シカゴの名門レーベルが創設25年を迎えて大胆にイメチェン……ってホントに!?
トータスを筆頭に、90年代のブームを支えたポスト・ロックのレーベル……というイメージがなおも強いスリル・ジョッキー(以下TJ)。しかし、設立から丸25年を迎えたいま、その共通認識を覆すようなニュー・アルバムがドドッと到着しています。
まず兄弟バンドのポンティアクによる『Dialectic Of Ignorance』は、プログレ・メタルとストーナー・ロックをひとつの線で結んだ骨太盤。男臭さで言えばアイオワの暴れん坊、アシーセの移籍作『Hopes Of Failure』も負けてはおらず、先にTJ入りしていたボディの後を追うように、ドゥーム・メタルとドローン音楽の接合点を力技で模索しています。
以上の2アイテムからも窺える通り、近頃のTJはラウドものにも力を注いているのですが、もちろんそっち系だけじゃないのでご安心を。ファット・ポッサムなどに作品を残してきたエントランスの移籍作『Book Of Changes』は、キーンとした耳を労ってくれるような仕上がりで、〈アンビエント・ブルース〉といった趣のサウンドにデヴェンドラ・バンハートも夢中なんだとか。また、わりと王道のフォーク・ロックを聴かせてくれるアーボウリータム『Song Of The Rose』も癒し度数が高め。哀愁たっぷりの渋声とノスタルジックなメロディーに、涙腺は崩壊寸前です。
このように新顔を交えながらレーベル・カラーを更新しているなか、ダグラス・マッコムズ(トータス)のソロ・ユニット=ブロークバックのお披露目盤『Illinois River Valley Blues』を、アニヴァーサリー・イヤーの目玉作品としているのも嬉しいじゃないですか! スピリチュアル・ジャズやダブの要素が見え隠れするジャム・サウンドは、本隊の初作『Tortoise』(94年)と比較したくなるほど。昔ながらのファンを置いてけぼりにしない――これもTJが愛され続ける大きな理由でしょう。