クラシックとエレクトロニカ/音楽とアート 共存の連鎖が織りなす新しい《四季》
マックス・リヒターがリコンポーズしたヴィヴァルディ《四季》で話題を呼んだダニエル・ホープが、今度はみずから音楽監督を務めるチューリヒ室内管弦楽団を率いてオリジナルの《四季》を録音した。新作アルバムにはさらに、1月から12月までの各月をイメージした12の楽曲が収録され、ブックレットにはそれに対応するヴィジュアル・アート作品が掲載されている。
「まず最初に、12ヶ月それぞれの曲を決めてから、それに合うアート作品を考えていきました。新たに描き下ろされた作品もありますし、既存の作品もあります。実際に画家に曲を送って聴いてもらったところ、多くの画家が“音楽を聴いてから自分の作品を見ると、今までとは違うことを見出した”と言ってくれたのが興味深かったですね。このアルバムには、さまざまなフォームの音楽と絵画が収められていますが、それらを通して、アートがいかに自然界のエレメントに反応するかということを伝えたかったのです」
ニルス・フラーム、エイフェックス・ツイン、チリー・ゴンザレスに混ざってラモーやシューマンが並ぶ12ヶ月のラインナップは、じつに多彩で独創的だ。
「ポスト・クラシカルと呼ばれる分野のアーティストたちは、僕にとっては素晴らしい現代の作曲家であり、友人でもあります。彼らは皆、今の若い人たちの言葉を話すことができる。その音楽はエモーショナルで、非常に凝縮されています。物事が猛スピードで進む現代において、人々が集中力を持続できる時間は短くなり、心を打つような体験もごく限られたものになってきています。そんな中で、若い人たちがポストクラシカルの作曲家に強く共感するのは、彼らの言語が万国共通だからではないでしょうか。たとえばマックス・リヒターとルドヴィコ・エイナウディは、まったく違うタイプの作曲家ですよね。けれどクラブ・カルチャーやエレクトロニカ、ミニマル・ミュージックなどに影響を受けた人たちは、その2人の音楽に共通の要素を見出して、惹かれています。同じ言語を話している人同士で分かり合うものがあるのだと思います」
一方の《四季》もエキサイティング。“今を生きる音楽”として聴き手に迫ってくる。
「もしヴィヴァルディが今の世に生きていたら、レディー・ガガのライヴで演奏していたでしょう(笑)。私は4歳のとき、メニューインとチューリヒ室内管が演奏する《四季》を聴いて、それは大きな衝撃を受けました。そのときの団員がまだ残っていて、今回の録音を最後に引退したヴァイオリニストがいるんですよ」
時を超えて響き合う『四季』とともに、ホープの旅は続きそうだ。