インタビュー

奄美出身の歌姫・城南海、スウィートな旋律得て歌声に透明感増した新作『尊々加那志~トウトガナシ~』を語る

【特集:大人の時間と彼女の声】Pt.4

With her elegance.
【特集】大人の時間と彼女の声
ただ気持ちを昂揚させるだけではない、大人ならではの上品なグルーヴ――そんな優雅な時間に似合う女性アーティストの作品が2015年は豊作ですよ!

★Pt.1 ディスクガイド前編とBENI『Undress』のコラムはこちら
★Pt.2 ディスクガイド後編とEvery Little Thingについてのコラムはこちら
★Pt.3 Azumi『CARNIVAL』のインタヴューはこちら
★Pt.5 My Little Lover『re:evergreen』のインタヴューとコラムはこちら

 


Minami Kizuki
奄美の美しい景色とおおらかな文化が育んだ、オリエンタルな歌声に包まれて――話題のシンガーがもたらす、懐かしく心地良いひととき

 

 昨今幅広い層から支持を受ける奄美出身の歌姫、城南海の新作『尊々加那志~トウトガナシ~』が届いた。約1年半ぶりのオリジナル・アルバムを作るにあたり、彼女が念頭に置いていたものは何だったのだろう。

 「『THEカラオケ★バトル』という番組の反響もあって春と夏にカヴァー・アルバムを2枚発表したんですが、これをきっかけに私を知ってくれる人もたくさん増えて。それを経てのオリジナル・アルバムということで、カヴァーで学んだものを活かしてステップアップしたい、原点回帰というか改めて自分の音楽を見つめ直したい、というふたつの主軸を立てました。例えば、アップテンポな曲に挑戦するとか、奄美らしい旋律や島の心を採り入れた曲を作るとか」。

城南海 尊々加那志~トウトガナシ~ ポニーキャニオン(2015)

 キラキラと眩い光を放つウィンター・バラード“君だけがいない冬”(書いたのはMISIA“Everything”などで知られる松本俊明)などもステップアップの部類に入るだろう。スウィートな旋律を得て彼女の歌声が透明感を増している。でも何より心を震わせるのは、奄美の風景を歌った楽曲群だ。〈郷愁は人が生きていくために必要な栄養素なのだ〉と教えてくれるこれらの曲に耳を傾けていると、なんだか故郷に帰りたくなってしまう。そんな効力がいちばん働いているのは初の自作詞&作曲となる“祈りうた~トウトガナシ~”かもしれない。

 「世界中で放送されているTV番組〈J-MELO〉の曲ということでお話をいただいたとき、私の頭にすぐ思い浮かんだテーマは〈平和〉でした。私のルーツである奄美の音楽が培われてきた背景には長く苦しい時代があり、奄美の歌を次世代に伝えていく使命を感じている私のなかで、常に平和がテーマとしてあったので」。

 身を預けていると知らず知らずのうちに心身が平穏で満ち足りていく。そんな不思議な力を城南海の歌声は有している。

 「〈トウトガナシ〉とは感謝の気持ちを表わす言葉で、お仏壇に手を合わせるとき〈今日も良い日でありますように、トウトガナシ〉って言ったり、友だちが帰るときに〈気をつけてね、トウトガナシ〉って使ったり、奄美では日常生活の身近にある祈りの言葉なんです。〈トウトガナシ〉って気持ちを持っていたならば、悲しいことは起きないんじゃないかって思います。私がいちばん平和を感じるのは奄美の海を眺めているときなんですが、その景色を思い浮かべながら、島の人が大事に残してきた島の言葉でこの曲を書いたんです」。

 どこか儚げで幻想的な“月と月”、ハートウォーミングなサウンドが心地良い“アイゆえに”など〈大きな愛〉を歌った曲から浮かんでくるのは、ずっと変わることなくそこにあり続けてくれるものへの慈しみ。なんだか無性に故郷が恋しくなるのはそのせいだ。

 「そこが今回のテーマですね。今回は繋がりが強い人たちと作り上げたというか、さまざまなご縁が集まってできたアルバムなので、みなさんへの感謝の気持ちも込めてこのタイトルにしたんです」。

 “祈りうた~トウトガナシ~”では、彼女と旧知の仲であったJazztronik野崎良太が美しいアレンジを施している点にも注目されたい。自身のルーツに目を向けながら、さらに広い世界へ漕ぎ出していきたいという思いを抱いて作り上げたこの『尊々加那志~トウトガナシ~』。音の向こうから吹いてくるミナミカゼはとても清々しい。

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