UNKLE
強力な仲間たちを従えて、ジェイムズ・ラヴェルが2017年に投げかける最新型のアンクルとは?

 今年19年ぶりにアルバムを発表した90年代のレジェンド、ゴールディー。その代表作『Timeless』をオーケストラで再現するライヴの開催も発表されて話題となったが、それは2014年の〈メルトダウン・フェスティヴァル〉の一環で行われたヘリテイジ・オーケストラとの共演をきっかけに実現したもの。そして、その年の同フェスでキュレーターを務めていたのが、同じく90年代のレジェンド、ジェイムズ・ラヴェルであった。

 90年代にモ・ワックスを主宰していたラヴェルは、DJシャドウやDJ KRUSHを見い出したほか、フューチュラ2000やマッシヴ・アタックの3D、日本のMAJOR FORCEやNIGOとも繋がるなど、SNSもない時代に世界の人々と結び付き、一時はストリート~クラブ・カルチャーのカリスマとして君臨していた人物だ。DJシャドウを相棒にアンクルを結成し、初作『Psyence Fiction』(98年)ではトム・ヨークやマイクDらを起用し、エレクトロニック・ミュージックの可能性をコラボで拡張して喝采を浴びたのである。そんな妙味を久々に味わえるのが7年ぶりのニュー・アルバム『The Road: Part 1』だ。

UNKLE The Road: Part 1 Songs For The Def/BEAT(2017)

 「かなり長い間レコードを作っていなかったよ。そのなかでアンクルの在り方が変わってしまって、僕は一人になっていたんだ。そんなわけで、いままでに作れなかったレコードを作りたいと思い、自分自身のルーツに立ち返った」(ラヴェル)。

 DJシャドウに始まり、ティム・ゴールズワーシー、KUDO、リチャード・ファイルらとコンビを組んでアンクルを動かしてきたラヴェル。パートナー不在の今回は〈メルトダウン〉でアンクルのライヴをサポートした、エスカ、キートン・ヘンソン、リエラ・モス、マーク・ラネガンらを中心に、マリリン・マンソンのツイギー、プライマル・スクリームのアンドリュー・イネスら錚々たる顔ぶれが揃い、アトモスフェリックかつサイケデリック、そしてどこかミステリアスな作品を完成させた。

 デヴィッド・ボウイ“★”風の威厳と力強さを備えた“Looking For The Rain”(ラネガンの歌唱は圧巻!)、アシッド・ハウス/フォーク/ゴスペルが一体となった“Cowboys Or Indians”、ヘンソンの今にも壊れそうな歌が響く神聖なる子守歌“Sick Lullaby”など、完全復活と宣言していい秀逸な楽曲の数々はどれもコラボの賜物で、ラヴェルの本領発揮と言える。そして最後に「スター・ウォーズ」シリーズの作曲時間を削って参加したというフィリップ・シェパードのストリングスが、本作を特別なものにしていることも付け加えておこう。