THE BEST IS YET TO COME
ダイアナ・クラールはデヴィッド・フォスターと合体!!

 「ヴォーカル・ブースにいた間は、とにかく集中できて、デヴィッドにしっかりとプロデュースして貰えたことは大きな喜びだった。〈デヴィッドが得意とするポップ・アルバムを作ろう〉と思ったの。曲やミュージシャンについて私もしっかり言いたいことは言ったけれど、いままでとは違う経験にしたかったから、ピアノとアレンジはほとんど彼に任せたの。結果、まったく違う経験になったわ」。

DIANA KRALL 『Wallflower』 Verve/ユニバーサル(2015)

 そう語るのはダイアナ・クラール。カナダ出身の歌手/ピアニストであり、この30年間でもっともアルバムを売った女性ジャズ・アーティストとされる大物だ。ロック・ファンにはエルヴィス・コステロと結婚していることでもお馴染みの名前だろう。知らない人が写真だけ見ると絵に描いたような〈ジャズ・シンガー〉のように思うかもしれないが、超大物のバーブラ・ストライサンドをプロデュースしたこともある彼女は、制作面でも才覚を発揮し、基本的に自分主導で作品トータルをコントロールしてきた人でもある。それだけに、(前作『Glad Rag Doll』ではT・ボーン・バーネットと組んでいたものの)2年ぶりとなる今回のニュー・アルバム『Wallflower』はさらに大きな話題を呼んでいるようだ。彼女の発言にあるデヴィッドとはデヴィッド・フォスター。そう、現在は彼女の所属するヴァーヴでチェアマンも務める彼が、アルバムのプロデュースを担っているのだ。デヴィッド自身はこう明かす。

 「彼女はジャズの世界の深いところまで突き詰めているし、ミュージシャンとして僕の遥か先を行っていることには疑問の余地もない。けれど、彼女は他の人にプロデュースをしてもらうことを受け入れたし、彼女が僕の意見に応えてくれたことはとてもエキサイティングだったよ」。

 アルバム・タイトルとなったボブ・ディランの“Wallflower”をはじめ、エルトン・ジョンやママス・アンド・パパス、クラウデッド・ハウスなど、アルバムの大半を占めるのはポップ/ロック系のナンバー。もとよりポピュラー方面にクロスオーヴァーしてきた彼女のポテンシャルをより平易に伝えようとする采配はデヴィッドならではか。彼女の歌とピアノが紡ぐ世界は、いわゆるシンガー・ソングライター的なジャズ・ヴォーカルとは異なる艶と凛々しさに溢れている。なお、(かつてジャズ作の制作時に助力した)ポール・マッカートニーからは未発表新曲“If I Take You Home Tonight”を提供されてもいるから、そういう意味で無視できないという人も多いことだろう。必聴だ。

 

▼ダイアナ・クラールの近作

左から、2009年作『Quiet Nights』、2012年作『Glad Rag Doll』(共にVerve)

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▼関連盤を紹介

左から、バーブラ・ストライサンドの2009年作『Love Is The Answer』(Columbia)、ポール・マッカートニーの2012年作『Kisses On The Bottom』(Hear Music)

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