日本独自企画ならではの、フランシス・レイ・サウンドへのアムールに満ちたボックス・セット
「男と女」や「白い恋人たち」、「パリのめぐり逢い」……外国人にとって〈アムールの国フランス〉を最も強烈にイメージさせてくれる作曲家の一人がフランシス・レイ。そのレイの半世紀にわたる映画音楽作曲家としての膨大な量の作品から選曲された4枚組ボックスが登場した。
レイの集成箱だと、今年春に7枚組サントラ集『Anthology』が出たし、もっと前にはサントラ以外にシャンソンや自身のヴォーカルものまでかき集めた『Francis Lai Story』なる14枚組の大箱もあった。鬼リサーチャー/コンパイラーの濱田高志氏が監修し、共同監修/資料提供者として白野弁寿氏が協力した今回の日本独自企画盤では、そんな先行商品の内容をきちんとふまえた上でのなかなかユニークな選曲がなされている。「男と女」と並ぶレイの代表曲「ビリティス」をはじめ「雨の訪問者」とか「個人教授」、「うたかたの恋」等々、当然あるべきものが入っていない。その代わり、日本では映画が未公開のためサントラもほとんど知られていない70年代後半以降の作品がたくさん収録されているのだ。「男と女」や「パリのめぐり逢い」、せいぜい「ビリティス」あたりでレイの音楽に対するイメージが止まっちゃってる日本のリスナーに向けて、レイの音楽の持続性と全体像をきちんと伝えたいという監修者の思いが伝わってこよう。濱田高志氏は本作を作るにあたり、レイの自宅まで赴いて相談したというが、この選曲にはきっとレイ本人も喜んだのではなかろうか。
そして、日本独自企画ならではのユニークさがひときわ光っているのが、〈Jeux au Japon〉と名付けられたディスク4。これは、ホンダ・アコードのPR用楽曲やダーク・ダックスに書き下ろした「愛のメルヘン」など日本絡みの作品だけを集めたものだ。
言うまでもないが、濱田&白野両氏による詳細な解説や大量のレコジャケ写真を含むブックレットは資料として超貴重。あと、レイの相棒である編曲者クリスティアン・ゴベールの凄さにも改めて感嘆させられた。レイの甘美なメロディも、ゴベールの流麗なオーケストレイションがあればこそ、である。濱田さん、今度はゴベール・ワークス箱、作ってくれないかな。