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アンドリューはどんな音をヒントにNYの街を表現したのか?

 出発点のサムシング・コーポレイトから見れば、〈ずいぶん遠くまで来たな~〉といった印象を受ける『Zombies On Broadway』。だけど、アルバム収録曲“Dead Man's Dollar”での大袈裟なほど分厚いコーラスを乗せたアンセミックな陽性ギター・ポップはファンの、“Island Radio”でのソング・オリエンテッドな爽やかEDMはアウル・シティの作品と直結するもので、そう考えるとアンドリューの軸はさほど変わっていないように思えたりして。というのも、ファンの前身であるフォーマットはかつてジミー・イート・ワールドのレーベルに在籍したグループだし、アウル・シティことアダム・ヤングはウィンザー・エアリフトの一員としてキャリアをスタートし、ピアノ・エモ・バンドのメイなどと縁の深い人物だから。アティテュードではなく、トレンディーな素材として2000年代初頭にパンク/エモを咀嚼してきた彼らとアンドリューが現在わりと近い地点にいるのは、むしろ凄くしっくりくることなのかもしれません。そして、本文の発言にもある通り「いま受けている影響も反映させた」音作りを素直に実践した結果が、DJスネイク的な浮遊ポップも、DNCEと並べて聴きたいパーティー・ファンクもアリの『Zombies On Broadway』というわけです。

 余談ですが、6~7月にビリー・ジョエルのスタジアム・ツアーでオープニング・アクトを務めるなど、USではさらなる飛躍が期待されているアンドリュー。何でも、彼が最初に観たコンサートはそのビリーのものだったらしく、今年の夏はアンドリューにとって忘れられない季節になりそうです。新作の日本盤ボーナス・トラックで聴ける弾き語り曲は、御大の影響をダイレクトに感じられるもの。現行シーンではア・グレート・ビッグ・ワールドの一人勝ち状態だった正統派ピアノマンの流れに、強力な人材が現れた気もします。