(C)2015Film Movement, LLC

ロック~前衛音楽シーン、数多のアーティストたちに大きな影響を与え続けて来たザ・レジデンツ、32年ぶりの来日でも話題騒然!

 今年、32年振りの来日をして話題を呼んだレジデンツ。これまで彼らは、音楽、パフォーマンス、映像など様々な手段を通じて精力的作品を発表してきたが、その正体は謎のまま。そして、彼らのファンは共犯者のようにその謎を楽しんできた。そんな密かな楽しみの新たなメニューとして提供されたのが、彼らの歴史を振り返るドキュメンタリー映画『めだまろん』だ。監督のドン・ハーディも「レジデンツの謎を暴く!」というよりは、レジデンツの楽しみ方をファンと分ちあおうとしているかのようだ。

 サマー・オブ・ラヴが全盛期だった60年代後半、アメリカ南部から、ヒッピーカルチャーの聖地・サンフランシスコを目指してやって来た若者達がいた。彼らはクラブでパフォーマンスをしたり、自主映画を撮ったりしてアンダーグラウンドな活動を始める。そして、キャプテン・ビーフハートに憧れていた彼らは、デモテープをキャプテンの関係者や業界関係者に送るが誰も相手にしてくれなかった。しかし、そこで黙殺されたことが、レジデンツという特殊なグループを生み出すことになったのだ。彼らは自主レーベル、ラルフを立ち上げて作品を発表。以降、決して素顔を見せず、インタビューにも応えずに匿名を貫いてきた。もし、レーベルと契約していたらそういうわけにはいかなかっただろう。そして、匿名であり続けることでレジデンツは表現の自由を手に入れたのだ。

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 映画には、レジデンツの広報やマネージメントを手掛けるグループ、クリプティック・コーポレーションのメンバーが登場。レジデンツの初期から現在に至るまでの貴重なライヴ映像を挟みながら、最もレジデンツの近くにいた者としてバンドについて語ってくれる。〈彼らこそレジデンツのメンバーなのでは?〉という疑惑は以前からあるが、そこを解明するのは本作の目的ではない(彼らは頑に否定している)。次々と飛び出すエピソードのなかで、やっぱり外せないのは目玉の話。最初はTシャツのデザインとして考案されたが、あっという間にレジデンツのトレードマークになってしまう。クリプティックのメンバーは「目玉はマーケティング上のアイデア」と語るが、レジデンツは匿名であることを逆手にとって、次々と新しいイメージを生み出してレコードやグッズを販売した。それらもまた彼らのアートの一部なのだ。

 それにしても出演者の顔ぶれもすごい。ミュージシャンだけとっても、レス・クレイプール(プライマス)、ジェリー・ハリソン(トーキング・ヘッズ)、ジェラルド・キャセール(ディーヴォ)、ジーン・ウィーン(ウィーン)、ロブ・クロウ(ピンバック)、クリス・カトラーなど、ぜひレジデンツ・ フェスをやってほしい個性的なメンツが集結。彼らがレジデンツを語る姿の楽しそうなこと。本作は、参加者それぞれが語るユニークな「目玉論」に耳を傾ける映画でもあるのだ。

 

映画『めだまろん ザ・レジデンツ・ムービー』
監督・脚本:ドン・ハーディー
出演:マット・グレイニング/レス・クレイプール/ベン・ジレット/ジェリー・ハリスン/ゲイリー・パンター/ジェリー・キャサーレ/他
配給:ダゲレオ出版 (2015年 アメリカ 87分)
◎7/1(土)シアター・イメージフォーラム、7/8(土)シネ・リーブル梅田にて公開
www.imageforum.co.jp/theresidentsmovie