
アフロやレゲエ、ファンクを飲み込みつつ、 熱帯のブラスロッカーズ・サウンドを聴かせてきた6人組、RIDDIMATESの新作『OVER』が完成した。2014年の前作『JOY』以降、メンバーの脱退と加入があったため、新生RIDDIMATESとしては初のフル・アルバム。昨年発表したEP『DIVE』では児玉奈央をフィーチャーして話題を集めた彼らだが、今回のアルバムではさらに柔軟に進化を遂げている。
メンバーみずから〈最高傑作〉と胸を張るその内容について、リーダーのCross You(テナー・サックス)、Akirag(アルト・サックス/フルート)、TANAAMI DAISUKE(ベース)に話を聞いた。
2MCみたいに2本のサックスを押し出していくスタイル
――まず、2014年の前作『JOY』 を振り返ってみて、あのアルバムでやろうとしたことは?
Cross You(以下、Cross)「ポップで開けたアルバムにしたかった。その前の『ZION RHAPSODY』(2013年)というアルバムには7、8分ある曲も入っていたんですけど、もっとキュッとした構成にしてもいいんじゃないかと思って。そうした理由で、僕らとしては短めの曲で統一しましたね」
――手応えは?
Cross「作品としてはすごく手応えを感じたし、あのアルバムを作ったことでその先も見えてきたんですけど、アルバム完成後、キーボードのYoopeyとドラムのsadabonが辞めちゃったんですよね」
――それもあって、それまでは毎年コンスタントに作品を出してきたのに、2015年はリリースがなかったですね。
Cross「そうです。ただ、後任のドラマー(Yosh)もすぐ決まったし、アルバムを出そうと思えば出せないこともなかった。でも、いま思うと、当時は〈どうしようかな?〉という迷いみたいなものもあったんじゃないかな」
Akirag「キーボードをどうするかという点はメンバーの間でも議論になりましたね。入れたほうがいいんじゃないかという意見もあったし、入れないほうがすっきりした構成になっていいんじゃないかという意見もあって。結果的にキーボードを入れないでそれぞれの味を出していくという方向にまとまっていった」
Cross「確かに〈キーボードを入れない〉という決定は大きかったかもしれない」
Akirag「それまではキーボードが各パートの間を埋めていくような役割を果たしていたけど、いなくなったぶん、隙間を活かしたアレンジになっていったんですよね」

――ドラマーのYoshさんとは付き合いも長いんですか?
TANAAMI DAISUKE(以下、TANAAMI)「僕は出会ってから10年ぐらいは経っていますね。音も大きいんですけど、身体も大きくて(笑)。その姿が印象に残っていて声をかけました」
Akirag「音楽的にはジャズが好きなんだよね?」
TANAAMI「あとはヒップホップ。The Lo-Fiというジャズ・ヒップホップのバンドもやっています」
Cross「だから、アフロビートは通ってないんですよね。最初はハマるまでちょっと時間はかかりましたけど、今はまったく問題ないですね」
――ギターのYousayさんはこれまでもライヴのサポートをずっと務めてきたわけですけど、今回から正式メンバーになりましたよね。そのことでバンドとの関わり方は変わった?
Akirag「スタジオ代が発生するようになったぐらいですね(笑)。Yousayは前からアレンジ面でも関わっていたので」
Cross「今後はもっと曲作りにも関わってくると思います」
――新しいバンドの形はすぐに固まったんですか?
Cross「そうですね、わりとすんなり固まりましたね。Akiragくんのアルト・サックスと僕のテナー・サックスをメインにした、いわばヒップホップの2MCみたいなスタイルをさらに押し出していこうと。それぞれのヴァースがあって、サビで一緒にラップするイメージですね。なおかつ『JOY』のポップな方向を伸ばしつつ、アフロ的な要素もさらに突き詰めていったのが今回のアルバムかなと」

――今回のアルバムを聴いて、最初に〈ずいぶん音が変わったな〉と思ったんですよ。
Cross「トクマルシューゴさんを手がけてきた葛西(敏彦)さんにお願いしたんです。僕らとしてはメリハリのついた音にしたかったんですよね。今回はまず録り音自体がすごく良くて」
Akirag「ウチらとの相性も良かったのかも」
Cross「ドラムのバスドラやスネア選びもすごく細かくやったり」
――もちろんそういう音作りでの変化もあると思うんですけど、音の抜けが今までとは随分違う気がしたんですよ。音数が少なくなって、隙間が増えたというか。
Akirag「さっき僕が言ったこととリンクしてくる話ですよね。隙間を活かしたアレンジという」
――そうなんですよ。結果、前のアルバムよりもあきらかにファンク寄りになっている。
TANAAMI「自然とそうなっちゃった(笑)」
Akirag「僕らのなかでは〈ファンクに寄せていこう〉という意識はあまりなくて。『JOY』のときは狙って作ったところもあったんですけど、今回は原点回帰というか、〈自分たちのなかにある響きをいい形で出す〉という作業に集中しようと考えていましたね。〈あるスタイルを狙って作らない、決めつけない〉というのは今回の収録曲全部に共通していると思う」
――たとえば、ミュージック・ビデオを作られた“Swandive”はすごく新しいRIDDIMATESのスタイルという感じがしたんですよ。ゆったりとしているんだけど、大きなグルーヴでしっかり引っ張っていくというか。
Cross「確かに今までのRIDDIMATESにはなかったタイプの曲で、さっき話したホーンの2MC感はこの曲で出せるようになったし、Yousayが持ってきたBメロのコードも良かった。結果みんなで作った感じですね。この曲と、アフロとポスト・ロックを融合したような“Over Against”の2曲ができたときに次の形が見えた感覚がありました」
――アフロ系の曲は今回少なめですよね。それこそ“Over Against”ぐらい。
Cross「他にも5、6曲アフロ系があったんですけど、全体のバランスを見たときに外しました。単なる記録みたいなアルバムにはしたくなかったし、時間をかけたぶん、勝負できる曲だけを入れたかったんです」
――“The Barber”もゆったりとしたファンクですけど、この曲にもまた“Swandive”に通じる大きなグルーヴがありますね。
Akirag「これは僕が作ったんですけど、シンプルでいてクールなものをやりたくて」
――今回のアルバムは全体的に体温が低めです。今までのRIDDIMATESには汗がほとばしる熱帯感があったと思うんですけど、ちょっとクールダウンしていて、BPM的にもビートダウンしている。
Akirag「それは確かにそうですね」
Cross「パンク~スカコア上がりのリーダー(Cross)の熱量がようやく他のメンバーと近くなってきた……ということなんですかね(苦笑)」
TANAAMI「まぁでも、また熱量が上がっちゃうかもしれないし(笑)」
Cross「とはいえ、確かに少しクールダウンしてアレンジの間を作っていこうという話は最初にしていましたね。でも、それも自然な流れで、『JOY』の段階ではそういうこともできなかっただろうし」
Akirag「年齢のせいではないってことだよね? 3年経って自然と熱量が下がったという……」
Cross「うん、そういうわけじゃない……今ちょうど10分ぐらいサックス吹きまくる曲もやろうとしているし(笑)」

最高傑作を作ったという満足感があるし、バンドの状態も今がいちばん
――微妙な体温の楽曲が続くなかで児玉奈央さんをフィーチャーした“Love Land”が入ってくるとたまらないものがありますね。去年のEP『DIVE』にも入っていた曲ですが、これはスパンキー・ウィルソンも歌っていた楽曲のカヴァー※で。
※オリジナルはチャールズ・ライト&ワッツ・103rd・ストリート・リズム・バンド
Cross「セカンド・アルバム(2009年の『SEVEN GODS IN A…』)ではキャロル・キングの“I Feel The Earth Move”をカヴァーしたんですけど、そのときはズクナシのエミちゃんに歌ってもらったんですね。奈央ちゃんはその段階からフィーチャリング・シンガーの候補に上がっていたんです。僕の高校の先輩でもあるので、いつかやってもらいたいなと思っていて。選曲に関しては、候補曲をみんなで持ち寄るなかでダイちゃんがスパンキー・ウィルソンの最近の曲を持ってきたんだけど、〈それだったら“Love Land”のほうが良くない?〉と。レアグルーヴのクラシックだし、僕も大好きな曲だったので」
――原曲とは違うロックステディ・アレンジになっていて、アルバムのなかでもいいアクセントになっていますよね。
Cross「アレンジの案はいろいろあったんですけど、“Shanty Town”※オマージュのギター・カッティングがすごく合いましたね」
※デスモンド・デッカーが67年に発表したロックステディ・クラシック“007 - Shanty Town”
TANAAMI「アレンジは多数決で決めた気がする(笑)。ソウル調とこのロックステディ調、あともうひとつアレンジ案があって」

――ゲストはもうひとりいて、スティールパンのタカヒロさん(チーナフィルハーモニックオーケストラ)が“Sunset Glow”に参加しています。この曲はカリプソ~アーリー・ソカ調の曲ですけど、ちょっとリンガラの雰囲気もあっておもしろいアレンジですよね。
Cross「タカヒロくんに参加してもらうという案は結構突発的に思いついたんです(笑)」
Akirag「ちょうどタカヒロくんと飲む約束をしていたので、レコーディングのときにふと思いついて誘ってみたんです(笑)。ちょっとトロピカル感が欲しくなって、いきなり呼んだんですけど、バチッといい演奏をしてくれましたね」
――この曲もカリビアン風なんだけど、やっぱり熱帯というよりクールな感覚があって、まさに今のRIDDIMATESという感じがしますね。
TANAAMI「そうですよね。ちょっと(力が)抜けているような感じがあって。『JOY』に入っていた“Twi-Titi”にも近い脱力系カリビアンというか」
――そうそう、話が前後しちゃいますけど、冒頭曲“For The Beats”もすごく〈抜け感〉がありますよね。力んでいる感覚がなくて、ポップで軽やか。
TANAAMI「ダンス・ビートですもんね。この曲はずっと“四つ打ち”っていう曲名だったんですよ(笑)」
Akirag「この曲もかなり紆余曲折がありました。Youくんが持ってきたんですけど、どうもしっくりこなくて。そんなときにYoshが突然(バスドラムを)ドン!ドン!って四つ打ちで踏み始めて。そうしたら、急にうまくいった」
Cross「四つ打ちの曲って作ったことがなかったんです。なんならNGだったぐらい(笑)。でも、やってみたらハマりましたね」
――ところで、アルバムの資料には、Crossくんのこんなコメントが書いてあります。〈本を読んでいて出会ったんだけど、想いが言葉を超えるって、いい言葉だなぁって。俺等の音楽もインストだから言葉を超える何か……が伝わって欲しいなと思って演ってるので〉と書いていますけど、ここでいう〈想い〉とはどういうものなんでしょうか?
Cross「RIDDIMATESをやりはじめたぐらい、確か新宿LOFTでライヴをやったときに、酔っぱらった女性にこう言われたことがあるんです。〈伝えたいことがあるということはすごく伝わってきたんだけど、何を伝えたいの?〉って。でも、自分でも何を伝えたいのか答えられなかったんですよ。それが悔しかった。なので、それはなんなんだろうとずっと探していて。 自分としては、音楽を通して汗をかいて自分を解放することで、生きていることを表現していると思っているけれど、それについてもメンバー6人全員みんな違っていると思うし、お客さんによって感じるものも違うと思うんですね。最終的にはそれでいいと思っていて、インスト・バンドとして言葉を超える何かがひとりひとりに伝わっていったらいいなと。でもね……やっぱりヴォーカリストのいるバンドは強いんですよ(笑)」
――でも、インスト・バンドだからこそ、言葉や意味を超えたところにあるものを掬い取ることもできるんじゃないかと。
Akirag「そうですね。言葉と歌があると、イメージや景色を限定するところもあると思うんですけど、インスト・バンドだからこそ限定しない。決めつけない」
――さっきの話に繋がってきますよね。今回のアルバムでいえば、ファンクをやろうとしてファンクをやったわけじゃなくて、自然にファンク的様式に近づいていった。だから、僕にはファンクに聴こえたけど、他の方にはまったくそう聴こえない可能性もありますよね。そこにこのアルバムのおもしろさがあると思う。
Akirag「そうなっているといいですね」
――ちなみに、CrossくんはRIDDIMATES以外の活動も盛んですよね。いまレギュラーで参加しているバンドはどれぐらいあるんですか?
Cross「REGGAELATION INDEPENDANCE、Hei Tanaka、あとはサポートとしてKeishi Tanaka、チーナ・フィル・ハーモニック・オーケストラとその他諸々ですね」
――どのバンドも頻繁にライヴをやっているし、並行して活動していくのは大変じゃないですか?
Cross「そうですね。でも、やっぱりリーダー・バンドだからRIDDIMATESは特別だし、どんどんやっていきたいと思ってます。ただ、そのぶん思うようにいかないときの苦しさもある。そういう苦しさは見せなくてもいいのかもしれないけど、続けていると足踏みの段階もあって、決して順風満帆じゃない。でも、RIDDIMATESは自分のアイデンティティーを出せる場所なんで、もっともっとできることがあると思っています。結果、今回自分たちでも最高傑作を作ったという満足感があるし、バンドの状態としても今がいちばんいいと思う。もっとイケると信じて進みます」
――メンバーも固まったし、すぐにでも作品を出したいんじゃないですか?
Cross「そうですね。さっきも言ったように、(サックスを)10分間吹きまくっているような曲もやりたいし。あとはセッションをずっとやっていたんで、Bサイド的な渋い曲がたくさん溜まっているんですよ。もしかしたらそのあたりの曲をまとめてすぐリリースするかも」
――それは、すごく聴きたいです。楽しみにしています!
Live Information
〈『OVER』RELEASE PARTY!! ONEMAN SHOW!!〉
2017年7月22日(土)東京・渋谷WWW
出演:RIDDIMATES
Guest Vocal:児玉奈央
Gueat Dj:角張渉
Decoration:大島エレク総業
Food:can cafe
開場/開演:18:00 /19:00
料金:前売 3,000円 当日 3,500円(いずれも1D別)
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