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リーダーは孤高の存在

――バンドの歩みについても、改めて訊かせてください。結成されてから今日に至るまで、ライヴは主にどういった感じでやられてきたんですか。

瀬戸口「バンドをやりはじめた当初は福岡のブッキングに出ていて、県外に出ていくきっかけになったのは2005~2006年以降です。accidents in too large fieldというバンドが主催している、福岡では有名な〈問題〉というイヴェントがありまして。そこで気に入られたのがきっかけで、大阪に連れて行ってもらったりしました。それから北九州市の斜陽というバンドや、(山本)達久さんや一楽(儀光)さんあたりもよく出演していた山口の印度洋というライヴハウスだったり、そこでバーテンをやっていたさめというバンドなどとの繋がりで北九州や山口によく行くようになったりして。その頃に武ちゃんが入ってきましたね」

山本「一時期は長崎や東京、北海道にもたくさん行ってましたね」

accidents in too large fieldの2007年のライヴ映像
 

――山本さんは、2010年に加入する前からマクマナマンのメンバーとは知り合いだったんですか?

山本「前に自分がやっていたバンドと、月に3回くらいは対バンしていたので、だいぶ知り合いでしたね。ただ、瀬戸口とはよく話していたけど、ほかのメンバーとはまだそんなに……」

――じゃあ、初めてリーダーと知り合ったときはビックリしたのでは?

山本「そうですねえ。ただ、ステージ上にぬいぐるみが置いてあるのはいつも見ていたので、そういうのが好きなんだろうなーというのは前々から思ってました(笑)」

――当時は外から見ていて、マクマナマンにどんなイメージを抱いてました?

山本「とにかくドラムとギターが速えなと」

――そんなマクマナマンは、海外勢ではライトニング・ボルトナジャ、国内では灰野敬二さんや非常階段といった面々とも共演されてきたそうですね。

瀬戸口「ライトニング・ボルトはたぶん印度洋だったんだと思うんですが、達久さんや一楽さんの話でもよく話題に上る、山中謙治さんという伝説的なオーガナイザーがいて。俺はその人と一緒にzerorealityというノイズ・バンドをやっていたので、そのツテで出たんだったかな」

ライトニング・ボルトの〈TAICOCLUB'14〉でのパフォーマンス映像
 

――バンドが結成された2005年から2010年くらいまではポスト・ロックやインスト・バンドの最盛期でしたが、そういう流れもマクマナマンにとっては大きかったのでしょうか?

瀬戸口「いや、そういうシーンに対する共感はなかったです。どこに共感を持っていたかというと、やはり〈問題〉と、長崎の〈ELECTLOCAL〉。そのあたりに対する憧れが強かったですね。そこからデラシネとかに派生するんですけど。いまだったらやっぱり、切腹ピストルズがすごくカッコイイなあと」

※長崎のバンド、VELOCITYUTが主宰するイヴェント

VELOCITYUTの2016年のライヴ映像
 
切腹ピストルズの2015年のパフォーマンス映像
 

――ああ、なるほど。

瀬戸口「これ……、俺の個人的な話だな(笑)。でもリーダーと藤瀬も、シーンというものにあまり縁がない人ですね。孤高なんです。地元のバンドに影響を受けたりというのもないと思います」

山本「うーん、ないよね」

瀬戸口「付き合いもないしね。これだけバンドを続けているのに、あの2人と話すバンドマンは10人もいないんじゃないかな」

――それはかなり孤高ですね(笑)。また歴史を辿ると、2012年には最初のアルバム『DRUGORBASEBALL』をリリースして、〈フジロック〉の〈ROOKIE A GO-GO〉に出演しています。このあたりは、バンドにとっても大きかったんじゃないですか?

瀬戸口「……まあ、はい」

山本「何か変わったかな?」

瀬戸口「どうなんだろう、変わってないんじゃない?」

山本「嬉しかったのは覚えてますけど、いまとなってはそんな感じですね」

――なるほど(笑)。『DRUGORBASEBALL』は曲名もぶっ飛んでますよね。“マイケル”“超級警察”“ぐるぐるチョップぐるぐる”……。こういったネーミングは?

瀬戸口「全部リーダーです。“マイケル”はマイケル・ジャクソンで、追悼の時期にまんまとニワカでハマって。“超級警察”はジャッキー・チェンだし、“ぐるぐるチョップぐるぐる”は『内村プロデュース』が元ネタで」

マクマナマンの2012年作『DRUGORBASEBALL』収録曲“マイケル”
 
マクマナマンの2012年作『DRUGORBASEBALL』収録曲“ぐるぐるチョップぐるぐる”
 

――曲名ってそんな付け方でいいんですか(笑)。

瀬戸口「あの人、最初はアルバムのタイトルも〈『ネコバス』にしよう〉と言ってたもんな」

一同「ハハハハハ(爆笑)!」

瀬戸口「いきなりスタジオで〈僕、考えてきたっちゃけど……『ネコバス』〉って言ってきたから、流石にそれはマズイと(笑)。たまにそういうヤバイ案があるので、何でも受け入れているわけじゃないですね」

――そのセンスは、今回の新作『New Wave of British BASEBALL Heavy Metal』にも継承されていますよね。例えば“DxAxSxHxZIMA”は、やっぱりTOKIOの……。

瀬戸口「そうですね。モロだとマズイから〈ZIMAを呑んでDASHしよう!〉みたいな意味だと思っています」

 

リーダーへの信頼感でバンドを続けている

――2014年に『Drunkendesignatedhitter』というライヴ盤も発表していますが、オリジナル・アルバムとしては4年ぶりの新作となったわけですよね。それまでの期間に、バンドとして何か大きな変化はありました?

山本「いや、ごく普通に作っていたら4年かかった感じです。1曲を作るのにとにかく時間がかかるので。尺の長い曲だと1年とか」

瀬戸口「平均で大体半年くらいはかかるよね」

――あんなに長くて展開も多かったら時間も掛かりますよね。制作する手順はどのような感じで?

山本「最近はリーダーが家でデモを作ってくれて。前は1フレーズずつ持ってきて、徐々に組み上げていくという時間のかかる作業をしていたんですけど、最近は瀬戸口と2人で(スタジオに)入ることもあります」

瀬戸口「俺はリーダーと2人で昔ながらのアナログなやり方で作っているんですが、その新しいやり方がバンドのなかに出てきて」

――2つのプロセスがあって、それぞれメンバー各自で作ったものを組み合わせることで曲が生まれていくと。

山本「はい。全員でスタジオに入れないときは、入れるメンバーだけで入ったりもするので。そういう感じで徐々に仕上げました」

瀬戸口「それで上手くいかなかったりすると、ひとつのパートだけ替えればいいのか、それとも大元から崩していくのかと試していくので、メチャクチャ時間がかかるんです(笑)」

――なるほど。“DxAxSxHxZIMA”は2014年のライヴ映像がYouTubeにありましたが、わりと早い段階で曲は揃っていたんですか?

山本「2011~2012年頃に出来ていた曲もありますね」

“DxAxSxHxZIMA”のライヴ映像
 

瀬戸口「“KOWLOON'S EYE”のように、前のアルバムの段階ですでにあったけど、(演奏が)慣れてなさすぎて入れられなかったものもあります」

山本「最近作られた曲は、“MORICORO”と“AKIYAMAxBASEBALLxEXPLOSION”ですね」

―― “AKIYAMAxBASEBALLxEXPLOSION”は、曲名通り爆発的にカッコイイ曲だと思いました。

瀬戸口「あの曲は、いままでの作風からガラッと変わっていて。これまではどこかでガチャガチャさせていたけど、アニマル・コレクティヴみたいに全体が安定して、フレーズがループするというのはなかった。リーダーはそんなこと考えていないと思うけど(笑)、こういうのをやるようになったんだなあと」

アニマル・コレクティヴの2005年作『Feels』収録曲“Grass”
 

山本「普通の3拍子が出てきたり、最初のフレーズが最後にもう一回出てくるところとかが大きな変化ですね。大抵は戻らずに終わっていたので」

瀬戸口「前はフリーなパートがかなりあったんですが、今回のアルバムは少なくなりましたね」

山本「前は即興でやるパートが10分くらいあったけど。その代わり、アレンジや曲展開は以前より細かくなっています」

――確かに、全体のコンポジションにこだわって、丹念に練っている印象を受けました。そういった変化はどこから?

瀬戸口「このアルバムに至るまでに、俺と武ちゃんが歌モノのバンドにいたことが一瞬あって。それで自分のドラムが別の方向に向かったというのはあるかもしれない。バスドラとか、すげえ大事にしましたね」

山本「そうですね、その影響は少なからずあると思います」

――そんな新境地を象徴するナンバーに、“AKIYAMAxBASEBALLxEXPLOSION”と名付けるのも流石だなと(笑)。秋山幸二・ホークス前監督への愛がここで炸裂するという。

山本「最初は、自分で爆笑してました(笑)」

瀬戸口「スタジオの空気は、ホークスの勝敗にメチャクチャ左右されているので。負けると怒りながら入ってくるんですよ」

山本「そうそう、クソッて言いながら」

瀬戸口「勝つと、応援歌を歌いながら入ってくる」

――“いざゆけ若鷹軍団”を(笑)。『New Wave of British BASEBALL Heavy Metal』というアルバムのタイトルも、もはや訊くまでもなく……。

瀬戸口「リーダーの独断です。メタルかなんかの……」

――〈New Wave Of British Heavy Metal〉ですよね。

アイアン・メイデンらにより70年代後半に起きたメタルのムーヴメント。〈NWOBHM〉と略されることも多い

瀬戸口「はい。それと野球を絡めたという話だけ聞いて。よくわからないけど、カッコイイからいいんじゃないって」

アイアン・メイデンの80年作『Iron Maiden』収録曲“Prowler”
 

――分厚くて奥行きのあるサウンドにも驚かされましたが、レコーディングに7か月も費やしたそうで。UTEROという福岡のライヴハウスで録られたんですよね。

山本「はい。(UTEROが)オープンしてから毎月のように出演していたので、個人的にはそこで録りたいなという気持ちがあったんです。まずはベーシックを移転前に録って、あとは移転してからギターを気が狂ったかのように重ねました」

※2016年4月に移転、新装オープンした

瀬戸口「(レコーディングするときは)少なくとも毎回6時間以上、長いときで10時間くらい。それを5、6回」

山本「ベースが場所によっては3本も入っていたり、弾けないシンセをがんばって弾いてみたりもしましたね」

瀬戸口「あとはやっぱり、ギターのトラックが物凄く多かったですね」

山本「レコーディングしてくれたUTEROの山中さんも、いままで録音したなかで一番トラック数が多かったと言っていました」

――では最後に、お2人がバンドを続けるモチヴェーションってなんでしょう?

瀬戸口「リーダーに対する信頼感ですね。人間的にも音楽的にもすごくおもしろいと思っているので。あとは単純に、バンドをずっとやっていきたいなと」

山本「楽器を演奏することが好きで、これまでいろんなバンドで活動してますけど、リーダーが持ってくるフレーズが聴いたことのないものばかりだし、やっぱり演奏していて楽しいんです。それに、ここまでドカンとなるバンドはほかにないから」

――ライヴで演奏するのが楽しそうな曲ばかりですもんね。

瀬戸口「ウチのバンドは、みんなバラバラな方向を向いていて、それが一個の塊として集まっている感じというか」

山本「そうだね、全員バラバラ(笑)」

瀬戸口「こんなことをインタヴューの最後に言うのもアレですけど、俺らじゃないほうの2人に話を訊いたら、まったく違う内容になると思いますよ」

――リーダーの気質は〈狭く深く〉ということでしたが、今回のアルバムも自分たちの音楽をディープに掘り下げていった賜物なのかなと。

山本「リーダーが好きなものを掘り下げられた感じはしますね」

瀬戸口「それはあるかもしれない」

 


『New Wave of British BASEBALL Heavy Metal』レコ発

日時/会場:11月27日(日)福岡・gigi
開場/開演:18:30/19:00
共演:ナルコレプシンノイエサンスーシ

日時:12月4日(日)13:00~
会場:タワーレコード福岡パルコ店(ミニライヴ+サイン会)

日時:12月10日(土)
会場:福岡・小倉MEGAHERTZ

Tropical Death x マクマナマン Release Party!
日時/会場:1月21日(土) 東京・新宿Motion
共演:Tropical DeathBrain Twins (フィリピン) /BUMBUMSUmibachi ほか

マクマナマン”New Wave of British BASEBALL Heavy Metal” Release Party in 青山
日時/会場:1月22日(日) 東京・青山 月見ル君想フ
共演:トリプルファイヤーhopi(from the morningsthai kick murph) 

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