今、新しい伝説が生まれようとしている!
ラウドなロック・ナンバーからポップな歌モノ、果てはロービットな電子音楽まで――〈RPG系バンド〉というコンセプトを掲げ、縦横無尽にジャンルの壁を飛び越えてエンターテイメント性の高い音楽=ファンタジーを創り上げていく4人組、魔法少女になり隊。
魔女に呪いをかけられてしゃべれなくなった火寺バジル(ヴォーカル)を中心に、彼女の心の声が呼び寄せた妖精のgari(VJ/ヴォーカル)、石化されていたところを救われた女剣士の明治(ギター/ヴォーカル)、作編曲のほとんどを手掛けるスナイパーのウイ・ビトン(ギター)という、ゲーム・キャラさながらの愉快痛快なキャラクターもチャームポイントに、メジャー・デビューから1年を過ごした彼ら。
結成の経緯や、しゃべれないバジルがなぜ歌えるのかはオフィシャルのYouTubeチャンネルで公開中の「魔法少女になり隊 序章」を参考にしていただくとして、そんな彼らがついに、ファースト・ステージのクライマックスとなるフル・アルバム『魔法少女になり隊~まだ知らぬ勇者たちへ~』を届けてくれた。バラエティーに富んだ音楽性を信条とする彼らにとって、フル・アルバムはまさに本領を発揮する作品として待ち望まれた一枚。今、新しい伝説が生まれようとしている!
※火寺バジルはしゃべれないため筆談でインタヴューに参加
――〈RPG系バンド〉というユニークなコンセプトが、このバンドの大きな特徴になっていますよね。
火寺バジル(筆談、以下同)
バンドを始める時、こういうことをしたらおもしろいんじゃないか?っていう話から生まれたのが〈RPG系バンド〉というコンセプトなんですけど、私=火寺バジルが呪いをかけられてしゃべれなくなるっていうところから始まって、そこからみんなのアイデアをどんどんプラスしていきながらストーリーを展開させていった結果が今なんです。
――レパートリーにはラウド系の曲からポップな歌モノまでいろんな曲がありますが、楽曲だけでも十分に楽しめるところに〈RPG〉というコンセプトが加わることで、よりエンターテインされたものになっていますよね。
明治「RPG系っていうコンセプトやヴィジュアルだけでも楽しめるところはありますし、いろんな要素の音楽が入っているので、好きになってもらえる入口はたくさんあると思います。この音楽をこう伝えるために……っていうふうに始まったわけじゃなく、最初からすべてが世界観ありき、演出込みで始まったものなので、そこを楽しみながらやってきた結果、こうなったのかなって思いますね」
ウイ・ビトン「受け入れてくれる人がいるかどうかはわかんなかったですけど、たしかにこういうふうにコンセプチュアルになることによってよりキャッチーに伝わってるのかなっていうのは、たまに思いますね」
――数あるバンドの中から魔法少女になり隊をチョイスする理由にもなると。
バジル
バンドの形態も、ギターが2本で、ヴォーカルとベース。ドラムがいなくてVJっていう、それもなかなか同じようなスタイルはいないと思うんですけど、そういうのも含めて〈唯一無比の人たち〉って覚えてもらえたらうれしいですね。
――普通のバンドとは違う形態ということで、不自由さはなかったですか?
gari「ドラムがいたらこんなことできるかもしれないなって、たまに思うことはあるんですけど、それが不満かどうかっていうとそうではなく。じゃあ、いないからこういうことをやったらおもしろいんじゃないかなとか、いないからこそ映像がめっちゃ引き立つじゃんとかって考えたり、ないところを違うもので補完するのがおもしろかったりしますね」
ウイ「新しい発想が生まれてくるしね」
gari「そうそう。だから現状はまったく不完全に思ったことはなくて」
バジル
むしろこの編成にこだわって、これが完全体だってやってますもんね。
――さて、そんな感じでメジャー・デビューから一年。ようやく初のフル・アルバムがリリースされます。メジャーで3枚のシングルを重ねて、そしてアルバム。「スーパーマリオブラザーズ」的には〈1-4〉ということになりますね、例えが古くて恐縮ですが(笑)。
明治「そういうやりとりとか例えはよくしますよ(笑)」
gari「全部ゲームに繋げて、そういう概念だって(笑)」
――バンドのコンセプトがコンセプトなので、アルバムを出せるっていうことで非常にワクワクしたというか、気持ちも高まったんじゃないですか。
gari「そうですね。アルバムを作ろう、じゃあ、どういうアルバムにしようかって話し合ったときに、すぐに『ゲーム作ろう!』っていう話になって。ゲームをコンセプトにして、一本のソフトを作るっていう感覚で、じゃああれもできるね、これもできそうとか言って曲もいろいろ揃えましたし、ジャケットや中の仕様とかまで作り上げていった感じですね」
ウイ「そういえばこういうのやってないなっていうところからアイデアを引っぱってきたりとか、こういう表現すごくイイな、これを自分のなかでおもしろく表現したいなとか、生活している中のいろんなシーンで受けたインスピレーションから作っていった感じですかね。実際、曲はここに入ってる以上に作りました」
――コンセプチュアルではあるけれど、コンセプトを強要しない感じもあるというか、頭から最後まで順に聴くのが本来の楽しみ方ではあるけど、どこから入っても楽しめてしまう気軽さも感じました。そこは、コンティニューやリセットありのゲーム的流儀が自然と出ているのかなと。
gari「1曲目の表題曲はSFチックな、電子音強めな曲ですけど、アルバムとして目指していたのは『ドラゴンクエスト』みたいな剣と魔法の世界……だけど、いろんな曲が入っていて、いろんなシーンがあってもいいなっていうか、そのどれかに誰かが引っかかってくれたらいいなあっていうのもありつつ曲を選んでます。とにかくいろんな要素が詰め込まれたゲームという」
バジル
普段から〈ノンジャンル〉って言ってるぐらい幅広い曲を作ってきて、やはりアルバムとなったらいろんな人が手に取る機会も多いと思うので、そのなかで1曲でも好みを見つけてくれたらいいなあって思って作ってます。
gari「ひとつのジャンルに囚われないように、囚われてしまうとそれはちょっともったいないなあっていう気分が自分たちにはあるし、このバンドだったらいろんな表現をしても大丈夫だろう、だったら好きなことやろうっていう確信もあって。今、いろんな音楽をチョイスできるだけに、聴く人の好き嫌いもたくさんあるだろうけど、それでもどれか好きなのをひとつ見つけてもらえるような、今回のアルバムはそういう一枚になったんじゃないかなって思います」
――楽曲のバラエティーさといえば、明治さんが歌っている“ヒトリ サク ラジオ”ようなシリアスな歌モノの次に、〈Go To Hell〉を連呼している“Call me From Hell”みたいな曲が置いてあったり。このあたりもゲーム感覚というか、ストーリーを進めていったらとんでもないダンジョンに入り込んでしまったみたいな。
gari「曲順はライヴを意識して考えたりしてるんですけど、なんとなく次の場面はこんな感じだろうって想像しながら。“革命のマスク”みたいな歌モノでグッとくるシーンを作っておいて、そのあとに思いきりぶち壊すような展開があってもおもしろいんじゃないかって」
――演出も含めて、ライヴでどういうふうに再現されるのかはすごく楽しみですね。
ウイ「早くツアーで披露したいですよ」
明治「曲ごとにキャラクターがあるので、演出とか考えるのもすごく楽しくやってます。お金をかければかけるほどおもしろいことができるんじゃないかなって思いますし(笑)」
バジル
『やっていいよ』って言ってもらえたらやりたいこといっぱいあるもんね。
――そう、CDのほうはパッケージも非常に凝ってて。初回盤はレトロなゲームソフトの箱みたいだし。
バジル
いろんな人に楽しんでもらいたいっていう気持ちがあるので、アルバムを作るにしても、どんなものを届ければみんなの期待に応えられるんだろうって考えた結果、こういうパッケージになったりしてるんですけど、一回(CDを)出したらしまうのがたいへんなんですよ(笑)。
――遊び心にもほどがある感じで(笑)。でも、魔法少女になり隊はそういった遊びの部分ばかりがクローズアップされておもしろがられてるバンドじゃないですよね。作っている音楽そのものに説得力があることは曲を聴いて感じますし、キャラ作りをしてるけど、キャラ作りをしてるゆえにリアルに伝わる不思議な部分もあって。
gari「たしかに、素のキャラだったり本名でやってたら、ここまで振り切れなかったかも知れないですね」
バジル
私にかけられた呪いを解くっていう冒険をいっしょにクリアしていきたいっていう目標があるから、私たちとお客さんの視点がわりといっしょだったりして、そういう意味では歌とか演奏とか自分は一個内側に入って見ることができるから、そういうふうに思えるのかも知れないですね。
――ゲームやっててエンディングで泣くみたいな、あの感覚に近いところもありますね。みなさん、ご経験があるかわかりませんが(笑)。
gari「そうですねえ、ゲームではあまり感動しなかったかな」
明治「そういうゲームをやってこなかったんじゃない?」
gari「ポケモンしかやってなかったからなあ。ポケモンの映画は泣けるけど、ゲームはまた違うものだし」
明治「私はずいぶん前にRPGをやって感動したことがありますね。『英雄伝説 空の軌跡』っていうゲームで。それまでRPGって苦手で、会話の文字を読むのが面倒だったんです(笑)。で、一度ちゃんとやってみようかなってあるときに思って、やってみたら感動して、ゲームで感動することってあるものなんだって思いました」
――アクションやシューティングで泣けるものもありますし。
明治「そうなんですよね。シューティングでも背景にシリアスな設定があったりとか、うちのバンドでもそういう感じのところはあるかな。ライヴ自体はゲームではないですけど、ライヴを観たり曲を聴いたりする行為はゲームで言うところの〈プレイ〉ということになると思うし、キャラ設定であったり、歌詞の事細かな部分であったり、メンバーひとりひとりの個性であったり、掘り下げていくと感情移入して心動かされていく部分とかが見つけられる……っていう部分はゲームっぽいと思います」
――メンバーの個性ということでは四者四様というか、全員が主役級というか、最初にどの登場人物でプレイするか決められるゲームみたいな楽しさがありますよね。重ね重ねになりますが、ツアーが楽しみです。
バジル
ツアー・タイトルがアルバム・タイトルにもなっている〈まだ知らぬ勇者たちへ〉っていうことで、より多くの人に知ってもらえたらと今回は7か所。まだ数回しか行ったことがない場所もあるけど、新しい人たちにもっと届けていきたいですし、ライヴの演出ひとつにしても、私たちの世界観の中で思いきり楽しんでもらえるように全力を尽くします!