小林さんは私というフィルターを通す形で歌詞を書いていると思うので、遠巻きに私を見ながら、そんなふうに思ったんじゃないかなと(笑)」。

 そしてラストには、『evergreen』のタイトル・チューンに呼応する形で“re:evergreen”が収録されている。20年という時を越えて、物語は壮大な循環を描き出す。

 「この曲が出来たことで、20年間かけて『evergreen』という種が、芽を出して、花が咲いて、実が成って、樹になって、また新たな種を落とした感じがするんです。これを育てるのはMy Little Loverを背負っている自分だと思う。だから、20周年を迎えてまた新たな始まりという気がしています。今回の制作を通じ、生音をふんだんに使った豪華な演奏を毎日のように聴かせてもらって、私はすごく幸せなシンガーだと実感しました。私がこれからもMy Little Loverを続けていく理由は〈だって好きだもん〉っていうことに尽きますね(笑)。この20年、いろんな時期があったけど、大変な時こそがんばれたから、続けてきて良かったと心から思っています」。

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