アヴァンギャルドな目玉たちが32年ぶりに奇跡の再来日!

 ビートルズ、じゃなくて、レジデンツがやって来る、ハァ! ハァ! ハァ! レジデンツ来日の知らせを聞いて思わず息が荒くなった。彼らが初来日したのが85年なので、それから実に32年ぶりとなる奇跡の再来日だ。それ以上に、32年もの間、レジデンツのようなグループが解散せずに活動を続けていたということも驚異的。もちろん、この場合、“のような”という言葉には最大の敬意が込められている。では、レジデンツとはどのような集団なのか。

 彼らがサンフランシスコ近郊で活動を始めたのは1970年代頃。72年にデビュー・シングル『サンタ・ドッグ』を制作。フランク・ザッパニクソンなど様々な著名人に送りつけるが返事は一通もなかった。しかし、レジデンツはくじけることなく前進。73 年に自主レーベルのラルフから、ビートルズをパロディのネタにしたファースト・アルバム『ミート・ザ・レジデンツ』を発表する。音楽経験がまったくなかった彼らは、楽器、日用品、ノイズなど、様々な音をテープマシーンでミックスして奇怪な音楽を作り上げた。

 彼らは他のアーティストの影響を一切受けず、何にも似ていない音楽を作ること、そして、アンチ・コマーシャリズムを貫いて、素顔も本名も一切明らかにしないまま、アルバムごとにレジデンツ的世界を開拓していった。ナチスとロックが出会う『ザ・サード・ライヒンロール』。1分間の曲を40曲収録した『コマーシャル・アルバム』。ジョージ・ガーシュウィンジェイムズ・ブラウンなど有名な音楽家達の作品を好き勝手に料理した〈アメリカ作曲家シリーズ〉などなど。どれもレジデンツらしい諧謔精神とどす黒い妄想力を感じさせるが、なかでもエスキモーの民族音楽をデッチあげた『エスキモー』は高い評価を受け、ジャケに映ったシルクハットをかぶった目玉の紳士たちの姿が、その後の彼らのヴジュアル・イメージになった。

 そうした音楽活動の傍らで、彼らは早い段階でミュージック・ビデオを制作。さらに90年代に入るとコンピュータ時代の到来に向けてCD-ROM『フリークショウ』を制作するなど、映像やパフォーマンスにおいてもレジデンツは先鋭的だった。

THE RESIDENTS The Ghost Of Hope Cherry Red(2017)

 3月にリリース予定の新作『The Ghost Of Hope』は、19世紀にアメリカで起きた列車事故をコンセプトにした作品らしいが、今回のライヴは一体どんな内容なのか。ステージで列車事故を再現するのか。そもそも、やって来るのは本当のレジデンツなのか。すべてが謎に包まれている。でも、そうした謎に翻弄されることが〈ミート・ザ・レジデンツ〉。3月の来日公演では、息を荒げながらレジデンツの謎に迫りたい。

 


LIVE INFORMATION

THE RESIDENTS - In between Dreams -
○3/21(火) 22(水)23(木)
[1st]17:30開場/18:30開演 [2nd]20:20開場/21:00開演
会場:ブルーノート東京
www.bluenote.co.jp